シード選手の中で一番飛ばないといわれる青木瀬令奈選手が3日間ノーボギーで大会記録を更新する17アンダーで今季初勝利を飾りました。
これまでは取り組んでこなかったトレーニングを、昨シーズン最終戦の2日後から斎藤大介トレーナーの元で始めていました。年末に現場を取材させてもらったとき、ゴルフに向き合い、自分と向き合う青木選手の姿が印象的でした。
昨シーズンは7月に1勝を挙げましたが、後半は成績を残せなかったことで、体力面の強化をメインにトレーニングに取り組んだ青木選手。開幕してからも筋肉痛になるほどの強度で続けています。
コーチ兼キャディを務める大西翔太コーチによると「飛距離が10ヤード伸び、2打目の景色が今までと違います。傾斜からのショットや風があるコンディションでも安定感が増しています」と、早くもその効果が表れているようです。
そして、トレーニングを継続することも含め、ゴルフや自分との向き合い方にも大きな変化があったと大西コーチは続けます。
「オフの合宿で宮里優作さんから、『周りとの戦いではなくて自分との闘いだから』と教えてもらって。最大の敵は自分自身で、自分とどう向き合うのかという姿を見ていると、もう1ランク、アップしているように感じます」(大西コーチ)
3日間ノーボギーというスキを見せなかった今大会でのプレーぶり。オフから取り組んだトレーニングや心の変化が良い方向へ向かい、大きく成長した要因になったようです。では、そのスウィングを見てみましょう。
昨年と比べてアドレスの安定感が増しています。「デッドリフト」という床に置いたバーベルを持ち上げるトレーニングをすると、足裏にしっかり圧力をかけられるようになります。その足裏の圧力を抜かないように構えることが安定したアドレスを取るコツになります。
バックスウィングは、体を縦にねじるようにアップライトに上げ、深く捻転しています。切り返しでの左への移動は最小限で、ダウンスウィングへと入ります。(画像A)
大西コーチによると、「右から左へのスライド」「回転力」「縦方向」という三つの力の割合やタイミングを、足裏の圧力を利用して計測すると、「縦方向の力」を効率的に利用しているといいます。
その縦の力を向上させるトレーニングに取り組んでいることもあり、「左足を踏み込んで伸ばす力を使って回転力を高め、それをヘッドスピードに変換できています」と大西コーチ。
縦方向の力のピークは左腕が地面と平行になる位置がトッププレーヤーに共通する点ということがわかっています。その力のピークは、左ひざが伸びきる位置ではなく、地面を踏む圧力が最も強いタイミングなので、左ひざが伸びきる直前ということになります。(画像B)
青木選手によると、オフの間に「9時から3時までのハーフショット」という徹底した基礎練習を行い、開幕に合わせて調整して来たということ。パットさえ決まれば優勝争いできるほどショットは好調だったようです。そこで、グリーンの違いも考慮して3試合とも違うパターを投入したそうです。
今大会では「センターシャフトを試してみたら?」という大西コーチのアドバイスでオデッセイの「ホワイトホットOG#1WCS」という少し幅広のブレードタイプのセンターシャフトを投入したといいます。その選択がグリーンの転がりと見事にハマり、何度か訪れた厳しいパーパットや17個奪ったバーディへとつながったと青木選手。
昨年2位となった「ワールドレディスサロンパスカップ」の開催コース茨城GC西コースのグリーンと似ているという青木選手の言葉から5月の「サロンパスカップ」も楽しみになります。
開幕3戦目で優勝を飾ったことで、複数回優勝と海外メジャー挑戦への期待、そして成田美寿々選手へのエールという大きな意味を持った勝利を祝福したいと思います。