世界一美しいと言われるペブルビーチGLで開催された全米女子オープン。初出場で13位に入った木下彩は、初のアメリカ&初の海外メジャーをどう戦い、どう感じたのか? リアルな“あやたん節”で語ってもらった。
画像: この大会を最後にツアーを引退したミッシェル・ウィと初海外の木下彩

この大会を最後にツアーを引退したミッシェル・ウィと初海外の木下彩

米滞在初日「入国審査でドキドキ。めちゃ怖かった」

日本の出発は日曜でした。資生堂レディスが予選落ちだったので土曜はゆっくりしていました。ブリヂストンレディスのとき、渋野(日向子)から「現地は寒いよ」って聞いていたのでウェアは準備しました。寒くても暑くても対応できるように多めに用意し、ダウンも持って行きましたから。

日本を出るのは初めてでしたが、出国は問題なかったです。ただアメリカに着いて入国するときの審査が、めちゃ怖かったです。かなりドキドキでした。

今回、キャディの福井良太さんと、一緒に練習しているプロの加藤龍太郎さんの3人で行ったのですが、福井さんが英語をしゃべれたので本当に助かりました。ひとりだったら入国できなかったと思います。

到着した夜、ハンバーガーを食べました。ポテトの量にドン引き。多すぎでしょ! 誰が食べるんだって。ドリンクもめちゃデカいし。

米滞在2日目「ペブルビーチのラフはやばかった!」

月曜はインコースの練ランをしました。ペブルビーチの第一印象は……グリーンが柔らかくてめちゃめちゃ重い(遅い)。本当にこれで回るんか? って思いました。

フェアウェイは日本に比べて広く、グリーンはやや小さめ。ただラフはやばかったです。

ラフに入れたらやっかいになるなって感じでした。イメージはニチレイレディス(袖ヶ浦CC新袖C)に近かったです。

月曜はそんなに風も強く吹かなくて、そこまで厳しいコースなのかなって正直、思っちゃいました。実は風の中でするゴルフが好きなんです。風の中でどんなボールを打とうか、そうやってイメージを出すのが好きなんです。だから風のゴルフは苦手じゃないんですよね。

画像: キャディの福井良太さんと、一緒に練習しているプロの加藤龍太郎さんの3人で海外メジャー"珍道中"

キャディの福井良太さんと、一緒に練習しているプロの加藤龍太郎さんの3人で海外メジャー"珍道中"

今回はホテルではなく、一軒家を借りました。USGA(全米ゴルフ協会)のホームページにレンタルハウスの案内が出ていて、そこで予約しました。だからコースから20分くらいのいい場所でした。クルマもレンタカーではなく、大会側が用意してくれたんです。すごいですよね!

家を借りた理由は、アメリカの食事が合わないだろうって思ったからです。日本から調味料とか食材を持って行き、自炊したほうがラクなんじゃないかと考えたんです。

だから外食はあまりしなくていいやって。ただ福井さんは、アメリカの食事が好きそうだったし、外食もしたかったはずです。でも、私が選手なので家で食べると言えば、家で食べられます。同行してくれた加藤さんは、めちゃめちゃ料理が上手いんです。今回もいろいろ作ってくれて、本当に助かりました。私のコーチではないんですけど、加藤さんをコーチ登録したので、練ランは3人で回りました。

米滞在2日目夜「渋野と勝っちゃんと3人で夕飯食べた」

月曜の夜、渋野と勝っちゃん(勝みなみ)と3人で食事に行きました。ステーキとか、フライドチキンがある、普通のアメリカンなレストランです。私、量が食べられないんです。最初に食べたハンバーガー屋でもその量にびっくりしたくらいで、味が濃いのも苦手です。

予想通りというか、アメリカの食事は合わない感じでした。日本でも焼肉とか行かないし。私は炭水化物好き。ご飯と麺類。やっぱりご飯がないと生きていけません!

