遠回りしているゴルファーは多い
O編 ここまでTPIのスクリーニングテストを4種類(骨盤傾斜、骨盤回旋、上半身回旋、90/90)教えてもらったわけだけど、スウィングを変えるときには、やりたい動きを意識して球を打つだけじゃダメだってことがよくわかったよ。
坂詰 そうですね。テストの動きができないと、やりたくてもできない動きが出てきちゃうんですよね。たとえば、「頭を動かすな」「ヘッドアップするな」「ボールをよく見ろ」って言われるでしょ。でも、骨盤回旋の動きがスムーズにできない人は、腰が左右に動いちゃうから、そういうことができないんです。
O編 ということは、骨盤回旋ができないと、「軸をブラさずにスウィングする」とか「その場で体を回す」なんてこともできないわけだね。
坂詰 そういうことです。他にも例はいくらでもあります。たとえば、「手でクラブを上げるな」とか、「オーバースウィングはいけない」なんて言われますよね。でも、上半身回旋の動きがスムーズにできない人は、胸が回らないから、手でクラブを上げるしかないわけです。
O編 つまり、上半身回旋が上手くできないうちは、手で上げる動きも、オーバースウィングも直らないということか。
坂詰 ええ。胸を回さず、手も上げないでスウィングしたら、全然飛びませんからね。そんなこと、誰もしませんよ。
O編 そう考えると、遠回りしている人は多いだろうね。たくさん球を打てば動きがよくなるって信じている人、結構いるでしょ。
坂詰 あぁ、たくさんいますよね。
O編 でも、動きを直したいのであれば、可動性、安定性、柔軟性を高めて、体の動かし方の質を上げる必要があるってことだよね。
坂詰 そうですね。ただ、何度も言いますが、正解はひとつじゃないんです。みんなが同じスウィングをする必要はないし、ある動きができないからと言って、絶対ダメってわけじゃありません。
動きを直すためには、トレーニングが必要になるわけですけれども、そういうことはしたくないということであれば、その動きのまま、ショットの精度を高める方法を探っていけばいいんですよ。
プロだってみんな違う動きをしている
O編 時間をかけてできない動きを直していくのもアリ。できない動きを直すことにこだわらず、その動きのままやっていく方法を探っていくのもアリってことだよね。
坂詰 はい。プロだって、みんなスウィングが違うじゃないですか。みんなが、教科書に書かれている動きを目指す必要はないんです。
O編 いずれにしても、スクリーニングテストをして、自分ができる動きとできない動きを知っておくことは大切かもしれないね。そういえば、スクリーニングテストは全部で16あるって言ってたよね? 他のテストもやったほうがいいんじゃないの?
坂詰 んー。本来、スクリーニングテストって、コーチのためのものだとボクは思ってるんです。自分が教えるプレーヤーの特性を知って、その人ができることとできないことがわかれば、適切な指導ができますからね。だから、16のテストを全部やったほうが細やかなティーチングになると思うんですけど……。
O編 けど?
坂詰 一般のプレーヤーが自分のためにやる場合、そこまでの必要はないんじゃないかと思うんですよ。だって、16のテストをやって、16カ所直したくなったって、なかなかできないでしょ? プロであれば、専属のトレーナーと一緒に直していくことも可能だと思うんですけど、一般ゴルファーがひとりでそれをやるのは難しいですからね。
O編 確かにそうだね。16カ所もテストしたら、今まで意識していなかったことまで意識するようになっちゃうかもしれないしね。
坂詰 でしょ。だから、スウィングのメインとなる体の回旋に直結する4つのテストだけやって、動きを直したい人はトレーニングで直す。直さない人は、その動きのままやっていく方法を探る、ということでいいんじゃないでしょうか。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月27日号「ひょっこり わきゅう。第21回」より