ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、"覚醒”したフランス出身の31歳、ビクトル・ペレスに注目した。
画像: 1月に欧州ツアー3勝目をあげたビクトル・ペレス(Photo/Getty Images)

1月に欧州ツアー3勝目をあげたビクトル・ペレス(Photo/Getty Images)

1月のアブダビHSBC選手権で、欧州ツアー3勝目、ロレックスシリーズで初優勝を果たしたのが、フランス人のビクトル・ペレスです。フランスの選手は小粒揃いの印象が強いですが、そのなかで出てきた本格派。

現在、レース・トゥ・ドバイ1位で、今秋イタリアで開催されるライダーカップに期待がかかりますし、来年のパリ五輪でもフランス代表候補の筆頭です。

父も祖父もラグビー選手で本人も198センチという恵まれた体の持ち主。スペインとの国境、バスク地方にある名門、クラシックコースのファンには垂ぜんのビアリッツGCで育ちました。

ここにはアメリカ人コーチのマイク・マグハーがおり、有能な選手をアメリカの大学に送り出してきたようです。おそらくペレスもマグハーの推薦によって、ニューメキシコ大に進んだものと思われます。フランス人には珍しく流暢な英語を操るのもコーチの存在とアメリカへの留学があったからでしょう。

ジュニア時代からフランスでは注目された存在でした。14年、軽井沢で開催された世界アマには、フランス代表として出場しています。この大会の個人戦では、優勝したジョン・ラームに次いで2位に入ります。

大学卒業後の15年にプロ転向。最初は欧州の3部ツアーのひとつであるアルプスツアーからスタートします。1年で2部のチャレンジツアーに昇格、ここでも17年に優勝しますが、賞金ランク17位で、当時15 位までが昇格条件だったため残念ながら昇格できず。しかし翌18年も1勝を挙げ、賞金ランク堂々の3位でレギュラーツアーに昇格しました。

ルーキーイヤーとなった19年には、ダンヒルリンクスで念願の初優勝。ルーキー・オブ・ザ・イヤーはロバート・マッキンタイアに譲りましたが、その年末には世界ランク49位に入り、初のマスターズ出場権を獲得。ただ20年は春の大会は中止、開催された秋は無観客試合……。

20年の開幕戦ではアブダビで2位と好発進、メジャーにもWGCにも出場できる成績でしたし、本人も本腰を入れて「PGAツアーに挑戦」とイメージしていたのではないでしょうか。

ところがコロナ禍で住まいのスコットランドは完全ロックダウン。数カ月ゴルフができない状態が続きました。その影響か、21年のメジャーは4試合連続で予選落ちするなど、芳しくない成績でPGAへの入れ替え戦にも出ていません。コロナ禍によって、順風満帆なゴルフ人生に水を差された印象です。

しかし、少し遠回りしながらも、ここに来て着実に一歩一歩階段を上っているようです。22年にはダッチオープン、そして前述のように今年のアブダビで3勝目を挙げました。

面白いのは優勝した3コースは、偶然かいずれもアメリカ人のカイル・フィリップスの設計コース。難コースとして知られるコースで勝負強い勝ち方をするだけに、31歳になる今年は飛躍の年になるかもしれません。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月28日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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