14年の年間王者でツアー通算7勝のホーシェルにとって昨年のメモリアルでの勝利は「人生でもっとも価値のある1勝」だった。ところが1年後、彼は生涯で最もみじめな思いをした。
晴天に恵まれたミュアフィールド・ビレッジで3ダブルボギー、6ボギーの12オーバー84。「ゴルフ人生のなかで自分のゲームに対する自信は最低レベルです。でもこんなスコアを叩きながら(良い方向に転換するのは)そう遠くないと思えるのです。そんなことをいうなんてどうかしているとみなさんは思うでしょう。でも遠くないというのが素直な気持ちです」
ゴルフはたった1つのきっかけ、たった1つのショットでガラリと反転する。悪くなるのも良くなるのも紙一重、それが魅力であり難しいところでもある。
連覇を狙うプレーヤーがマークした史上ワーストスコアを更新(これまでは79年のジム・シモンズの80がワースト)してしまったが、過去にはホーシェル同様“やらかしてしまった”ディフェンディングチャンピオンがいる。
16年に優勝したウィル・マガートは翌年の最終日に83を叩いている。また初代チャンピオン(78年覇者)ロジャー・モルトビーは79年大会の第2ラウンドでなんと92の大乱調。6月なのに気温が氷点下まで下がった強風の中という悪条件はあったものの90台は珍しい。
大会5度の優勝を誇るタイガー・ウッズも15年の第3ラウンドで85を叩いている。ちなみにその年のディフェンディングチャンピオンは松山だった。
首の痛みもようやく引き手応えをつかみつつある松山はホーシェルのトラブルとカントレーのスロープレーにも惑わされずイーブンパー72で33位タイとまずまずの滑り出し。15番パー5では残り239ヤードを4番アイアンでピンそば30センチに寄せ楽々イーグル。目の覚めるような2打目はまさにショット・オブ・ザ・デイと呼ぶに相応しい。
最終18番でもセカンドショットがピンを直撃するなどアイアンのキレが戻ってきた。12番パー3ではピンぎりぎりを狙って惜しくも池に捕まりダブルボギーを叩く場面もあったが本人は「よくなる兆しが見えてきた」と来るべきビッグイベント全米オープンに向け着々と準備を整えている。ツアー初優勝を飾ったビッグイベントで2日目以降の猛チャージを期待したい。
そしてホーシェル。スコアが悪いと記者を避け素通りする選手も多いが彼は悪くてもマスコミに丁寧に対応するナイスガイ。今季は不調でポイントランク三桁台とプレーオフシリーズ進出にも黄信号が灯っている状況だが1日も早くトンネルから抜け出してもらいたい。