アマチュアでただひとり予選通過
テキサスA&M大の23歳、サム・ベネットは、昨年の全米アマを制覇した。
「夢が叶った。嘘みたいな気もするし、何と言えばいいか分からない。トロフィーにはタイガー・ウッズの名前も刻まれている。そこに僕の名前も加わるなんて、本当に光栄なこと」と喜んだ。
全米アマの勝利で今年のマスターズの出場権を手に入れると初日、1番パー4でいきなりバーディを奪う。続く2番パー5ではチップインイーグルと絶好の滑り出し。6番パー3でもバーディを奪い、初日「68」と好発進。
ラウンド後は仲間たちからのメッセージが止まらず、「スマホの電源を切って眠った」という。翌日も、5バーディ、1ボギーと、連日4アンダー、「68」をマークして決勝にコマを進めた。今大会には7人のアマチュアが出場したが、予選を通ったのはベネットひとりだけだった。
「みんなが『ローアマを獲れるといいね』と言ってくれたけれど、僕はとにかく良いラウンドをしたかっただけ。自分が良いプレーをすれば、ここで戦えると思っていた」。
パトロンたちも拍手で応援
マスターズでのアマチュア選手の最高成績は1956年のケン・ベンチュリーの2位。また、アマチュア選手によるメジャー制覇は、1933年全米オープンでのジョニー・グッドマンのみ。
ベネットは第3ラウンドでブルックス・ケプカ、ジョン・ラームと最終組を回り、一時はマスターズ初、メジャーでも90年ぶりのアマチュア優勝が期待された。
しかし、プレッシャーからか、出だしから連続ボギーを叩き、悪天候のため6ホール終了時点でサスペンデッド。日曜に再開された残りの第3ラウンド終了時には、首位と7打差の7位タイまで順位を落とした。
「ラームとケプカと一緒に回れたのは素晴らしかった。パトロンの応援もとても温かく、歓迎されていると感じました」
最終ラウンドはコリン・モリカワとのペアリング。1番ティーイングエリアで彼の名がコールされるとパトロンたちから拍手と大歓声が巻き起こった。
実はベネットの左腕には若年性アルツハイマーで2年前に亡くなった父の言葉がタトゥーで入っているという。それは、“Don’t wait to do something”、「何かをするのに待つ必要はない」。
マスターズでローアマを獲得し、のちにチャンピオンになった選手は2011年のローアマで、2021年覇者の松山英樹で7人目。ベネットが8人目になる日もそう遠くないだろう。
「本当にまた戻ってきたい」。ホールアウト後にベネットは締めくくった。
写真/Blue Sky Photos