「ゴルフ科学者」ことブライソン・デシャンボーの「教科書」であり、50年以上も前に米国で発表された書物でありながら、現在でも多くのPGAプレーヤー、指導者に絶大な影響を与え続ける「ザ・ゴルフィングマシーン」。その解釈者でインストラクターの大庭可南太が「カッコいいスウィング」ついて考察した。

みなさんこんにちは。ザ・ゴルフィングマシーン研究家で、ゴルフインストラクターの大庭可南太です。梅雨明け前だというのにこの暑さは何なんでしょう? 私などはこれでも毎週ゴルフ場に行っておりますし、屋外でトレーニングもしているわけですが、ちょっと身の危険を感じるレベルです。

ここまで暑いと、ムリしてラウンドするよりは、空調の整ったスペースでストレッチやスウィングフォームの研究でもするほうが無難かも知れません。そんなわけで今回のお題は「カッコいいスウィング」についてザ・ゴルフィングマシーン的な視点から考えてみたいと思います。

「SNS映え」するスウィングを目指して…?

昨今はインスタグラムなどを筆頭に、誰でも自分のスウィングをSNS上に公開するケースが増えてきました。それもあってかレッスンでも「キレイなフォームで打ちたい」というご要望が増えている様に感じます。

もちろんゴルフを純粋に競技として考えれば、フォームはともかく「良いボール」が再現性を伴って打てることが大事なので、このコラムでもスウィングを構成するたくさんの要素の「役割」に注目し、それを達成する方法は人それぞれ違って構わないというスタンスを取ってきました。

しかし「SNS映え」の観点では、スウィングはもちろん道具やウェアも含めて「まずスタイリッシュであること」が重要ですし、そういうゴルフの楽しみ方もあって良いと思うのです。そこで今回は手っ取り早く「カッコよく見えるスウィング」について三つのポイントを紹介します。

ポイントその1 スウェイしない

では、ここで先週のジェネシス・スコティッシュ・オープンで久しぶりの優勝を遂げたローリー・マキロイのスウィングをもとに「カッコいい」ポイントを紹介していきます。さすがにマキロイのスウィングって誰がどう見ても「カッコいい」部類に入ると思うんですよね。

ではまずポイントその1ですが、バックスウィングにかけて頭部が右脚側に流れる「スウェイ」が発生しない点です。

画像: 画像A ローリー・マキロイのバックスウィングでは頭部が一切流れずに軸をキープしている。頭部が右サイドに流れればスウェイ(右上)、左ひざが曲がりすぎればリバースピボットとなる(右下)(ローリー・マキロイ 写真/姉崎正姉崎正 右上下 TPIより引用)

画像A ローリー・マキロイのバックスウィングでは頭部が一切流れずに軸をキープしている。頭部が右サイドに流れればスウェイ(右上)、左ひざが曲がりすぎればリバースピボットとなる(右下)(ローリー・マキロイ 写真/姉崎正姉崎正 右上下 TPIより引用)

ポイントは左右の「ひざ」を極力曲げ過ぎないことです。右ひざが曲がって重心が右に寄り過ぎると頭が右サイドに流れてスウェイになりますし、逆に左ひざを曲げすぎると、重心が左サイドに流れるリバースピボットになります。

これをレッスンで実際にやっていただくと、ほとんどの方が「でも体重移動ってしなくていいの?」とおっしゃるのですが、この「体重移動の誤解」については後ほど説明します。

この左右に流れないバックスウィングができていれば、頭部の位置も安定するはずです。ザ・ゴルフィングマシーンではこれを「ステイショナリーヘッド」と呼んで、第一に重要としています。

ポイントその2 なるべくひじを曲げずにバックスウィング

ポイントのその1でスウェイもリバースピボットも発生させずにバックスウィングをしていくと、普段よりもクラブを上げづらいと感じるかもしれません。注意しなければいけないのはそこで早い段階で右ひじを曲げてトップを作ってしまうことです。

画像: 画像B 始動からハーフウェイバックくらいまではなるべく右ひじを曲げないように意識したい。それによって体幹の捻転が充分に行われ「手で上げている」感じにならない(写真/姉崎正)

