「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回は2023年モデルでおすすめのドライバーを教えてもらった。
画像: 2023年上半期も、キャロウェイ、ピン、テーラーメイドの外ブラ御三家のドライバーが人気だった

2023年上半期も、キャロウェイ、ピン、テーラーメイドの外ブラ御三家のドライバーが人気だった

オーソドックスなクラブが少なくなっている!?

みんゴル取材班(以下、み):今年上半期も売れたのは、ピン、キャロウェイ、テーラーメイドの外ブラ御三家でしたが、宮城さんの推しのドライバーは何ですか?

宮城:今年は「G430」と「パラダイム」に注目していましたが、「G430」はプロとアマで評価が分かれました。アマの評価はすごくいいけれど、プロは一度使ったものの止めてしまった選手から話をけっこう聞いています。

み:プロにとってやさしすぎるということですか?

宮城:選ぶモデルの違いもあります。ほとんどのプロが選ぶ「G430LST」は極端にスピンが少ないモデルです。ピンのドライバーは打ち出し角が高いのでロースピンで飛びますが、スピンが少なすぎるせいで使っているうちに曲がり始めるんです。なかには球がドロップしてまったく飛ばなくなったプロもいました。結局プロもアマも「G430MAX」くらいのスピン量のほうが飛んで曲がらないということです

み:低スピン、イコール飛距離と思っていましたが、スピンは少なければいいというものではないと。

宮城:昔は確かにそうでした。ボールのスピンが多くて、クラブでいかにスピンを減らすかが設計のテーマでした。でもいまはボールが進化してスピンが減りました。しかも最近はちょっと開いてアッパー気味にロフトを減らして当てるスウィングになり、さらにスピンが減るようになりました。つまりボールもクラブもスウィングも同じ方向に進化しすぎてしまったわけです。いま推しのドライバーは何かと聞かれたら「SIM2 MAX」。スピン量がちょうどよくて打ちやすいクラブです。

み:それは2年も前のモデルなのでちょっと。「パラダイム」はいかがですか?

宮城:打感もいいし飛びますが、ちょっと振りづらいという声が多いですね。「ステルス」もそうですが真ん中のボディが軽くて後ろが重いので、ヒップダウンしてフェースの下っつらに当たってしまうようです。その点、ピンは昔から深重心で作っているので振りやすい。「G430MAX」も前作の問題が解決されています。

み:推しは「G430MAX」ということでいいですね。それにしてもテクノロジーが進化しているのに振りにくさを感じるのはなぜでしょう。

宮城:オーソドックスなクラブが少なくなっているからです。昔からゴルフをしている人ほどクラブの動きと自分のイメージを合わせられません。宇宙に行くわけでも、深海に潜るわけでもないのに果たしてそこまでのテクノロジーが必要なのかとも思います。

み:国産ドライバーはどうですか? 振りやすさにこだわっているクラブがありそうですが。

宮城:振りやすさでいえば「スリクソンZX5 MkII」でしょう。ヘッドは前後に長いけれど、クラウンはチタンだし余計なものがついていないから極端に後ろが重くありません。そうした意味では地クラブも選択肢に入ってきます。地クラブが飛ぶといわれるのは、CT値がルールぎりぎりで作られていることもありますが、最新のテクノロジーが入ってなくて振りやすいこともあると思います。ベテランゴルファーにはおすすめです。

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