みなさんこんにちは。ザ・ゴルフィングマシーン研究家で、ゴルフインストラクターの大庭可南太です。さて今週は、ペブルビーチで初開催となる全米女子オープンに日本勢が過去最多となる22人が出場するとあって話題になっておりますが、こちらのコラムはPGA男子ツアーの件についてです。
先週開催のロケットモーゲージクラシックでは、リッキー・ファウラーがプレーオフを制して2019シーズンぶりとなる復活優勝を遂げました。またその前週開催のトラベラーズ・チャンピオンシップではキーガン・ブラッドリーが勝ちましたが、この二人のスウィングを比較すると、アドレスからして全然違うわけです。
今回はプレーヤーごとに「違っている」ところと、各プレーヤーに「共通している」ところについてです。
両者のアドレスの違い
ここで両者のアドレスを比較してみることにします。
キーガン・ブラッドリーは身長190センチということもありますが、手元をヒザの高さくらいまで低く構えるのが特徴的な選手です。ほとんどつま先下がりのライから打つときのような姿勢でアドレスしています。ここまで低く構えると各部位の可動域が狭くなってぎこちないスウィングになりがちで、実際あまりスムースには見えないスウィングなのですが、PGAツアー6勝の選手です。
逆にリッキー・ファウラーは、ほとんどヒザを曲げずに突っ立ち気味のアドレスで、低い位置にトップをつくるのが特徴的な選手です。今回の優勝で同じくPGAツアー6勝目となりました。
言い方を変えれば、PGAツアーで複数回優勝をするのに、アドレスのスタイルは低く構えようが突っ立ち気味に構えようがどちらでもよいということになります。
今回復活優勝を遂げたファウラーは、去年からかつてのコーチであるブッチ・ハーモンとのタッグを復活させ、少しずつ調子を上げて今回の優勝に至ったわけですが、そもそもブッチ・ハーモンと言えばタイガーをはじめ、アダム・スコット、ダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカなどのコーチも務めた人物です。ただこれらの選手のスウィングが似ているかというと、全然似てないと私は思ってしまうわけです。
つまりプレーヤー個々にとって、「機能するスウィング」のカタチは異なるということになります。
ゴルファーが達成しなければならないこと
ではスウィングにおいてゴルファーが達成しなければならないことは何なのでしょう。ザ・ゴルフィングマシーンでは以下の三つだけだとしています。
(1) インパクトの体勢が整っていること
これについてはこれまでのコラムで「フラットレフトリスト」あるいは「フライングウェッジ」などの用語で説明をしてきましたが、インパクトで左手首が(背屈などをせずに)フラットな状態になることで、フェースが正しい方向を向き、ロフトもやや立った状態になることで、エネルギー効率の良い状態になるようにするということです。
(2) クラブシャフトが「インパクトをできる軌道上」を動くこと
これは一言で言えば「プレーン」という単語になりますが、上級者ほどダウンスウィングの早い段階で、ボールへのコンタクトができる平面上にシャフト軌道が乗ってきます。
(3) クラブヘッドが効率よく加速できていること
このコラムでは「二重振り子」や「パワーローディング」などの用語で紹介をしてきましたが、早い話ヘッドスピードが上がればボールは遠くまで飛ぶということになります。
この三つが達成できているならば、あとは自分の好きなやり方やスウィングフォームで構わないということになります。
ゴルフは選択のゲーム
しかしこれは「三つの目的を達成するための方法が無数にある」という状態とも言えます。ゴルフの難しさは、それら無数の方法の中から自分に合ったものを探さなければいけないことにあります。ついでに使用する道具についても同じことが言えます。
ザ・ゴルフィングマシーンが難解とされる理由の一つは、それら「無数に存在する」手法について詳細なバリエーションを提示している点にあります。つまりスウィングの構成要素が全部で24個あり、それらの一つ一つにバリエーションが存在するという考え方です。
例えばその構成要素の1番目は「グリップ」です。オーバーラッピング、インターロッキング、ベースボールなどの握りの方法の「選択」がまず必要になります。ついで構成要素の二番目は、グリップの際の左右の手の位置関係、つまり左手がグリップの上から被せる度合いを強くするのか(ストロング)、あるいはそのときの右手のグリップは左手と正対させるのか、ウィークに持つのかといったことです。
こうした選択を24箇所について行っていった結果、ひとつのスウィングとして完成するとしているわけです。そうなればすべての選択が同じになる、つまり全く同一のスウィングが存在する可能性は限りなくゼロに近くなります。
よって百人いれば百のスウィングが存在して構わないとことになりますし、プロの世界を見ても実際にそうなっているわけです。人にはそれぞれの人生があって、なんとなく流れで現状に行き着いた場合もあれば、厳密な人生設計のもと現在があるという人もいるかもしれません。ただどちらの人生が幸福かと言えば、それはその本人にしか評価できません。
同様にゴルフのスウィングも、意図的か無意識かは別としても、それは限りない選択の結晶と言えます。様々な記事や動画で「ある一つのやり方」が示されているとしても、それが万人にとっての「唯一の解」になることはあり得ません。
そう考えると、ゴルフのレッスンも様々な科学的根拠をもとにした、そのプレイヤーに最適と考えられるスタイルの提案という、コンサルタントのような業態に変わっていくと思われます。
「面倒くさいゲームだな」と思うのか、「一生飽きないゲームだな」と思うのか、それはアナタ次第です!