パーオン率は成績に直結するスタッツで、女子ツアーは特に顕著
スタート時点で山下と2位の佐久間の差は1打。5番パー3でバーディを奪った時点で2人は並んだ。しかし、女王はここからが圧巻だった。6番パー4で5メートルのパーパットを沈めてピンチを切り抜けると、7番から3連続バーディ。さらに11番パー4ではカラーから10メートルを沈めて、5ホールで4つスコアを伸ばした。
対する佐久間はこの間に2ボギー。その差はあっという間に6打に広がった。最終的には2人に割って入る形で、19歳の佐藤心結が2位に食い込み、優勝争いはこの5ホールでほぼ決着となった。
オールラウンドに強さを発揮する山下だが、その基盤となるのは安定感抜群のショット力。それを数字で示すのがパーオン率だ。年間女王に輝いた昨季は75.15%で首位。今季も71.34%で3位と高水準をキープしている。
パーオン率は成績に直結するスタッツで、近年の女子ツアーはそれが特に顕著だ。
2019年に実質1年目でパーオン率1位となった稲見萌寧は続く2020-21年シーズンも1位をキープし、賞金女王に輝いた。また、2020-21年にパーオン率3位ながら未勝利だった西郷真央は続く2022年に前半だけで5勝を挙げている。
現時点で強い選手はもちろん、近くブレークする選手が見つけられるのがパーオン率のランキング。
それを踏まえて現時点でのランキングを見ると、トップは今季2勝の穴井詩、2位は腰の手術で欠場中の原英莉花、3位に山下、そして4位に佐久間が名を連ねる。
プロテストでは岩井姉妹を抑えてトップ合格した佐久間
佐久間は原や西郷と同じ尾崎将司の門下生の一人。
高校入学前から指導を受けてきたジャンボの秘蔵っ子で、ショットメーカーぶりは2人の姉弟子譲りだ。
オフにジャンボから「縦振り過ぎる」と指摘され、修正に努めてきたことが今季の好調の要因だ(13試合に出場しトップ10フィニッシュ4回)。
プロテストでは同い年の岩井姉妹(明愛、千怜)を抑えてトップ合格を果たしており、同期に負けてはいられないという思いは強い。
一方、環境の変化には敏感なようでコロナ禍で自粛生活を余儀なくされた2020年には一時、体重が激減。ルーキーだった昨年もコンディション維持に苦しむ時期があった。
ツアー生活にも慣れた今季はようやく戦える態勢が整ったともいえる。パッティング、ショートゲームのスタッツでも上位につける山下とトータルではまだ差があるものの、佐久間は間違いなく次のブレーク候補。
開幕前にジャンボの前で口にした「初優勝」が実現する日も決して遠くはないはずだ。
今回初めて優勝争いに加わった佐久間はラウンド後
「最終組はギャラリーさんの数も違うので、それがすごく励みになりました」
と話した。
人気選手が成績にかかわらず、時には最終組以上の大ギャラリーを引き連れていることを思えば、注目度という点ではまだまだこれからということ。パーオン率が示す佐久間のポテンシャルの高さを知ったゴルフファンの皆さんには近い将来、山下のライバルにもなり得る存在として、これまで以上に注目しておこう。