年を追うごとに選手層が厚くなってきた日本の男子ツアー
日本ツアー開幕戦の東建ホームメイトカップは、3日目を終えて4打差に17人。
最終日のスタート前、ボクは「誰が勝つか全然わかりませんね……」とツイートしたのですが、その顔ぶれはトップに石川遼、星野陸也がいて、今平周吾、金谷拓実、蟬川泰果、宮里優作……とベテラン、中堅、若手、さらに外国人選手が追う展開。
5打差まで含めれば中島啓太もいて、開幕戦の最終日にこれだけ優勝しそうな選手がそろったのは記憶にありません。
年を追うごとに層が厚くなり、じかにそのプレーを見てみたい選手も増えました。この先の23年シーズンを象徴するような開幕戦だったと思います。
その実力者ぞろいの戦いを制したのは、18、19年に2年連続賞金王に輝いた今平周吾でした。最終組の2組前で回った周吾ですが、最終ホールで20アンダーに伸ばすと、周吾には珍しいほどの気合いの入ったガッツポーズを見せました。
後続組を待たずにほぼ優勝が決まったこともあるでしょうが、実力者たちに競り勝ったことがそうさせたのか。また19年の賞金王獲得後、勝ちはするものの、もっぱら話題は若手に集中してきました。
30歳となり中堅に数えられるようになった周吾ですが、「若手に負けてられるか」との思いもあったのでしょうか。いずれにしても気合いの入ったガッツポーズに、新しい変化を感じました。
力強い前向きオーラが出ていた今平周吾
ボクはJGTOの広報担当者として火曜日から初日の木曜日まで会場入りしていました。勝ったから言うわけではありませんが、実は周吾と挨拶したとき、これまでとは違った雰囲気を感じたのです。
日本ツアーのなかでもフラットな感情の持ち主で、会場で会っても恥ずかしそうに挨拶をするタイプ。物静かというか淡白というか、人によってはおとなしすぎる印象を受けることもあるでしょう。
しかし、その彼が真正面に立って、ボクの目を見て「今年もよろしくお願いします」と挨拶をした。これには正直、驚きました。それは悪い意味ではなく、いつもより明るく、そして力強い前向きなオーラが出ていたから。
聞けばこのオフに、ジュニア時代からやっていた自宅近くでの200数段の階段ダッシュを3年ぶりに行い体づくりに励んだのだとか。今年の目標である年間3勝と賞金王奪還に向け、いいスタートを切りました。
しかし、それを阻もうという選手が数多くいるのも、今シーズンの大きな特徴でしょう。その一人石川遼は、オフにあまりラウンドをせず、トレーニングと練習場でのボール打ちに徹したそう。開幕戦は肩慣らしかと思いきや優勝争いを主導。スウィング改造もほぼ完成に近づいた模様です。
ファン対応、ゴルフに取り組む姿勢は若手のロールモデル。石川遼に憧れてゴルフを始めた世代を、石川遼が迎え撃つ構図も今シーズンの楽しみです。コロナ禍も過ぎ、観客の入場制限も撤廃されました。昨年の蟬川泰果くんに続き、新たな歴史が生まれる予感もします。
ぜひ、トーナメント会場に足を運んでください。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月25日号「うの目 たかの目 さとうの目」より