米女子ツアー「みずほアメリカオープン」で、プロデビュー戦にして初優勝を手にしたローズ・チャンのスウィングを、ゴルフコーチ・北野達郎がAIを使って分析した!

皆さんこんにちは。SPORTSBOX 3D GOLFスタッフコーチの北野達郎です。今回はUS LPGAツアーのみずほアメリカンズオープンで、プロ転向後のツアー初出場初優勝という快挙を成し遂げたローズ・チャンのスウィングをスポーツボックスで分析してみましょう。

画像: 米女子ツアー「みずほアメリカオープン」を制したローズ・チャン(写真は2023年のマスターズ練習日 撮影/Blue Sky Photos)

米女子ツアー「みずほアメリカオープン」を制したローズ・チャン(写真は2023年のマスターズ練習日 撮影/Blue Sky Photos)

彼女は今年のオーガスタナショナル女子アマ優勝をはじめ、女子アマ世界ランク1位に史上最長の141週に渡って君臨するなど、アマチュアタイトルを総ナメにして、プロデビュー戦でいきなり優勝を飾りました。その強さの秘訣を探ってみましょう。

まずアドレスですが、グリップは左右ともスクエアグリップで、手を正面で合掌してるかのような形です。スタンスは肩幅より少し広めです。左足はつま先を僅かに開いていますが、右足はつま先を直角に向けています。このつま先の向きに関しては後述します。

画像: アドレスを見ると、スタンスに対して左足のつま先はわずかに開いているが、右足は直角となっている

アドレスを見ると、スタンスに対して左足のつま先はわずかに開いているが、右足は直角となっている

次にテークバックを見てみましょう。ローズ・チャン(以降チャン)のスウィングでまず最初の特徴は、「大きく長いスウィングアーク」です。「ELBOW FLEXSION」は、肘の屈曲の角度を表しますが、「LEAD ELBOW(左肘)」は176.4度、「TRAIL ELBOW(右肘)」は155.2度で、肘が左右とも適度に伸びていることが分かります。

画像: テークバックでは肘が適度に伸び、両腕の三角形のシルエットが維持されている

テークバックでは肘が適度に伸び、両腕の三角形のシルエットが維持されている

これはP2ポジション(シャフトが地面と平行)でのLPGAツアーアベレージ(左肘164.8度、右肘147.0度、P2ポジション・スポーツボックスAI社調べ)と比較しても、チャンは両肘が伸びたままテークバックするタイプであることが分かります。よく「両腕の三角形を崩さないでテークバックしましょう」とレッスンで聞いたことがある方もおられるでしょう。チャンのテークバックは正にその教科書通りのテークバックと言えます。

では続いてトップを見てみましょう。先程お伝えしました「大きく長いスウィングアーク」のテークバックから、チャンのトップは高くアップライトなポジションが特徴です。左腕がよく伸びて頭より両手が高い位置にあります。アドレスの位置からの両手の上下の動きを計測する「MID HAND LIFT(単位はインチ)」は46インチ(約116.8センチ)で、LPGAツアーアベレージ(約35インチ・約89センチ)と比べて約30センチ近く高いポジションにあります。

画像: トップでも左腕は伸ばされていて、かなりアップライト。これはチャンの身体の柔軟性がなせる業。アドレスで右足つま先が直角になっているのも、回り過ぎてしまう骨盤の動きを抑えるため

トップでも左腕は伸ばされていて、かなりアップライト。これはチャンの身体の柔軟性がなせる業。アドレスで右足つま先が直角になっているのも、回り過ぎてしまう骨盤の動きを抑えるため

どれくらいトップの高さが違うか例えるなら、チャンは長尺ドライバー1本分の長さ、LPGAツアーアベレージはサンドウェッジ1本分の長さです。長尺ドライバーとウェッジの長さの違いくらい、トップの高さが違うと想像して頂くと、チャンのトップがいかに高いトップポジションにいるかお分かり頂けるでしょう。

これだけ高いトップでも左腕の長さが保たれているのは、彼女の両腕の長さと身体の柔らかさが所以です。その身体の柔らかさを裏付けるデータが、CHEST TURN(胸の回転量)、PELVIS TURN(骨盤の回転)、そしてX-FACTOR(胸と骨盤の捻転差)です。胸の回転が−99.4度、骨盤の回転が−44.6度、 胸と骨盤の捻転差は−58.2度(マイナスはいずれもバックスウィング方向)と、捻転差が非常に大きいのが分かります。

ここでスタンスの右足つま先を直角に向けていたことを思い出して下さい。通常つま先を直角に向けると骨盤の回転は制限されますが、チャンはそれでも45度近く回転しています。おそらく右足つま先を開くと骨盤も回り過ぎてしまい、捻転差をロスしてしまうのでしょう。チャンの柔軟性がよく分かりますね。

そしてダウンスウィングは、3Dアバターのハンドパス(両手の軌道のライン)に注目して下さい。黄色のラインがバックスウィング、オレンジのラインがダウンスウィングですが、切り返しで一瞬手が真下に下がってからP6付近まできれいに重なっています。この後方からのハンドパスは、前後のブレ幅が少ないほど再現性が高まります。余計な手の動きが無くシンプルで再現性が高いスウィングであることが、このハンドパスの軌道からよく分かります。トップから切り返しで手は前ではなく真下に下がるので、チャンはどちらかと言えばドローヒッターのタイプです。

画像: 両手の軌道を見るとバックスウィング(黄色のライン)とダウンスウィング(オレンジのライン)でほぼ重なっている。余計な手の動きが無い、シンプルで再現性が高いスウィングであることがわかる

両手の軌道を見るとバックスウィング(黄色のライン)とダウンスウィング(オレンジのライン)でほぼ重なっている。余計な手の動きが無い、シンプルで再現性が高いスウィングであることがわかる

最後にフォロースルー(P8・シャフトが地面と平行)ですが、彼女の両膝に注目して下さい。膝が左右ともしっかり伸びていることが分かります。「LEAD KNEE FLEXSION(左膝)」は177.6度、「TRAIL KNEE FLEXSION(右膝)」は163.4度で、左右ともLPGAツアーアベレージ(左膝174.1度、右膝151.3度、P8ポジション・スポーツボックスAI社調べ)と比較すると、バーチカル(縦方向の力)が大きいタイプであると言えます。それは両足のつま先の向きがアドレスからフォロースルーまでほとんど変わらずに両膝が伸びていることからも分かりますね。バーチカルを大きく使うタイプの選手の中には、左足を後ろに引く動作を入れて足裏がめくれ上がる選手もいますが、彼女は足の向きが変わらないのでスウィングバランスが良いのも特徴です。

画像: フォロースルーでは両膝がしっかりと伸びている。ツアー平均で見ても、チャンは縦方向の力を大きく使うタイプであることがわかる

フォロースルーでは両膝がしっかりと伸びている。ツアー平均で見ても、チャンは縦方向の力を大きく使うタイプであることがわかる

まとめると彼女のスウィングは、①大きく長いテークバックと柔軟性の高いトップ、②きれいに重なってブレの無いハンドパス、③両膝が伸びてバーチカルの力が大きいフォロースルーの3点が主な特徴と言えるでしょう。今回は、ローズ・チャンを解析させて頂きました。72年ぶりのプロデビュー戦での勝利という今回の快挙から、いったいどんなプロキャリアを築いていくのか、また1人楽しみな選手が現れました!

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