米コネチカット州出身のマイケル・スウィーニーは家族以外その名を知らない26歳の無名プロゴルファー。そんな彼がコーンフェリーツアー(PGAツアーの下部組織)のマンデークオリファイ(予選)を勝ち抜いてホームタウン・レンダース選手権に出場。デビュー戦1ホール目でバーディを奪うと4ホール目でホール・イン・ワンを達成。リーダーボードの最上段を飾り周囲を驚かせた。

無名選手が好スタートを切ったことも驚きを持って報じられたが、なにより人々を驚かせたのは彼の経歴だ。ジュニア時代から全国に名を馳せカレッジゴルフのスターたちが集う米ツアーにあってスウィーニーは地元のコミュニティカレッジを1学期で中退したためカレッジゴルフは未経験。

学校を辞めてからの4年間はボーリング場と乗馬クラブ、二足のわらじを履き「草を刈ったり、シャベルで掘ったり、馬の世話をしたりしていた」という。

その傍ら音楽活動にも勤しみ友人と楽曲を制作。アマチュアイベントに参加する程度だったもののスウィーニーはラップ担当でマイキーD860という芸名まである。

18年フロリダ州ポートセントルーシーに移り住んだタイミングでプロ(ゴルフ)転向。その後3年間、ゴルフで稼いたのは小切手5枚分だけ。最初に手にした小切手はわずか33ドル(約4千円)だった。

食べていくためにガソリンスタンドのイートインコーナーでサンドイッチを作るアルバイトを始め、父親と住んでいた家を出て25歳で独り立ち。といっても小型の自家用車(14年版のヒュンダイ・エラントラ)をウォルマート(スーパー)の駐車場に停めて寝るという文字通りのホームレス生活を4カ月送った。

フロリダのゴルフ場のカート係(現在も続けている)として働いて得た給料はすべて自分のゴルフに充てる日々。ミニツアーで5勝を挙げ、この夏はPGAツアーカナダの出場権を獲得しているが、依然としてホームレスであり遠征費用にも事欠く生活を送っている。

ホームタウン・レンダース選手権に出場するためのエントリーフィ500ドル(約7万円)を払ったことでクレジットカードの限度額はほぼゼロ。安いモーテルに泊まって戦っている。

それでもクラウドファンディグには5桁の金額(100万円を超える額)が寄付されており「これまでにこんな大金を持ったことがない」と本人。

大会は荒天のため54ホールに短縮され、27ホール終了時点でスウィーニーは通算2アンダー、カットラインぎりぎりの位置でプレーしている。予選落ちなら賞金はない。残り27ホールでエントリーフィやキャディフィ、宿泊費などの経費分くらいは稼ぎたいものだ。

LIVゴルフの出現で米ゴルフ界はいままさにバブル景気に湧いている。優勝賞金4億円、5億円といったビッグイベントが多数設けられている一方でスウィーニーのようなホームレスゴルファーもいる。生きるために必死な下積みプロにガンバレ、とエールを贈らずにはいられない。

画像: この選手がマイケル・スウィーニー。現在は髪を後ろに束ねた、ちょんまげスタイルで試合に出場している(写真/Getty Images)

この選手がマイケル・スウィーニー。現在は髪を後ろに束ねた、ちょんまげスタイルで試合に出場している(写真/Getty Images)

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