少女時代のスヨンが登場! だが、ちょっとした違和感……
日本でマジェスティゴルフと言えば「高級」や「豪華」などのイメージを持つ人が多いだろう。ラインナップを見ても、先日お披露目になった「セレスティアル」はスワロフスキーをあしらった、ドライバーは1本100万円の代物で、そこにあるだけでまるで芸術品のようなクラブだ。それ以外にも、フルチタンで飛ばし性能に優れたサブライムは、ヘッドがゴールドで統一された1本55万円のモデルで、他ブランドのそれと一線を画す。ロイヤルシリーズのようなモデルもあるが、立ち位置は紛れもなく「プレミアムブランド」だ。
そのブランドイメージは韓国でも同じで、「ターゲットにしているのは、みなさんのイメージ通り、富裕層の人たちです。年齢も50歳くらい」と、流ちょうな日本語で教えてくれたのは、かつて5年間日本で働いていた経歴を持つ、マジェスティゴルフコリア営業取締役ソ・ジョンマン氏。芸能人などのセレブリティが登場し、イベントは盛大に行われたのだが、そのとき少しばかり違和感を覚えた。登場したのは、韓国で人気のYouTuberや、あの少女時代のスヨンなどだったから。つまり、マジェスティにしては"若すぎる”と思ったのだ。
さらに、そのイベントでは女性向けの「スターナ(日本未発表)」シリーズが主役級の扱い。もちろん、マジェスティらしい豪華な演出は随所に感じられたが、あまりにも若い。ジョンマン氏にイベントの意図を聞いた。
「マジェスティは年齢が上の人には強いブランドで、幸い、いいイメージを持ってもらっています。でも、今は若者にももっともっと認知してもらうことが大切なんです」
背景には、コロナ期間の“若者のゴルフ熱の高まり”があると続ける。
「日本も同じだと思いますが、密を避けての行動を余儀なくされたとき、ゴルフに追い風が吹きました。『ゴルフだったら大丈夫』という空気になり、若者が一気にやるようになったんです。だから、ゴルフ人口が増加し、それにともなってクラブ市場も賑わってきました。ただ当時は、購入の選択肢の中にマジェスティは入らなかったんです。値段が高いですからね……今の時代、これではダメだと思いましたね」
戦略を見直し、結果が出始めてきた
韓国の若者はほぼ例外なくアメリカが好きだという。だからこそ、何も知らずにクラブを買おうとすればテーラーメイドやキャロウェイ、ピンなどの“米国産”を好んで選ぶ。そこに割って入るのは、そう簡単ではないはずだが、どのような方法で参入しようとしたのか? 答えのひとつが、今回行われたポップアップイベントのような取り組みだった。
「スターナは、価格帯はロイヤルシリーズの少し下、つまり誰でも手の届く位置づけにしています。でも、ただ若者向けに新しい商品が出ます! と、我々が言っても、残念ながら声はあまり届きません。だから、若者に影響力のある人に宣伝をしてもらう。そのために彼女たちを呼んで、まずは注目してもらおうと考えました。話題を作ることが大きな目的のひとつです」(ジョンマン氏)
もちろん、多くの企業がこのような方法で商品を広めようとしているし、決して珍しい手法ではない。だが、マジェスティがその手法を選択したのは、長年かけて培ってきた"ブランド力"に自信を持っていたからに他ならない。
「富裕層の人は、高ければなんでもいいなんてことはまったくありません。やっぱり質が大事。ものがよければ高くても買う。マジェスティはそれを証明し続けてきました。この歴史がマジェスティの信頼となっていったわけです。確実にものはいい。認知してもらい、手の届く価格であれば、他のブランドにも対抗できると思ったんです。芸能人の影響力に、既存のユーザーの口コミで若い人を取り込もうとしています」(ジョンマン氏)
トータルブランドとして成長を遂げたい
それ以外にも交通広告を展開したり、力の入れようはスゴイ。一見ゴルフクラブ広告には見えない、ファッション性の高い広告にしていて、若者を狙っていることが一目でわかる。
「もちろん、若者向けのシリーズはまだまだこれから。始まったばかりです。でも、だからといってメインターゲットを変えるということではない。我々はあくまでもプレミアムブランドとして成長を続けていく。ターゲットを広げることで、トータルブランドとしての価値をもっと高めていきたいのです。だからこそ、こういった取り組みが大事なんです」(ジョンマン氏)
恥ずかしながら、マジェスティに対しては「ハイブランド」のイメージしかなかった。どうして人気なのか、正直"謎”な部分が多かったのも事実だ。だが、取材をして新たなユーザーを取り込もうとする努力に触れ、人気のワケがわかった気がした。
写真/三木崇徳