9ホールのみを戦う最終ラウンドは大混戦で3人のプレーオフ決着
最終ラウンドを同一9ホールとしての27ホール決着は2021年「NEC軽井沢72」以来2年ぶり。セカンドカット(競技成立のため、決勝ラウンドの人数を減らすこと)の実施も2021年「資生堂レディス」以来2年ぶり。同一9ホールとセカンドカットが同時に行われるのはツアー史上初めてと、今大会は異例づくめ。
最終日までかかった第1ラウンドの18ホールを終え、6アンダーの首位には3週連続優勝がかかる山下美夢有と初優勝を狙う阿部未悠、今季1勝の吉田優利の3人が並んだ。
そんななか、残り9ホールを戦う最終ラウンドでロケットスタートを決めたのは3打差から出た大里桃子だった。
「短縮になったので全部バーディを取るつもりで回ったんですけど、まさか最初からこんなに取れるとは」
と出だしの10番から13番まで4連続バーディを奪い、最終組がスタートする前に単独首位に躍り出た。
15番でもバーディを奪い通算8アンダーとした大里に対し、ここから後続が巻き返す。
大里に負けないスタートダッシュで佐久間朱莉が追いつくと、女王・山下は13、14番で連続バーディ。この時点ですでにホールアウトしていた大里を含め、3人が首位に並んだ。
17番のバーディで川岸がここに加わったのも束の間、最終18番をバーディとした佐久間が一歩抜け出してホールアウト。続いて川岸も18番をバーディとして首位タイでフィニッシュ。
大混戦の中、上位陣のスコアは動き続けた。
いよいよ最終ラウンドは大詰め。
山下は17番2メートル、18番3メートルと終盤のチャンスを生かせず、1打差でプレーオフには残れない。
同じ最終組の阿部は18番パー5でイーグルが必要だったが、2打目をトップしてクリークの淵のラフへ打ってしまう。傾斜がきつい深いラフから果敢にグリーンを狙うも、3打目を目の前のクリークに落とし、ドロップしてからの5打目もグリーン右サイドの池に入れて痛恨のトリプルボギーを叩いて、初優勝のチャンスを逃した。
優勝争いの中で迎える最終ホールの緊張感は27ホールの短期決戦でも変わらなかった。
18番で行われたプレーオフでは川岸が3打目を正規のラウンドとほぼ同じ左手前1.5メートルにつけてバーディを奪い、今大会を象徴するように雨粒が落ち始める中、涙の復活優勝を果たした。川岸は
「2018年にドライバーの不調からシードを落として、コロナで試合が少ない時期など、いろんなことがあって長かったですけど勝てて良かったです」
苦しい時期を振り返りながら喜びを語った。
規定通りとはいえ、4日間72ホールの試合が増える中、27ホールで試合が決することに物足りなさを感じたり、短縮競技でもメルセデスランキングのポイントが減少しないことに違和感を持つファンもいるだろう。
とはいえ、この濃密な9ホールとプレーオフを戦い抜いた川岸の復活優勝は価値あるツアー1勝となった。