ゴルフ寿命を延ばすために、トレーニング方法を変えた
「うちのかみさんはキャディをしているんです。子どもは3人。全部男です。やっと1番下が中学生になるので、まだまだお金がかかるんです」
と笑う清水は、41歳のとき、初めてレギュラーツアーに出た。
「なかなかQTファイナルにいけなくて、たまたま結婚が決まったときに30位に入った。だからかみさんは僕の一番いいときしか見ていない(笑)。でも、レギュラーに出た最後の年、『清水さん、決めたら初シード最年長記録です』と言われて予選落ち。やっぱりレギュラーはセッティングが違います」
凝縮されたプロ人生だからこそ、できるだけ長くシニアツアーに、の気持ちは強い。
そのためトレーニング方法も変えた。
それまでは普通のジムに通っていたが、52歳のとき、以前から興味があった初動負荷トレーニングをするようになった。
「筋肉を大きくするより、肩甲骨や股関節の動きをよくして可動域を広げて、筋肉の反射で体を動かしやすくするというもの。これをメインに取り組んでいます」
3年前、コロナ禍のオフのときに急にひざが痛くなり、スウィングもできなくなった。
「半月板が水平断裂していると。保存療法を選び、1カ月以上リハビリに通った。そこからは地道にトレーニングし筋肉をつけるように言われて。靴の中に専用の中敷きを入れて1日3、4時間歩きました。そうしたらやっとゴルフできるようになった。今は初動負荷トレーニングと24時間のジムでバイク漕ぎや足回りのトレーニングを両方しています」
今も飛距離は変わらないという。
「中嶋(常幸)さんに、63歳までは今のままできると言ってもらえたんです。今のシード選手で60歳以上は少ない、室田(淳)さんや倉本(昌弘)さんがあそこまでできるのは別格として、僕なんか必死で頑張らないと。最低65歳まではシード選手でいたいんです」
清水の口から初めて、「頑張る」という言葉が出た。
「下の世代が強いからわからないですけど、気持ちはあと5年。それには体が何より大事です」
地道なトレーニングと体づくりを支える強い気持ちがある。
「僕を見て、シニアからでもできると思って頑張ってほしい」(清水)
清水の目標は、慎ましやかだが、確実で、周りを幸せにするものだ。
「シニアは今、少し試合数も減ってきていて。僕が入ったときのシード選手のほうが、“魅せる”術があった。シニアはギャラリーやスポンサーさんへのサービスが大事。プロアマもそう。青木(功)さん、中嶋(常幸)さん、倉本(昌弘)さん、ジェット(尾崎)さん、(尾崎)直道さんたちは、やはり違いました。僕らの3つ上の加瀬(秀樹)さん、奥田(靖己)さん、芹澤(信雄)さんたちもバンドを作って盛り上げたり。今、その雰囲気は少し足りない気がします。僕らはそんなに有名じゃないけど……」
と言う清水。
「最初の頃、飯合(肇)さんなんか、『あいつ誰だ』って(笑)。ちょこちょこ上位に顔を出していると覚えてくれて、これだけ勝てないと気にしてくれる。この前も『もうお前のこと応援しない』って(笑)。有難いです。毎年『優勝を!』と言ってくれる仲間のため、一番は家族のために勝ちたい。自分のためというより、周りのために勝たないとね」
そして、シニアツアーを少しでも盛り上げたいという。
「もちろんプレーでも盛り上げたいけど、ギャラリーと話したり、興行としても沸かせたいですね」
この真摯な思いこそ、プロゴルファー・清水洋一の持ち味だ。
「毎年賞金で1000万円は稼ぎたい。シードも取れますし。優勝もしたいですけど、シード確保が大前提。試合に出られないと優勝もないです。でも昨年、後援競技でいいメンツのなか、2日で14アンダーを出せて勝てました。寺西(明)を振りちぎって(笑)」
今、ゴルフをやってよかったと心から感じている。
「50過ぎてもお金が稼げるのってゴルフくらい。野球やサッカーは雇い主が必要です。もちろん、同年代でもまったく試合に出られないプロのほうが多い。僕は幸せですね。仕事でいろいろな場所に行けて、あちこちに知り合いができて、美味しいものを食べて。家族には『また旅行にいってくるの、いいな』と言われます(笑)。僕はレギュラー時代たいした成績は残してないけど、僕らを見てシニアからでもできる、と思って頑張る人もいると思うんです」
THANKS/西大宮ゴルフガーデン PHOTO/Yasuo Masuda
※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月8日「清水洋一 還暦の伸びしろ」より