コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3 D解析技術でデータ化することができる。今回は5年振りの復活優勝を遂げたジェイソン・デイのスウィングをゴルフコーチ・北野達郎がAIを使って分析した!

腰への負担を軽減したスウィングに変化

皆さんこんにちは。SPORTSBOX 3D GOLF スタッフコーチの北野です。今回はAT&Tバイロンネルソンで、5年ぶりの復活優勝を遂げたジェイソン・デイのスウィングを過去と現在で比較してみましょう。彼は長年腰痛などの怪我に悩まされ、ここ数年は調子を落としていましたが、今シーズンに入って優勝含むトップ10入り6回と復調してきました。今回は、腰痛の発症前と現在でスウィングがどう変化したか? を焦点にスウィングを分析していきます。

画像: PGAツアー「AT&Tバイロンネルソン」で5年振りの優勝を果たしたジェイソン・デイ(写真は2022年のバレロテキサスオープン 撮影/KJR)

PGAツアー「AT&Tバイロンネルソン」で5年振りの優勝を果たしたジェイソン・デイ(写真は2022年のバレロテキサスオープン 撮影/KJR)

まずアドレスでの過去と現在の比較ですが、明らかにスタンス幅が異なります。以前はかなり広いワイドスタンスでしたが、今は肩幅より若干広い程度で、以前よりスタンスが狭くなったことが分かります。また、現在のほうが僅かにボール位置が左足寄りに移動していることも分かりますね。このスタンス幅とボール位置の違いが、後述するスウィングの違いにも表れていますので、注目しておいてください。

画像: 現在のアドレス(右)は以前(左)よりもスタンスが狭まっており、ボール位置が僅かに左足寄りとなっている

現在のアドレス(右)は以前(左)よりもスタンスが狭まっており、ボール位置が僅かに左足寄りとなっている

続いてトップを見てみましょう。このトップに彼の腰痛発症前と後のスウィングの変化が出ています。これはジェイソン・デイ本人が最近のインタビューで語っていましたが、以前はトップで下半身より上半身が左へ傾く、ややリバースピポットの傾向があり、それが腰痛にも影響していたようで、現在はもっと右サイドにプレッシャーを乗せてトップを深くできるように心がけているそうです。

画像: 以前のトップ(上)は胸が背中側に反り、ややリバースピポットの傾向があった。現在(下)は右サイドに深く乗せて、胸の反りが改善されている

以前のトップ(上)は胸が背中側に反り、ややリバースピポットの傾向があった。現在(下)は右サイドに深く乗せて、胸の反りが改善されている

このトップの過去と現在の違いをスポーツボックスAIのデータで分析してみましょう。まずはPELVIS SWAY(骨盤の左右移動)とCHEST SWAY(胸の左右移動)の比較です。以前はアドレスに対してトップで骨盤−1.4インチ(約3.5センチ)右、胸−0.3インチ(約0.7センチ)右と、胸のほうが骨盤より右への移動量が少なく、そのぶんCHEST BEND(胸の前屈・伸展)は1.6度プラスと、若干胸が背中側に反る傾向がありました。このベンドの角度はプラスに増えれば増えるほど胸の反りが強いことを表しますので、腰痛に悩む場合はなるべくプラスに胸が反っていくのを抑えたい項目です。

そして現在のトップではアドレスに対して骨盤が−2.3インチ(約5.8センチ)右に、胸が−2.8インチ(約7.1センチ)右にそれぞれ移動していて、本人の言う通り以前より右サイドに深く乗せていこうとしていることが分かります。特徴的なのは、以前は胸のほうが右に乗らないぶんだけ胸も反っていましたが、今は胸が骨盤より僅かに右に移動するぶん、胸のベンドも−0.3度と以前より胸の反りが改善していることが分かります。

面白いのは、これを以前よりスタンスを狭くして行っていることです。スタンスは広くなる程に上半身と下半身の捻転差が作りやすくなりますが、デイにとっては腰への負担を減らすためには、胸も骨盤も深く回しやすい狭めのスタンスのほうが現在の身体のコンディションとマッチするということでしょう。

続いてフィニッシュを見てみましょう。ここでも腰痛の軽減を考慮したスウィングの変化が見られます。先程と同じくSWAYのデータをチェックしますと、骨盤の移動量はアドレスより7.2インチ(約18.2センチ)左で過去と現在がまったく同じなのですが、胸と頭は現在のほうがより左へ大きく移動していることが分かります。これは以前のフィニッシュがいわゆる逆C型のフィニッシュで、胸と頭はできるだけ左に流れずにその場に残すフィニッシュだったことを表しています。

画像: 以前は胸と頭を残す逆C型のフィニッシュを取っていた(上)。上半身が反るため腰への負担が大きかったが、現在(下)は胸も頭も左足の上でバランス良く立つI字型のフィニッシュに変わっている

以前は胸と頭を残す逆C型のフィニッシュを取っていた(上)。上半身が反るため腰への負担が大きかったが、現在(下)は胸も頭も左足の上でバランス良く立つI字型のフィニッシュに変わっている

この逆C型のフィニッシュは、上半身が反るぶんだけ腰への負担が大きいと言われています。最近ですと腰痛で欠場中のザラトリスなども、やはりこの逆C型フィニッシュでした。現在のデイは胸も頭も左足の上でバランス良く立つI字型のフィニッシュに変わっており、そのぶん胸と頭の左への移動量にも変化が見られます。スポーツボックスAIのデータによると、海外の男子ツアープロのレンジ(範囲)は、フィニッシュで胸が3.6〜9インチ、頭が8〜14.2インチそれぞれ左に移動しているということですので、以前のデイは胸と頭を右サイドに残すタイプの選手だったことが、このデータからも分かります。この逆C型からI字型へのフィニッシュの変化が、先述のボール位置の左足寄りへの変化と関連していると言えます。

今回はジェイソン・デイの過去と現在のスウィングを比較させて頂きました。今週は全米プロですが、2015年チャンピオンのデイが怪我やスランプを乗り越えて復活してくれたことで、より今週の見どころが増しましたね! また再びメジャーに強いデイを見せて欲しいです。 

This article is a sponsored article by
''.