「視覚と感覚で正しい軌道を覚えることが大切」というのは、元二輪国際A級プロ・ロードレーサーという異色の顔を持つ坂本博之プロ。今年のPGAのティーチングプロアワードで優秀賞を受賞した坂本の教えを聞いてみよう。
画像: 坂本プロが考案した最新練習器具。フェース向きやクラブの軌道が確認できる「スウィング・ガイド」が今年のアワード候補になった

坂本プロが考案した最新練習器具。フェース向きやクラブの軌道が確認できる「スウィング・ガイド」が今年のアワード候補になった

動きや形よりも「体の動きの速さ」や「ヘッドスピード」が大事

ロードレーサーとして、スピードを追求し戦ってきた坂本は、自身の経験をゴルフレッスンに生かしている。

「ゴルファーの多くはスウィングの動きや形は気にしますが、体の動きの速さやヘッドスピード、アドレスからフィニッシュまでの所要時間を意識することはあまりない。たとえばインパクトまで約1秒半ですが、これは普段の生活で気にしたことがない時間ですよね。僕はレースで1秒違ったらもう終わりだった。皆さんもこの時間を有効に使う感覚を磨いてほしいんです」

そこで考えたのが「スウィング・ラーニング」という練習器具。これが、2020年にPGAのティーチングプロアワードで最優秀賞を受賞した。

「ヘッドスピードで飛距離が変わることを体得してほしいんです」

会社の入館証のように、首から吊るして使う。ラバー部分にクラブのグリップを通し、伸びたゴムに引っ張られる感じをキープしたまま打つことで、軸ブレを防ぎ、手と体の位置が変わらない動きができる。

「まずはパットで、同じ振り幅でも、振るスピードを速めていくことで、2m、5m、10mと距離が変わることを理解してほしい。次にアプローチで、体が動くスピードでクラブが動くことも理解してほしい。このスピード感覚はショットにつながる、自分で磨くべき感覚です」

アマチュアに「楽しいゴルフ」を伝えたいという坂本。

「そもそも義兄に『教え方が上手い』と言われてその気になったんです(笑)。でも、トーナメントプロは”魅せる”のが仕事。だからレッスンでも自分の感覚を伝えればいいですが、ティーチングプロは言葉でわかりやすいく”伝える“のが仕事。理屈を勉強し、いかに感覚に落とし込んで教えるかだと思っています」

スタジオは父に借りた土地に自ら工夫した”半手作り“だ。

「どうしたらアマチュアにわかりやすく伝えられるか、自分で練習しながら、こんな練習器具があったらいいな」と考えてばかりです」

ハキハキと通る声で話す坂本。レッスンの最初には必ずカウンセリングを行う。

「まず、ゴルフは楽しいですか、から始めます。そして、飛ばす・飛ばさない・転がす、普段どれを練習していますか? と。全部できないとコースでは戦えません。でも、『飛ばす』とだけ言う方は多い。ゴルフの醍醐味を味わいたいならもちろんそれでもいいんですけど、スコアはよくならないと説明します」

これも、ゴルフはコースで行うゲームの楽しさがあると考えているから。これもレーサーとしての体験から来ているかもしれない。

「レースって、1周のうち、直線、大きなカーブ、小さなカーブ、と組み合わせて速く走るのが大事。ゴルフでは、ティーショット、傾斜から、バンカー、パターなどいろいろスウィングを組み合わせて1ホール回ります。ゴルフのマネジメントに似ていますよなね」

「行った道を戻る」感覚を視覚でとらえ、頭の中に焼き付ける

画像: 写真上が「装着することでヘッドスピードで飛距離をが変わることを体得できる」という練習器具「スウィング・ラーニング」。写真下の練習器具が「スウィング・ガイド」

写真上が「装着することでヘッドスピードで飛距離をが変わることを体得できる」という練習器具「スウィング・ラーニング」。写真下の練習器具が「スウィング・ガイド」

坂本がオヤジギャグとともに生徒に伝える「理屈」には、数字が入ってくることが多い。

「ゴルフって数字との戦いなんですよ。そもそも『ナイスショット』は18ホールで36回しか打てないんです。パー3は1回、パー4は2回、パー5は3回ですよね。この数は増えません。アマチュアの方は、それを増やそうとする。それよりミスショットした後の練習――林や傾斜から打つ、アプローチなど――の練習をしたほうがいい。それに一番打つのはパターなのに、その練習も少ないですよね。パット練習をしているから、スコアも”パッと”するんですと伝えるんです(笑)」

そのパットは、入れる練習と寄せる練習が肝心だという。

「入れる練習は、その人によって距離が違う。50㎝から始めて、10㎝くらいずつ伸ばしていき、自分にとって外しやすい距離が見つかるので、その距離を練習し続けることが大事です。そうして入る距離が2mまでいけたら、プロ並みですよ。そうしたら次は2mに寄せる練習をすればいい」

レッスンではヘッドスピードも必ず計測する。

「数値で見えるとわかりやすいし、やる気にもなります。高価なトラックマンでなくていいんです。また、ゴルファーって自分の欲求をスウィングで満たしたがる(笑)。ヘッドスピードとミート率は飛距離に関係しますが、僕はやはり、方向性を目指すべきだと伝えますから、そのためにはフェースの向きとクラブ軌道が重要になります」

そうして、考案した練習器具が、今年のアワード候補となった「スウィング・ガイド」だ。

「綺麗なカッコいいスウィングをしたい方は多いんですけど、それはどういうスウィングか聞くとわからない方が多い。僕はムダな動きがないスウィングだと答えます。そして、先ほどもお話ししたように、スウィングの動きや形を気にしすぎると、ムダな動きが出てくる。

ボールの飛び方はインパクトで決まります。本来は飛んでいくボールが全部教えてくれるんです。フェースが右を向いて当たったら右に行くし、左なら左。ボールが先生ですから、必ず確認してほしい。では、右に行かないようにするにはどうするか。で、僕の存在とレッスンが必要になってきます(笑)。目標に向けて真っすぐなショットを打つには、フェースの向きとクラブヘッドの軌道とターゲットラインと一致していることが重要なのです」

軌道は、傾斜やメンタル、あきらめ半分で打ったときや気合が入りすぎて打ったときなど、ショットごとに変わりがち。だからこそ、「スウィング・ガイド」を使い、視覚でとらえ、頭の中に焼き付けることが必要だという。

「ヘッド軌道は、バックスウィングとダウンスウィングで同じ軌道が理想ですが、現実には遠心力や重力などに邪魔され、行きと帰り道が違う状態になる。そのズレを、この器具で覚えてもらうんです。行った道で戻れば必ず当たる。一般道で来たのに、高速で戻ろうとするのは“打ちに行く”感覚なんですよ」

この練習をするときでも、必ずヘッドスピードは計測するといいと坂本。

「数字で見ると『この感じでこれくらい飛ぶんだ』とわかる。ヘッドスピードが40m/sの人なら9IやPWはドライバーの70%くらいにスピードで振るのが基本。ほとんどの方が振りすぎて、ドライバーと同じにしたがるんです。ドライバーの90%、85%、80%と、このクラブはこのスピードで振るという基準があったほうがいい。全部マックスで振ろうとすると当たらないし、そういうふうに道具は作られていないんです」

“ゴルフを楽しむ”ために、坂本が考え抜いて作った練習器具に、身をあずけてみるのもいいかもしれない。

THANKS/スウィングデザイン#19 PHOTO/Yasuo Masuda

※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日号「『スウィング・ガイド』でムダな動きナシ!」より

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