年齢を重ねて体の柔軟性や筋力が衰えても、ケガなく無理なく飛ばせるスウィングがある! 「胸の面を"ドア"みたいに動かして、『体が回る』動きを重視する。効率いいスウィングになりますよ」という小野寺誠プロの話を聞いてみよう!

体に負荷をかけず、クルッと回るスウィングがいい

シニア世代になったら、若いころのようにギリギリと体をねじって、その「捻転差」のエネルギーで飛ばすというスウィングはもう無理。飛ばせないだけでなく、体への負担が大きくケガのもとにもなりかねない。

3年前にシニア入りした小野寺誠プロも、自分自身、「ねじる」スウィングではなく、「回る」動きを重視しているという。

「年齢のこともありますが、私は年間200ラウンド以上プレーするので、体に負荷をかけすぎると首や背中などを痛めてしまうリスクが大きいんです。だからスウィングは『右向いて、左』という回転重視。体をねじるのではなく胴体を1枚の板のようにイメージし、足を使ってその向きをクルッと変えるような感じで振っています」

シニア世代は、体をねじって捻転差でパワーを生むよりも、スムーズに回転してクラブに仕事をさせたほうがいい。体全体をバックスウィングへ右に90度、そこからフィニッシュへ180度クルリと「方向転換」する動きだ。

画像: 足を使い体を"方向転換"する動きでクラブを振りたい。バックスウィングは右方向に90度、そこから左に180度回転してフィニッシュ。再現性も高い

足を使い体を"方向転換"する動きでクラブを振りたい。バックスウィングは右方向に90度、そこから左に180度回転してフィニッシュ。再現性も高い

柔軟性が低下しているのに無理にねじろうとすると、十分な捻転差が作れないだけでなく、軸がブレてスウェイしたり、前傾を維持できずに伸び上がるなどスウィングの再現性も損なう。ねじらずに回転を重視したスウィングなら、再現性も高く、クラブが仕事をしてくれる。フィニッシュでは左足の上にバランスよく立ち、クラブが体に巻き付くような形を目指そう。

右肩・右腰・右ひざを全部一緒に動かす!

小野寺プロが勧める「方向転換」の動きは、どこか体の一部を意識するのではなく、体の面全体の向きを変えるように動くことがポイントだという。

このイメージを理解するには左手1本でクラブを持って動いてみるのがお勧め。とくにフォローの動きがわかりやすい。

「体を正面に向けたまま、左腕を肩の高さまで上げ、クラブを垂直に立ててください。この左手の位置に右手を届かせるのがフォローの動き。右肩、右腰、右ひざ全部を一体にして左足の位置まで押し込みます。右足はかかとが浮いてOK。胸が目標方向を向くように体全体を左に向けてしまいましょう。あとはひじを曲げてクラブを担いだら、体にムリのないフィニッシュになります」

フィニッシュでは正面から見たときに、右ひざ、右腰、右肩が、左足の位置に一直線上に並ぶ形を目指そう。右サイド全体を『ドア』のように動かすことがポイントなのだ。

画像: 肩の高さまで上げた左手に右手が届くように、右サイド全体を押し込んでいく。左足の位置に、右ひざ、右腰、右肩が一直線上に並ぶ形を目指す

肩の高さまで上げた左手に右手が届くように、右サイド全体を押し込んでいく。左足の位置に、右ひざ、右腰、右肩が一直線上に並ぶ形を目指す

バックスウィングも同様に、左手を体からできるだけ遠くに届かせるように体の左サイド全体を押し込み、右手を添えるだけ。これなら体のどこかが突っ張ったりねじれる感覚はない。

「バックスウィングでは左肩、フォローでは右肩があごの真下に入るように動きますが、このときあごと肩の間に空間をキープするのがコツですよ」

トップのときは左肩が、フォローでは右肩があごの真下に入る。このとき、肩があごに接しないように空間をキープしておくと前傾を維持しやすく、体に負荷なくスムーズに回れるという。

また、このスウィングは、ワイドスタンスで下半身を踏ん張るのではなく、狭いスタンスで構え、ひざや足首を柔らかく使うほうがいい。ヒールアップもOKだ。

画像: 左手を体からできるだけ遠くに届かせるようにバックスウィング。体の左サイド全体を押し込む感覚が大切。そして、右手は添えるだけだ

左手を体からできるだけ遠くに届かせるようにバックスウィング。体の左サイド全体を押し込む感覚が大切。そして、右手は添えるだけだ

クラブが仕事をしてくれる。クラブのエネルギーで飛距離が出せる

体をねじらずに回転動作でスウィングすると、パワーが出せず飛ばせないと思うかもしれないが、実はそうではない。このスウィングは、体の負荷を減らす代わりにクラブに仕事をさせやすいので、クラブのエネルギーで飛ばすことができるのだ。

「体は地面と垂直な軸に対してヨコ回転しますが、クラブはタテ方向に使ってクルリと円を描くようにヘッドを走らせます。ポイントは親指方向のタテのコックを使うこと。トップとフィニッシュで、親指の上にグリップが乗っかるようにクラブを上手に使って振りましょう」

クラブをうまく体の前でさばいてヘッドを走らせられると、体がそれにつられて回転する感覚が生じる。体主体というよりも、クラブ主体でスウィングできるようになれば、軽く振っているつもりでもヘッドスピードは上がり、十分な飛距離が出せる。

「始動の際に、グリップエンドを押し下げてヘッドをヒョイと上げていくような意識を持つといいかもしれません。あとはクラブの慣性を妨げないようにすることが肝心ですよ」

トップとフィニッシュの形を意識しながら、ヘッドがま〜るく円を描くように連続素振りを繰り返すと、クラブに引っ張られて体が左右に向きを変える感覚が生じてくる。実際のスウィングでもこの感覚を得られれば飛距離は十分出せるという。

画像: 「タテのコック」を使ってヘッドを走らせる。写真のようにグリップは左親指の上に乗り、グリップ上部は指にひっかかっているだけ。ギュッと握る感覚はないことが大事

「タテのコック」を使ってヘッドを走らせる。写真のようにグリップは左親指の上に乗り、グリップ上部は指にひっかかっているだけ。ギュッと握る感覚はないことが大事

ヘッドに仕事をさせる感覚を身につけよう!

最後に、体にやさしい「ドアスウィング」を身につけるうえで有効なドリルを教わった。

「ヘッドを空中に浮かせたアドレスから、地面のボールを打つ練習が効果的です。アドレスよりも低い位置にあるボールを打つために、ヘッドの遠心力を生かせるようになるんです」

また、トップで2秒動きを止め、そこから反動をつけずにフィニッシュまで振り切る練習も、体の反動やねじれを使わずにクラブに仕事をさせる感覚を養うのに有効とのこと。

「たくさんクラブに仕事をさせるには、自分の力は想像以上に小さくてOK。これに気づくことがドアスウィング習得のカギですよ」(小野寺プロ)

PHOTO/Hiroaki Arihara TEXT/Kousuke Suzuki THANKS/サンレイクCC 

※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日号「50歳過ぎたら右向いて左! ねじらず回す」より

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