「ゴルフ科学者」ことブライソン・デシャンボーの「教科書」であり、50年以上も前に米国で発表された書物でありながら、現在でも多くのPGAプレーヤー、また指導者に絶大な影響を与え続ける「ザ・ゴルフィングマシーン」。その解釈者でインストラクターでもある大庭可南太が「フェースターン」の実践方法について解説する。

みなさんこんにちは。ザ・ゴルフィングマシーン研究家で、ゴルフインストラクターの大庭可南太です。驚異的な暑さが続いておりまして、この炎天下でラウンドをするのはもはや娯楽の域を超えて完全に「苦行」ですらありますが、くれぐれも体調に気をつけていただきたいものです。

さてここ最近の当コラムでは、効率的なスウィングのためには「フェースターン」が必須であると説いてきましたが、レッスンの現場でも「実はフェースターンが上手くできていないのではないか」、あるいは「もっと効率的に飛ばす方法があるのではないか」という問題意識を持つお客様が増えてきました。今回はわかっていても、どうしても上手く「フェースターン」ができない方への処方箋です。

プロは「フラットレフトリスト」で「フェースターン」している

まず前提として、プロはドローヒッターであろうとフェードヒッターであろうと、例外なくフェースターンをきっちり行うことでボールをしっかりとつかまえ、またヘッドスピードも稼いでいます。

画像: 画像A インパクトを左手甲が「フラット」な状態で迎え、かつフォローでしっかりと右手が上になることで、フェースターンを充分に行っていることがわかる(写真はリッキー・ファウラー 2023年の全米オープン 写真/Blue Sky Photos)

画像A インパクトを左手甲が「フラット」な状態で迎え、かつフォローでしっかりと右手が上になることで、フェースターンを充分に行っていることがわかる(写真はリッキー・ファウラー 2023年の全米オープン 写真/Blue Sky Photos)

写真のリッキー・ファウラー選手を見ても、フォローではしっかりと右手が左手の上になり、クラブヘッドが両手を追い越して、しっかりフェースターンを行った中でインパクトを迎えたことがわかります。

このように上手くフェースターンができていれば、フォローで両腕も伸びてスウィングアークも大きくなり、入射角が緩やかになることでインパクトゾーンを長く取ることができます。

「『ボディターン』で打てばフェースもしっかりターンする」というのは、まぁ言ってしまえば幻想で、これは明白に「手の教育」、つまり両手、両腕がスウィング中にしっかりと「フェースターン」するように動くための訓練がされていることが必須です。

「フェースターン」させようとすると左手首が甲側に折れる

「どうもボールがつかまっていない」という自覚のある方であれば、やはり意図的に「フェースターン」をさせるように操作する必要があるのではないかと考えるわけですが、これを腕力で行おうとすると今度はインパクトに向けて左手首が甲側に折れるという問題が発生します。

画像: 画像B インパクトに向けてフェースターンを腕力で発生させようとすると、左手首が甲側に折れる、またその結果反射的に左肘が曲がるチキンウイングが発生する

画像B インパクトに向けてフェースターンを腕力で発生させようとすると、左手首が甲側に折れる、またその結果反射的に左肘が曲がるチキンウイングが発生する

この状態は、ザ・ゴルフィングマシーンで言うところの大原則である、「フラットレフトリスト」が崩壊した状態になります。インパクトでは左手首は「フラット」、つまり真っ直ぐであるか、あるいはやや手のひら側に「掌屈」した状態である必要があります。

その状態でフェースがターンしていく遷移を表したのがこのコラムでも何度か紹介している、ベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」に登場する有名なイラストです。

画像: 画像C 左手首がやや「掌屈」した状態のまま、前腕が旋回してくことでフェースターンを行っていると説いた、ベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」(ベン・ホーガン著、塩谷紘訳「モダン・ゴルフ」ベースボールマガジン社より抜粋)

画像C 左手首がやや「掌屈」した状態のまま、前腕が旋回してくことでフェースターンを行っていると説いた、ベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」(ベン・ホーガン著、塩谷紘訳「モダン・ゴルフ」ベースボールマガジン社より抜粋)

バットを使って「手の教育」

つまり現象としてフェースはしっかりと返っているが、腕力で行うと失敗しやすいということになります。また左手首が背屈した状態でインパクトを迎えると、左手首、あるいは左肘を故障する可能性もあります。ではどうすれば正しい動きを身につけることができるでしょうか。

用意していただきたいのは野球用のバットです。ゴルフの素振り用よりも、しっかりと先端に重量がある野球用の方が望ましいです。

それを左手一本で持ち、バッターボックスに入った右打者のように前後に「立てる」ように素振りを行います。

画像: 画像D バッターボックスに入った右打者のように前後にバットを「立てる」素振りを行う。バットの重みで左手を先端が追い越していく状態が実感できる

画像D バッターボックスに入った右打者のように前後にバットを「立てる」素振りを行う。バットの重みで左手を先端が追い越していく状態が実感できる

バットはゴルフクラブよりも遥かに重いため、下に振り出すと先端が手を追い越していく状態になります。

このときに重要なポイントが二つあります。一つは左手首がやや「掌屈」した状態を終始キープすることです。そうすると前腕の旋回によってバットが前後に立てられるようになります。またもう一つは脚や体幹によるターン動作を極力加えないことです。あくまで野球選手と同じように、手と腕でバットを前後に動かすだけです。

この動作自体は野球やソフトボールの経験がない女性の方でもけっこう簡単にできるものですが、実はこの際、クラブを後方に立てた時は左手甲が正面を向き、前方に立てれば左手甲が背中側を向きます。

これがフェースターンの正体です。

この動作をクラブでやれば、後方にクラブを立てたときはフェースは正面を向き、前方に立てればフェースは背中側を向きます。つまり左手甲とフェースの向きが常に同じ方向を向くはずです。前後の動作でフェースは180°返っています。

実はクラブはバットほど重量がないので、下に振り出したときに自然にフェースターンが発生しづらいのですが、まずはバットで、ついでクラブで、そして慣れてきたら右手を添えても同じ動作ができるかどうかを試してみることです。

フェースを手で返そうとしている方にとってはかなり気持ち悪く感じるようですが、これが「返っているけど返そうとはしていない」状態です。このターンの原動力はバットの先端、あるいはクラブヘッドの「重み」であり、それが左手首の「掌屈」をキープしたまま地面方向に加速していくことで先端部が手を追い越して発生するのがフェースターンです。

よって右手を添えてより速くスウィングをしようとする場合、振っていく方向は「下に」です。これを目標方向に振っていこうとするとフェースターンが遅れる可能性があります。

「これではボールに当たる気がしない」という方は、ボールに当てに行っている方です。つまり腕を伸ばしたスウィングでインパクトすることを実感できていないということになります。

この訓練でやっていただくことはバットを持って、バッターボックスに入った右打者のマネをしていただくだけです。可能であればそのまま左手一本でボールを打ってみるのもよいでしょう。「スウィング」している状態と、「当てに行く」状態の違いがわかるはずです。これはレッスンの現場でもかなり効果が出ているトレーニングなので、ぜひお試しください。

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