昨年夏、小欄でお伝えしたゴルフ保険に関わる調停の続報。内容をざっとおさらいすると、新潟県在住の80代男性が、2019年11月に新潟県長岡市のゴルフ場でホールインワンを達成。契約していた大手損害保険のホールインワン保険金の申請をしたが、ホーインワン保険の30万円が下りることはなかった…。

パー3ホールで“第三者の目撃”との条件

なぜ保険が適用されなかったのか。「第三者(キャディやゴルフ場の使用人、関連業者、先行、後続プレーヤーなど)の目撃」という条件を満たしていなかったためだという。

だが、そもそも男性が住む新潟県のゴルフ場はキャディが少なく、男性が調べた7コースに常駐するキャディはゼロが多く、いても2人または3人。

画像: 「入った!」。ホールインワンの達成は嬉しかったけれど…

「入った!」。ホールインワンの達成は嬉しかったけれど…

「これでは保険会社が求める条件を満たすのは事実上不可能と言えるのではないか」というのが男性の主張。

民法133条の「不能条件」に関わるのではないか、つまり、実現不可能なのではないかとして、大手損害保険会社を相手に調停を申し立てた。

男性によると、調停は昨年の5月に第1回が開かれ、その後、4回開かれたが結局「不調」に終わった。調停では、以下のような内容の、当該損保会社からの回答とやりとりがあった。

当該損保会社によれば、「ホールインワン保険を受け取ることのできる可能性は0.023%」だと示された。

男性はホールインワン保険を受け取る際には3つのハードル、①(目撃者となる)第三者を探す。②ゴルフ場が認定書を出す条件が各社バラバラ。③保険会社の審査基準がバラバラ。があるが、それも受け取りを難しくしていると述べた。

しかし、当該損保会社の回答は「適正に対応しております」。さらに男性による「損保会社によるゴルフ場のパー3のホールへのビデオカメラ設置への援助を」という意見には「回答する立場ではない」。

男性はホールインワン保険のほかアルバトロス保険についても不能条件に関わるのでは、と質問したが「(データによれば)10万分の1の確率。ゼロには当たらない」との回答だった。

画像: ホールインワンのお祝い品のひとつ、「虎屋のホールインワン最中」。保険が下りれば振舞えるのだけど…

ホールインワンのお祝い品のひとつ、「虎屋のホールインワン最中」。保険が下りれば振舞えるのだけど…

ゴルフ保険加入の際、もっと丁寧な約款の説明を受けたかった

男性はゴルフ保険に加入する際、約款の説明を受ける機会がなかったことも主張。申込書に「約款については、Web(ホームページ)での閲覧でよろしいですか?」、「はい/Web」、「いいえ/冊子送付」とあるだけで、具体的な内容が記載されていない。

そこで、男性は申し込みの段階で義務である説明責任を果たすためには、「①契約申込書内容確認には、約款内容すべてを明記し、説明責任を果たす」、「②約款を知る機会がペーパーレス化により、ますます遠のく危険性があり、約款内容を記した控えは契約者のもとに届ける」ことを求めた。

調停外(終了後)でもいいので、書面で回答をと申し入れているが、3月27日現在、当該損保会社からの回答はないという。

男性はゴルファーに向け「第三者の目撃がなければホールインワン保険は下りない。約款をよく確認してから加入してほしい」と呼びかけた。

おめでたいはずのエース達成が、調停論争へ…。手軽なセルフプレーが増えてゴルフが身近な存在になっていく反面、こうした問題の着地点も見つけなくてはならない。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月18日号より

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