全米アマ優勝の馬場咲希さんとも仲良しの飯島早織さん
最終日は、早朝から小雨が降り始め、時折強い風が吹き抜けるコンデション。
「ラフから打ったボールはグリーンに止められなくて……」(飯島さん)とフェアウェイキープが必須の状況。3番まではパーを重ね、4番でバーディを奪ったものの、6番、7番で連続ボギーを打ってしまう。しかし、8番で自ら流れを変えた。
「得意なホールなので、2メートルを入れる!」
強気のパットでバーディを奪い、一度はあきらめかけていた気持ちを切り替えた。
そこには父のアドバイスもあったという。3日目を終えて、首位は守ったものの、3人が同スコアで並びプレッシャーを感じていた。
「最終日は、緊張するなといっても、緊張はするもの。優勝したいかより優勝したときの景色を想像しなさい」
緊張しながらも、その父の言葉を胸に秘めて前を向いた。
9番のバーディでスコアを戻し、11番でさらにスコアを伸ばす。ただ13番でのボギーのあと、14番のティーショットを右に大きく曲げてピンチに見舞われる。しかし、
「林からグリーン近くまで打って、そこからのチップインバーディが大きかったです」
その後、同組の選手がスコアを落とし、18番のティ―インググランドに立ったときには3打リードしていた。
「貯金があった」ことで、この18番のパー5を攻めた結果、2打目がトップして木に当たり、ダブルボギーを叩いてしまった。
「パーでもよかったんですが、攻めた結果です。後悔はしていません。これも経験です(微笑)」
なんとか『優勝の景色』を手にすることができた。
『優勝の景色』の前には、先にホールアウトしていた昨年の全米女子アマチャンピオンの馬場咲希さんの姿があった。
同世代で仲良しの全米覇者と日本覇者が喜びのハイタッチを交わした。
飯島早織さんはゴルフ以外にも多くの"武器"を持っている!?
飯島さんがゴルフを始めたのは4歳のころ。父、母、兄、姉の5人で何か同じものを始めようと、ゴルフが選ばれたという。
「4歳だから危ないとゴルフをさせてくれなくて、練習場で泣いていて。4歳でもゴルフをさせてもらえる練習場で、お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒にゴルフにハマっていったんです。お金がかかるからと、両親はゴルフをやめるようになりました」
ゴルフにどっぷりハマった飯島さん。今ではこんな特技を持っている。プレー時の状況やスコアの詳細を明快に正確に話せるのだ。まるで映像を見ながら話しているかのように……。たとえばバーディを奪った4番ホールであれば
「4番は148ヤードのややアゲ(ンスト)で6Uをやさしく打って、4メートルの下りのスライスを入れてバーディです」
と1ヤード刻みの距離、風の向き、番手、力感、グリーンの形状、パットのライン……、すべてを台本に書かれているセリフを読んでいるかのように流暢に話していく。
「私、記憶力はいいんです。一度回ったら、コースもグリーンの形状もわかるので、攻め方がイメージできます。前週のサントリーレディースの予選会を通ってたら、(今大会の)練習ラウンドができないので、3月にお兄ちゃんと練習ラウンドしたんです。印象は狭めで、OBはないけど、すぐ木に当たってしまう。グリーンも傾斜がある。ちょっとしたミスがボギー、ダブルボギーにつながってしまうと、把握できました。フェアウェイから打てば、なんとかなんじゃないかな……。それで思った通りに、4日間プレーできました」
記憶力の良さは練習ラウンドした兄のお墨付き。
「妹はIQも高いと思います。ものまねも上手いし、絵も上手い。アート感覚は優れていると思いますよ」
一緒に4日間タッグを組んだ母にものまねで"メンタルコントロール”をするといった武器も持っていた。
「流れが悪くなったら、新作のドラえもんのものまねを試してみたり、しゃべったりして、そのうちゴルフのリズムがよくなりました」
と4日間を通して、笑顔でゴルフを楽しんだことで、最終日までトップを守り続けることができたようだ。
「次はプロテストが一番の目標。20位以内に入れば、みんな一緒なのでその辺もしっかりマネジメントしていきたいです」
ゴルフばかりでなく、多くの武器を持った飯島さんは、この優勝により最終プロテストの資格を得たことで、夢の女子プロゴルファーの道に一歩近づいた。