画像B 始動からハーフウェイバックくらいまではなるべく右ひじを曲げないように意識したい。それによって体幹の捻転が充分に行われ「手で上げている」感じにならない(写真/姉崎正)

写真のマキロイのように、なるべく右ひじを曲げずにバックスウィングを進行させると、「低く、遠くに」上がるカタチになってカッコいいのですが、逆に早い段階でひじが曲がってしまうといわゆる「手で上げる」カタチになって、体幹の捻転が行われず、左肩も入ってきません。

その1、その2を意識するということは、要はひじもひざも極力曲げないでバックスウィングをするということなのですが、そう言われればお腹のあたり、つまり体幹を捻っていくしかありません。その結果、右の股関節の切れ込みが作られて、右の足の裏で地面を踏みしめるような感覚にならないでしょうか?

それが正しいウェイトシフトです。日本語にすると体重移動ですが、正確には右足にかかる「荷重」を増やすということです。細かく言えば、その荷重は「土ふまず」、つまり右足の内側にかけていきたいです。

ちなみにここで紹介した、「右ひじを曲げないようにすることで左腕が伸ばされた状態をキープする」手法は、ザ・ゴルフィングマシーンでは「エクステンサーアクション」と呼ばれています。

ポイントその3 両手の通り道を確保したダウンスウィング

その1とその2を意識したバックスウィングは、トップ付近ではその状態を維持できないほど、ものすごく辛いはずです。そのため、そこからは、引いた弓の弦を離すように、込めていたチカラを開放すればダウンスウィングが始まるはずです。

このダウンスウィングのやり方であれば、トップから「振り始める」ことをしなくて良いので、余分なリキみも発生しづらいはずです。

この時の重要なポイントとして、上半身が前を向こうとするのをガマンして、両手とクラブが下りてくるスペースを維持することです。

画像: 画像C 左脚を伸ばすように地面を踏み込むことでダウンスウィングのエネルギーを増加させているが、両手の下りてくるスペースはしっかりと確保されており、右腕が左腕を追い越すことでグリップエンドが見えるほどクラブヘッドが目標方向に動いている(写真/KJR)

画像C 左脚を伸ばすように地面を踏み込むことでダウンスウィングのエネルギーを増加させているが、両手の下りてくるスペースはしっかりと確保されており、右腕が左腕を追い越すことでグリップエンドが見えるほどクラブヘッドが目標方向に動いている(写真/KJR)

ダウンスウィングで上半身が前を向いていくと、どうしても右腰も正面方向に出てくることで、両手の下りるスペースがなくなってしまいます。結果両手がインパクトに間に合わず振り遅れる、フェースが開くなどの現象が起きるとともに、フォローで両腕を伸ばせなくなります。

そうなると左ひじを抜く「チキンウイング」になりますので、やっぱりカッコよくないわけです。

ちなみにこの「両手の下りるスペースをつぶさない」ことを、ザ・ゴルフィングマシーンでは「ヒップクリア」と呼びますが、これまで何度もこのコラムで取り上げてきたワードです。

鏡の前でシャドースウィングを

これらを効率的に身につける方法ですが、いきなりボールを打つのではなく、クラブを持たずに鏡の前でシャドースイングをすることから始めるのが良いと思います。

画像: 画像D 3時9時の振り幅ならば、終始両腕を伸ばした状態で触れるはずだ。ここから少しずつ振り幅を拡げていくと筋力、柔軟性がかなり必要になることが体感できる(写真/姉崎正)

画像D 3時9時の振り幅ならば、終始両腕を伸ばした状態で触れるはずだ。ここから少しずつ振り幅を拡げていくと筋力、柔軟性がかなり必要になることが体感できる(写真/姉崎正)

ひざもひじも極力曲げずに、体の軸が流れないことを意識して、振れる範囲で始めるのが良いでしょう。慣れてきたらクラブを持って、まずは「カッコいいスウィングフォーム」の素振りを完成させましょう。これならば空調の効いた部屋でできますし、熱中症になるリスクも少ないはずです。やってみると「カッコいい」スウィングが、どれほど筋力や柔軟性を必要とするかも分かってくるはずです。

ゴルフは「ボールを打つ」競技と考えがちですが、「美しいフォームの素振り」と「ボールに当たるように立つ」と考えると上達が早いかもしれません。お試しください。

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