試合中のギャラリーとのコミュニケーションも自然
今年の全米プロの表彰式では、対称的な2人のプロフェッショナルが立っていました。優勝したブルックス・ケプカ、もう1人が46歳のロークラブプロに輝いたマイケル・ブロックです。今回はブロックについてご紹介します。
所属するゴルフ場は南カリフォルニアのアロヨ・トラブコGC。PGA(全米プロゴルフ協会)主催の全米プロは、アメリカ全土のクラブプロ、レッスンプロにはマスターズのような存在。直前のクラブプロ選手権の上位20名が出場できます。ブロックは今回で5回目の出場。PGAツアーには全米プロ前までで24試合に出場し4試合で予選通過の戦績です。
今大会は、14番で指名された選手がイヤホンをつけ実況席とやり取りする企画がありました。
クラブプロの代表としてブロックが指名されたのでしょう。ボクが彼をプロフェッショナルと感じたのは、その対応。ツアー選手とは雰囲気が違い、シブい感じではあるんですけど、居酒屋で話をしているような放送席との軽快なやり取りなんです。
ここで初日に、目標は予選通過とロークラブプロの獲得、クラブプロとして唯一成し遂げてないことなので、何としても!……と熱く語っていました。
ちなみに試合中のギャラリーとのコミュニケーションも自然で、ラウンド後の会見でその対応について聞かれると「芝の育て方について熱心に質問する弁護士、バーガーの味がまずいと訴える会計士……クラブプロの相手はいろんな性格のゴルファーですから」とユーモアを交えて答えていました。
さて、初日、2日目ともイーブンで回ったブロックは、10位タイでクラブプロでただ一人、予選通過。早くも目標を果たします。3日目の同組はジャスティン・ローズ。大雨となり、飛ばないブロックには厳しい状況でしたが、この日もイーブンで回り8位タイへと浮上。ラウンド後の会見では「ローズの大ファンなので、最初の3ホールは顔を見られなかった。見てしまうとビビってしまうと思ったからね」と、ここでも記者たちを笑わせます。
そして、会見場を出て最終日はローリー・マキロイと回ると知ると、「嘘でしょ」という表情で場を和ませます。そして当日には、そのマキロイの前で、15番であの"ダンク"ホールインワンです。
ブロック自身、試合では初のエースを、大舞台でやってのけました。ブロックのボールには「WHY NOT」という文字がプリントされています。英語で「Letʼs」、日本語で「やるぞ!」といった意味でしょうか。ゴルフが思い通りにいかなかった時期、「なんで入らないんだ」と思うのでなく、「入れてやるぞ」と自分をポジティブに奮い立たせた言葉。
07年にはこれを目に焼きつけ、最終ホールで7mのパットを入れて全米オープンの初出場を果たしたそうです。
全米プロ翌週は、月曜からレッスンが入っていたそうですが、翌週のチャールズ・シュワブ、6月第1週のカナディアンオープンに早くも推薦出場が決定。当分、"ブロックブーム"は続きそうです。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月13日号「うの目 たかの目 さとうの目」より