現在の買収軍資金は16億円
75万ポンド(約1億2000万円)で売りに出されたのは、かつてはイギリス首相もメンバーだったというスペイベイゴルフクラブ。
購入の意思を示しているのは、仮想通貨「Non-Fungible Token(ノンファンジブル・トークン)=NFT」によって、昨年、1200万ドル弱(約16億円)以上を調達したオンラインコミュニティ・LinksDAOだ。
DAOには管理者が存在しない。メンバー全員で組織を共同で運営・管理する自律分散型組織で、DAOの主な目的はゴルフ場の買収と共同運営。
本来であれば、昨年内に最初のゴルフ場を買収し、今年初めには新たなゴルフクラブができているはずだったが、英ゴルフビジネス誌によれば、ようやく最初のゴルフ場買収の成立にこぎつけたところだという。
その最初のゴルフ場となりそうな、スペイベイゴルフクラブはスコットランド北東部の海岸線にあるリンクス。
ゴルフ場の設計は、19~20世紀初頭に活躍したスコットランドのプロゴルファー、ベン・セイヤーズ。かつて、ゴルフクラブブランド「ベン・セイヤーズ」として人気を博したこともあるので、ベテランゴルファーは名前に覚えがあるかもしれない。
古のプロの手によってコース原型が造られているので、レイアウトは海沿い砂丘のリンクスらしいリンクだが、近郊都市のエジンバラから車で約3時間半とアクセス面の問題があり、現在は経営が苦しく、数年前から売りに出されていた。
LinksDAOはそこに目をつけ、世界で30のゴルフ場をピックアップして買収を検討。そこから、アメリカの4つのゴルフ場と、このスペイベイゴルフクラブに絞っていったという。
「今回の買収に関する資金は、私たちの購入予算にさほど影響を与えません。さらに取り組んでいる4つのアメリカのゴルフ場購入の計画に変更もありません」と、NFT購入者に対する提案書を通じて明らかにしている。
すでにNFT購入者の90%から購入の了承を得たことで、買収がほぼ確定したという。
スコットランドの名門倶楽部の買収額が1億2000万円余りというのにも驚きだが、NFT購入者のほとんどはアメリカ在住のはず。
スコットランドの遠隔地にあるリンクスコースを利用するゴルファーは、バケーション目的だとしても、実際のところどれだけいるのだろうか。それとも投資目的か?
これからコース改修や運営もコミュニティDAOによって行われるという。このスペイベイゴルフクラブの今後はもちろん、アメリカの4つのゴルフ場とはどこのことなのか? その買収の進捗はどう進んでいくのか? 今後に注目したい。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月4日号より(写真はすべて同クラブFacebookギャラリーより)