米滞在3日目朝「牛乳にやられた。この日は1日オフ」

火曜はアウトコースを練ラン……の予定でしたが、朝から体調を崩しました。吐き気というか、胃が気持ち悪くなってしまって。たぶん牛乳が合わなかったんだと思います。吐き気が止まらず、めまいまでするようになって「あれ、やばくない?」って思いましたね。その日はまったく動けず、1日家にいました。「今日はダメ。無理~~」って感じでした。

こんな状態でコースに行っても意味ないし、完全オフにしました。

福井さんはペブルビーチが初めてだったので、本人もコースチェックに行きたいということで、「どうぞどうぞ」って行ってもらいました。心配かけました……。

米滞在3日目昼「テイクアウトした牛丼の味にびっくり」

画像: 「牛丼はこの世のモノとは思えないくらい……」と驚いた木下

「牛丼はこの世のモノとは思えないくらい……」と驚いた木下

国際免許を持っているのが私と福井さんだったので、別行動もできませんでした。私は休養中だったので2人が日本食のテイクアウトで牛丼と焼きそばを買ってきてくれたんです(私、焼きそば好き)。

焼きそばは味の薄い感じでまだ食べられたのですが、牛丼はこの世のモノとは思えないくらい……びっくり。豆腐が入っていて、白米とお肉と豆腐に薄いダシをかけて食べるような感じ。何だコレは?って驚きでした。

米滞在4日目「日本食スーパーで念願のめんつゆとカレールーをゲット」

火曜がオフだったので、水曜にアウトコースを練ラン。そしたらコースコンディションが大変化していたんです。たぶん火曜に変わっていたかもですが、月曜と比べたら「別のグリーンじゃん」ってくらい変わっていました。硬くて速くて。風も月曜より強くなってきて、これ以上吹いたら、かなり難しくなりそうって感じでした。ちょっと怯えましたね。

水曜は練習が終わったら、絶対に日本食のスーパーに行こうと決めていました。私たち、めんつゆとカレールーを忘れたんです。これはイタすぎ。そうめんを持ってきて、めんつゆを忘れるなんて終わりですよ(笑)。念願叶ってめんつゆとルーをゲット。生麺の焼きそばも買って、翌日から何不自由のない、自炊生活ができました。

画像: 日本から持って行ったのは炊飯器(お米)、地元の味噌、揖保乃糸、お茶漬け、うまかっちゃん

日本から持って行ったのは炊飯器(お米)、地元の味噌、揖保乃糸、お茶漬け、うまかっちゃん

今回、絶対に持って行こうと思ったのは、まず炊飯器。電圧で壊れるかと思ったけど、意外に使えました。あとは袋麺の「うまかっちゃん」、そうめんの「揖保乃糸」。これは譲れません。そうめん界の王ですから。さらにお茶漬けと地元山口の「とくぢ味噌」。私、味噌汁が大好物なんです。

日本ツアーでも炊飯器持参です。コンビニ飯がダメなんです。やっぱり炊いたご飯は美味しい。1.5合炊きだったのでひまなときに作って冷凍しておきました。

大会初日「5オーバー101位。こんなもんでしょう」

初日は5オーバー。まぁ、こんなもんでしょうって感じです。グリーンのラインも読めていませんでしたし。グリーンが硬くなっていたのでボールを止めたかったんですけど、私、ボールが止まらないんです。

弾道が低いというのもありますが、球が強いんです。ボール初速が速くてスピン量も少なめ。なので着弾して跳ねるというか、ボールが止まりにくいんです。ただ、私のボールは、風には強いです。だから風のゴルフが好きなのかも。

初日をプレーしてみて、ベタピンを狙うのではなく、手前からコロコロと転がしてグリーンに乗せようという作戦に変えました。パッティングも調子が悪かったのですが、加藤さんにアドバイスをもらってよくなりました。

2日目からは、グリーンのどこかに"かじって"おけばOK。手前から狙えないホール、止めなきゃならないホールは、遠くからでもパッティングで頑張ろうっていうことにしました。

