全米女子OP挑戦は、仲間のプロとキャディに誘われたのがきっかけ
木下彩は、黄金世代のひとりだ。プロテスト同期には親友の渋野日向子をはじめ、原英莉花、河本結、大里桃子などがいる。
プロ初優勝はルーキーイヤーの2019年、中国新聞ちゅーピーレディース(ステップ・アップ・ツアー)で達成。13位タイから11個のバーディを奪い、大逆転劇を演じた。
そんな木下が、全米女子オープン出場を目指したきっかけとは何か?
「昨年、仲のいい林菜乃子さんと来年の会場はペブルビーチだし、一緒に受けてみようってことになったんです。いつもキャディをしてくれている福井良太さんは英語がしゃべれるし、福井さんにも『ペブルビーチ行こうよ』って言ってもらえて、最終予選会にエントリーしました。結局、菜乃子さんはワクチン接種の条件がクリアできず参戦できなくて……。ひとりで予選会に挑みました」
プロ&アマ、計116人が出場した日本最終予選会。1日36ホールの戦いは、どうだったのか?
「36ホールは疲れました。練習でも回ったことがなく、未知の体験でした。プレーを振り返ると、バーディがたくさん取れました。ショットがいい位置についてくれて、バーディがほしい3~4mが上手く入ってくれました。スタートが朝早かったのでほかの選手が上がってくるまで相当待ちました。
後半の18ホールでマーカーが付くのですが、コースにはスコアボードがないので順位もわかりません。ホールアウトしたとき、マーカーの人に聞いたら『ほぼ確定です』って言われて。でも、ほぼってどういうこと? って感じでした。全員が上がってやっと順位がわかって、まさか通過するなんて。日本ツアーでもギリギリの状態なのに、予選通過して大丈夫かなって思いもありました。それでも感情を表に出すタイプではないのですが、やったーって喜びましたね」
最終ホールは5mのバーディパットを決めて7アンダー、3位で最終予選会を突破した木下。
「最後のパットは、キャディさんと6アンダーでは通過できないかもと話し合っていたので、オーバーしてもいいからと強気で打ちました。もともとパットは上手くないのですが、最終予選会ではバーディがほしいタイミングで入ってくれました」
「とりあえず予選は突破したいです。賞金も今までにない額ですし…」(木下)
今季、QTランク2位の資格で前半戦に出場していた木下だが、17試合中10試合で予選落ちを喫している。不調の原因は何か?
「今季はなかなか思うようなゴルフができていません。予選落ちも多いし、やばいなって自分でも思っています。大きな要因はショットのフィーリングが合わないことです。いちいち考えすぎてしまい、空回りしている状態です。ただ、最終予選会の前のリゾートトラストでフィーリングが良くなり始めたんです。結果は1打足りず予選落ちでしたが、そのフィーリングのまま予選会に入れたのが良かったです。イメージ通りの球筋になってきましたし、打ったときの感触がいい感じなんです」
アメリカでの試合や海外メジャーの経験がない木下は、海外に行くこと自体が初めてだという。
「今まで日本を出たことがなくて、生まれて初めての海外です。パスポートも今年取ったばかりです。アメリカの試合が初めてですし、それがメジャーですから、どうなることやら……。全米女子オープンの前週まで日本で試合がありますから、まだ何も準備ができていません。会場になるペブルビーチもまったく調べていないんです。どんなコースかもよくわかっていなくて、海沿いのきれいなコースというくらいの知識しかありません。7番のパー3がすごいよって友達から教えてもらったくらいですから。
とりあえず飛行機とホテルは手配しましたが、何を持っていけばいいのかもわからず、クラブもとくに替えることは考えていません。自分でも想像ができない感じですが、アメリカのコースがどんなものなのか、というのはすごく楽しみです。とりあえず予選は突破したいです。賞金も今までにない額ですし、頑張ります!」
国内ツアーの第1回リランキングが行われ、QTランクが36位に落ちてしまった木下だが、レギュラー初優勝とシード権獲得の目標は変わらない。
木下が、初の海外メジャーをどう戦うのか、注目しよう。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年7月18日号「全米女子オープン初出場インタビュー」より