金谷拓実をプレーオフで退けプロ初優勝を飾った中島啓太
2週連続優勝を狙う金谷拓実と、2週連続2位と惜敗してきた中島啓太との一騎打ちとなった最終日。初日を10アンダーでスタートした金谷選手を5打差で追い、2日目には4打差、金谷選手が8アンダーでプレーした3日目には9アンダーと上回り、3打差の追い上げムードで最終日を迎えました。とうとう12番で金谷選手を捉えるも、ミスが許されないサンデーバックナインの緊張感の中で、追いつき追いつかれとバチバチの手に汗握る展開。そして最終ホールのバーディで再び追いつきプレーオフに突入していきました。
プレーオフで敗れた「ミズノオープン」の平田憲聖、2打差で敗れた「BMWツアー選手権」の金谷拓実と同年代の選手との優勝争いの中で刺激を受けないはずはありません。海外での活躍を目指す選手が増えている中で、選手のレベルも確実に上がっています。飛距離や正確性に加えて、積み重ねてきた鍛錬に裏付けされた技術を持って、前後左右に振られたピンを狙う勇気。そのぶつかり合いが白熱した試合展開を生んでいます。
プレーオフの2ホール目にラフからベタピンで勝利を手にした中島選手と敗れた金谷選手のがっちりとしたハグに、清々しさを覚えたのは私だけではないはずです。では中島啓太選手のスウィングを見てみましょう。
回転力を高める右腰のスペース
オーソドックスなスクェアグリップで握り、両腕を胸に乗せるようにわきを締めた構え。始動ではわきを締めたまま胸の回転に腕が同調してトップを迎えます。画像Aのように両足の甲に赤線を立ててみると、テークバックで右腰と線との間にスペースが見られ、左のお尻は左の赤線に近づいていることが確認できます。
中島選手は左右の体重移動を多く使って打つのではなく、骨盤を回転させ上半身、腕、クラブへと力を伝達して打つタイプ。右の股関節に角度をつけ骨盤を前掲させ上半身と下半身の捻転差を作りながら、骨盤をターンさせるエネルギーを溜め込んでいる様子が見て取れます。
角度をつけた右の股関節から左の股関節へと移行するように動かすと、骨盤を前傾させたままターンさせることができます。トップで左の赤線にお尻が近づきましたが、左サイドがその線を越えることなく左腰を後ろに引くようにすることで骨盤が素早くターンし、お腹から胸へと伝達し、捻転差があった上半身はフォローで下半身を追い越していきます。
中島選手、金谷選手を、河本力選手も同じように、クラブや腕の重さを使った反動で切り返すのではなく、足から静かに切り返して骨盤、体幹、上半身、腕とキネマティックシークエンスといわれる体の動く順番が整っていることで効率よくクラブを加速させることができています。
こういったキネマティックシークエンスを整えるには、メディシンボール投げやボックスジャンプ、器具やゴムを使ったトレーニングなど様々なトレーニングに取り組んで、身につけていきますが、連続の素振りやスローモーションの素振りでも十分に効果が得られます。
昨年のマスターズの練習日の夜に、テーラーメイド契約の選手や関係者たちが集まるハウスで、CEOのデイビッド・エイブルス氏と当時アマチュアだった中島啓太選手が複数年契約する調印式に立ち会う機会に恵まれました。
そのときは、アジアアマで優勝しマスターズに出場したアマチュアだった中島選手ですが、1年後に大きく成長しプロ初優勝を遂げる姿を見せてくれました。金谷拓実、河本力、中島啓太、蝉川泰果だけでなく、既に海外でチャレンジしている選手も含めるとPGAツアーや欧州ツアーで彼らが活躍する日はそう遠くないように思えます。