野球:「振る力が飛ばしにつながります」
やはり多いのは「野球」経験者。
投げる動きに、飛ばしのヒントがあるというのはピッチャー経験者の佐藤慶太さん(48歳・HC1.3)。
「まず、止まった状態から動きが始まるところ。そしてカーブや緩い球、速い球などを投げるには体のコントロールが大事で、これがゴルフにすごく似ています。体を回転する動きが必要で、手だけでは投げられない。
ストライクゾーンがフェアウェイとすると、力んでワンバウンドしたり、引っかかって左に投げたり、暴投はOBになる。まさしく狙っていく感じが大切です。また守備で、捕球したら瞬時に見た感じのまま投げる。絶対距離感みたいなものが養われるので、アプローチに生きます」
中1から高3まで野球に熱中した木名瀬和重さん(51歳・HC2)もこう語る。
「やはり"振る"ということは生きてます。またボールの投げ方でいうと、ゴルフのインパクトは『シュート』。投球時、右手の中指と人さし指を立てると、多くの方は中指のほうが長いはず。そのまま投げると中指が利いてカーブに。
野手も投手も真っすぐに投げたいときは、人さし指が先にいく感覚、つまり全部、内側へ回旋しています。そうじゃないとボールは真っすぐ投げられない。野球選手はこの動きが上手だから、飛ばせるんです。僕の飛ばしもここに秘密があるんです」
福士代樹さん(50歳・HC0.7)は、インパクトからフォローにかけて、バッティングと共通の感覚があるという。
「右手をグーッと伸ばす、右手を押し込みながら返すイメージ。多くの人が右手を返すタイミングが遅い。インパクトの瞬間に体幹の真ん中で打つイメージも野球と同じ。インパクトが厚くなる。間ができて、ボールがクラブに乗っている時間が長くなる。僕も始めたときから飛ぶほうでした」
小中の軟式野球でずっとセカンドの“名手”だった関澤誠さん(52歳・HC0)。
「体に染み込んだ棒を振る動きはゴルフに生きます。また守備で、投手が投げると同時に、少し前傾姿勢でかかとを浮かせ、いつでも動けるようにする感じで、ゴルフのアドレスでもつま先体重にする。そのほうが動きやすいからです」
サッカー:「パットは自分でラインを作る感覚で曲げる」
「ゴールキーパーでしたが、先を読む力や視野は広がりました。ただ、点を入れられると一人だけ嫌な思いをしがち。やはり守りを大事にする発想になります。ゴルフはいかにダボを打たないか。飛ばしてバーディを取るより、まずOBを打たない、絶対手前から攻める。林の中からも絶対狙いません。無理して成功しても嬉しくない。
遊びのなかで曲げてゴールポストに当てるような練習もするんですけど、これはパッティングに通じます。サッカーが上手いやつに、ボールは自然に曲がると思わず、自分で曲げにいく、ラインを作る感覚で、と言うとすぐ理解します。強さで曲がる頂点は変わりますから」大橋武広さん(51歳・HC1.8)
バスケットボール:「目的の場所に球を投げる感覚」
「実は小学生の頃、地元のチームが戦うポートボールの大会があり選手でした。うちのチームは強い球を投げて速く展開させる作戦。私は強い球を投げるのが得意だったんです。ボールを遠くに投げる練習もしていましたし。これは飛距離につながっていますね。また、狙ったところに投げることも必要。これもゴルフっぽいですよね」松尾律子さん(48歳・HC5)
「大学時代バスケットが強いチームで鍛えられました。バスケでは、相手に負けたくないという気持ちが生まれる。ゴルフは自分との闘いと言いますが、同伴競技者との駆け引きはあるし、相手に負けたくない姿勢は大事です。あとは体幹。これがないとパスもシュートもできない。トレーニング、腹筋や馬跳び、坂登ぼりや持久走などで鍛えてきた体幹や足腰があるから、55歳でゴルフを始めても何とかなってきたのでしょう」大野とよ子さん(69歳・HC11)
柔道:「トップから背負い投げすると飛ばせる」
