ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は16年全米プロ優勝のメジャーチャンプ、ジミー・ウォーカーについて語ってくれた。
画像: 「J・ウォーカーののネックは飛距離は出るが安定しないドライバー。全米プロ後は42インチの短いドライバーを試すなど苦心する姿も。今はXXの軽いシャフトのドライバーが”いい感じ”だそう」by佐藤信人(Photo/Hiroyuki Okazawa)

「J・ウォーカーののネックは飛距離は出るが安定しないドライバー。全米プロ後は42インチの短いドライバーを試すなど苦心する姿も。今はXXの軽いシャフトのドライバーが”いい感じ”だそう」by佐藤信人(Photo/Hiroyuki Okazawa)

原因不明の病気でスランプに陥ったジミー・ウォーカー

今回紹介するのは、16年の全米プロチャンピオンであるジミー・ウォーカー。なぜ、このタイミングでジミー・ウォーカー? と思う方もおられるでしょう。その理由のひとつが、ここにきて長いスランプから少し光明が見え始めたこと。一方で44歳という年齢も考慮すると、かつてのメジャーチャンピオンでライダーカップにも2回出場、世界ランクも最高位10位まで駆け上がった名選手が、今シーズン限りで見られなくなるということがあり得るからです。

スランプのきっかけは、全米プロを制した16年の秋。生まれ故郷のテキサスでハンティングに出かけた際、どうやらダニに刺されたことのようでした。どうやらというのは、当人には刺された記憶も、刺された跡もまったくなかったからです。

その翌週のオーストラリアの試合でウォーカーは、体の節々の痛み、疲労感、倦怠感に襲われます。最初は風邪かと思っていたのですが、テキサスに戻っても頭がボーッとして疲労と倦怠感が何カ月も拭えません。そのため練習もままならず、また脳がイメージする動きを体がまったくできず、さらにアプローチイップスも併発、自信も失いうつ病にもなってしまいます。やがて奥さんにも同じ症状が……。

この辺の事情は奥さんの手記に詳しいのですが、当時、夫婦が引退について真剣に話し合った様子が描かれています。やがてこの病気は、ライム病だと判明します。先述したダニを介在して発症する難病で、抗生物質、オゾン治療、ダイエットなど、自分に適した治療法を確立するまで3年半かかりました。

今シーズン、PGAの参戦資格が"舞い込んだ"

昔のようにはプレーできないまま、16年の全米プロの5年シードも昨シーズンまで。しかし4月の地元・テキサスオープンを最後に、試合に出なくなりました。妻と12 歳と9歳の2人の子どもとの生活を優先、セミリタイアし第二の人生を歩み始めたのです。

結局、昨シーズンは202位で、入れ替え戦への出場権もなく、QTも受けなかったので当人は引退のつもりでいたのでしょう。選手生活では味わえなかった遊びのゴルフ……ビールを飲みながらのゴルフと家族との時間を楽しんでいました。

しかし今シーズン、生涯獲得賞金50位での参戦資格が舞い込んできます。舞い込んできたというのは、ウォーカーより上位9人がLIVゴルフに移籍したため、繰り上がりで得た出場権でした。そこで9歳の子どもに「PGAに戻れるけど、どうする?」と尋ねます。すると、「パパがまた良いプレーをするようなら見たい」との答えが。

9月のフォーティネットから20試合に参戦し、予選通過は9試合で現在Fed Exランクは113位(6月26 日現在)。前半戦は予選落ちが続きましたが、それに打ちのめされることなく、高いモチベーションで試合に臨んできました。いまは開き直りというか、肚(はら)の据わった態度でプレーしています。仮に思うような成績が残せずに引退するにせよ、トッププレーヤーとしての最後の足跡を確実にPGAに刻むことでしょう。ぜひ、その勇姿を注目してほしいですね。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月27日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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