大会2日目「最終組でスタート。家に着いたのは夜の9時半……」

2日目は14時50分スタート。最終組でした。ホールアウトは20時30分。めちゃめちゃ暗かったです。後半の8番で7~8mのバーディパットが入ってくれたのが大きかったです。予選を通ったというより、やっと終わったって感じでした。コースを出たのは21時。家に着いたのは21時30分です。

ご飯食べて「はぁ~~」ってなったらもう22時30分。「ウソやん。もう寝んといけん」ってなったんです(3日目は8時28分スタート)。でもそこでやっと予選を突破した実感が湧いてきたんです。

スマホを見ると「ナイス」とかメールがたくさん来て余計にアドレナリンが出るというか、興奮してしまったんです。「やべー。寝れん」ってなって、みんなに寝ろって言われるんですけど、寝れないんですよ。数時間前まで闘争心むき出しでプレーしていたこともあって、もう大変でしたね。

大会3日目「アンダーで回れた。日本で自慢しよう」

画像: 「フェアウェイは日本より広め」という印象を持ってティーショットを放つ木下

「フェアウェイは日本より広め」という印象を持ってティーショットを放つ木下

3日目ってよく「ムービング・サタデー」なんて言われますが、まさにそんな感じでした。ティーイングエリアがめちゃめちゃ前に出されていて、スコアを伸ばせるようなセッティングになっていたんです。パー5も2オンできそうな感じでしたし。こういう状況でスコアを伸ばす選手が勝つんだろうなって感じました。

自分でも伸ばしたいって思いましたし、周りもみんな伸ばすんだろうなって思いましたが、予想に反してスコアは出ていなかったんです。だから、私がアンダーで回れたことは大きかったです。日本に帰って自慢しようって思いましたから。

ペブルビーチはアウトコースでスコアを稼いで、インコースは耐えることが大事だと聞いていました。実際、ほかの選手たちはそうでしたし。ただ私はアウトもインも変わらなかったですね。

大会4日目「少し緊張……。トップ10に入りたかった」

3日目を終えて19位タイ。正直、いい位置だと思いました。「今日は頑張ろう」って気持ちになりましたし。だから、朝は少し緊張していました。トップ10に入りたかったし、私も人間ですから欲が出ちゃいますよね。でも、そこは抑えようって思いました。目の前の一打に集中しようと自分に言い聞かせてスタートしました。

予選2日間は野村(敏京)さん、3日目は勝っちゃんと一緒で、日本人と回れたことは心強かったです。英語がマジ苦手なので。でも最終日は、海外の選手でした。名前(A・マリーナ)を忘れちゃいましたが、めちゃめちゃいいヤツでした(笑)。8番で2人とも海ギリギリに打って「危なかった。やばかったね」ってしゃべりましたから。福井さんに「今何て言ったん?」って通訳してもらったから間違いないです。私はずっと「ソーリー」だけでしたけど。最終日は晴れたので、コースから海も見られてよかったです。

私のゴルフってめちゃめちゃ爆発(いいスコア)するか、めちゃめちゃ大叩きするか、どっちかなんです。私はそれでいいと思っていますが、全米女子OPは、珍しく安定したゴルフができました。結果は13位タイ。トップ10に入れなかったのが悔しいです。来季の出場権、ほしかった~~。

大会を終えて「賞金、こんなにもらえるんか!」

今大会は賞金もすごかったです。こんなにもらえるんか(約2400万円)ってくらいデカくて。まだ振込みされていないのですが、絶対に貯金します。

それよりメルセデスランクのほうが影響は大きいです。海外メジャーなのでポイントが100ちょっとくらい入ります。かなりランクアップすると思います。日本ツアーは予選落ちが多いし、やばいって思っていましたが、ここまで来たら来季のシード権取りたいです。

今回の全米女子OP、思ったよりもずっと楽しかったです。ギャラリーもめちゃめちゃフレンドリーで堅くない感じがいいです。ゆるーい感じがいいなぁって思いました。

米ツアーに参戦とまでは考えられませんが、行ってみたいなって気持ちはあります。メジャーはまた挑戦したいですね。

PHOTO/Yasuhiro JJ Tanabe、本人提供写真

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