ローリー・マキロイの大会3連覇を阻みPGAツアー初優勝を目指したトミー・フリートウッドの希望を打ち砕き、地元カナダのニック・テイラーが母国のナショナルオープン=RBCカナディアンオープンで逆転勝利を収めた。そぼ降る雨のなかプレーオフ4ホール目でおよそ20メートルもの超ロングパットを沈め優勝を決めると大ギャラリーがスタンディングオベーションの大熱狂。本人も手にしていたパターを放り投げ喜びを爆発させた。

出だしは最悪だった。大会初日75を叩いたテイラーは120位からのスタート。その夜、妻アンディさんから「いいショットが思うようにいかなかったときの態度が良くない」と指摘された。「あとちょっとでいい感じなのに、と落ち込んで切り替えができていなかった」と猛省した。

妻からの忠告を胸に2日目67で盛り返し予選を突破すると、3日目にはコースレコードの63をマーク。46人をごぼう抜きして優勝圏内に浮上すると、最終日は彼より上位に大会3連覇を狙うマキロイら強豪がひしめいていたが「自分のプレーに集中する」ことだけを考え6アンダー66の好スコア。通算17アンダーまで伸ばしフリートウッドとのプレーオフに進出した。

グリーンサイドにはカナダが誇るマスターズチャンピオン&次期プレジデンツカップのインターナショナルチームキャプテン、マイク・ウィアーをはじめコリー・コナーズ、アダム・ハドウィンら“チーム・カナダ“の面々が固唾を飲んで見守っていた。ひとりとして立ち去ることのないギャラリーがコナーズの名前をコールする圧倒的ホームの雰囲気に会場は包まれた。しかし、だからこそずっしりと重いプレッシャーが双肩にのしかかる。

勝てば69年ぶりのカナダ人による優勝。その瞬間はまるでゴルフの神様が用意した奇跡のように訪れた。およそ20メートルのイーグルパットが勢いよくカップに飛び込みフリートウッドを一蹴したのだ。

画像: PGAツアー「RBCカナディアンオープン」を制したニック・テイラー(写真/Getty Images)

PGAツアー「RBCカナディアンオープン」を制したニック・テイラー(写真/Getty Images)

「言葉がない。カナダのため、家族のために勝つことができて、人生で最高の気分を味わうことができた」というと目頭を押さえ言葉を詰まらせた。

ツアーでも後ろから数えたほうが早いほど“飛ばない“選手のひとり。コースレコードをマークした3日目でさえティショットが270ヤードに届かなったのが6ホール。大会を通して平均286ヤード程度しか飛んでいない。そのかわりパッティングのスタッツは常に上位。飛ばなくてもショートゲームで飛ばし屋を凌駕できることを身をもって示した。

13年前のバンクーバー五輪で聖火ランナーを務め、カナダの2ドル硬貨トゥーニーをボールマークに使うカナダ愛溢れる35歳。世界で戦うには飛距離が足りないといわれる日本勢にとってお手本のような存在だ。

※2023年6月12日13時0分 文章を一部修正いたしました

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