「背負い投げの形がゴルフのトップからダウンの感じに似ています。相手を投げる態勢に持っていったところがトップ。手の動きは右ひじを曲げて、左手を伸ばして。下半身はひざを曲げたまま。地面を蹴って(柔道の場合は両脚で)、背中を丸めて相手を1回転させて投げる。その動きをすると自然にインパクトを迎えている感じです。
柔よく剛を制すと言うけれど、相手の力を利用する。大技ですが、小柄ですばしっこい人が得意(僕は160㎝です)。形ができていないとダメ。オーバースウィングにならぬよう、ラームのように。あとは自然体の構え。力んで立ったら絶対投げられます。常にゴルフでも意識しています」江口信二さん(51歳・HC+1)
卓球:「フェース面でコントロールするスピン感覚」
「柔道と卓球と陸上をやっていました。体幹、体のバランスづくりには柔道が役立った。畳のヘリを足の親指の付け根で擦る、そこを中心に前後左右に移動したり、お腹に力を入れることで、母趾球と丹田を理解しました。卓球はフェース面でボールをコントロールするから共通点はすごくある。スピンの感覚がすごく求められる。ドライブがフック、カット打ちがフェード、ボールがフェース面に1度乗って出ていく感じも。
腕を振る感覚、肩の回転で打つこと、スマッシュでは左足を踏み込んで音を大きく立てますが、下半身の軸を速く動かすことで、振るスピードを上げるんです。『壁打ち』では、構えて目線とラケットを近づけ、体全体で押していく感じがつかめる。手先だけでは打てない。体で打つ、重心や脚の動きが大事なんだとわかりました」松下健さん(58歳・HC4.2)
スキー:「強い下半身、バランス感覚と体重の乗せ方」
「高校でアルペンスキーを。スキーは圧倒的に下半身の強化になり、ゴルフにも必要な体幹やバランス感覚を鍛えられます。夏の走り込みもすごく役立ちました。また、ターンするとき、内側のエッヂに乗りますが、テークバックのときもひざの内側、右足の母趾球に乗る。エッヂを立てるのと、そこに体重を乗せる感覚はゴルフと同じです。基本的には、山を下りようとする重力を自分で制御しながらターンする。
リズム、イメージ、想像力、この傾斜ならこのスピードが出るからこれくらいの加重でこうターンしようと。どのラインを通っていくかというイメージも最初の3、4ターンでは必要。これもゴルフに通じませんか?」関澤誠さん(52歳・HC0)
空手:「一瞬で周りの景色が消える集中力
「15歳から30歳まで空手をしていました。バランス感覚は生かせました。傾斜地だろうが最初からボールに当たりましたし、体幹の力は普通の人に比べて強いと思います。僕、生涯空振りは1回しかしたことがないんです。精神面では、試合での『集中力』が似ています。たとえば全国大会などでテレビカメラが回っていても周りの景色が消えて”ポーン“と中に入れてしまう。見えるのはコースだけの状態になれます。
空手の精神面がゴルフに生きたからです。また、ゴルフはミスしてもよい結果になることもあり、空手にはないこと。ミスでもパーはパー。ゴルフは取り返せるゲームなんです」村松和彦さん(57歳・HC+1)
軟式テニス:「面を正しく出して“乗った”感覚」
「私は軟式テニスで実業団にもいたことがありますが、どうしても右手が強くなりがちで、ゴルフでは左主導にするように心がけました。また『面』をかなり重視してきました。硬式テニスはカットする動きもあるんですけど、軟式は面に正しく当てて出していく。それで、面に乗ったという感じはすごくよくわかるんです。ゴルフでも同じ。だからよく、インパクトゾーンが長いと言われるのかもしれません」近賀博子さん(52歳・HC2)
~スポーツ経験をゴルフに生かす②に続く
※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月2日「上級者に聞いた スポーツ経験をゴルフに生かす!」より