ギャラリーたちの熱狂ぶりに、スポーツ文化の奥深さを感じた
第151回全英オープンは、ブライアン・ハーマンの圧勝、メジャー初優勝で幕を閉じました。ボクはゴルフネットワークで現地リポーターを務めました。ゲームを語る前に、ボクの感じた全英オープンについて語りたいと思います。
初のロイヤルリバプールの印象はまず、ほとんどのホールでポットバンカーが効いており、つかまったら1ペナ確定というタフさ。フェアウエイは狭く、小さなグリーン。そこに気まぐれな風と降ったりやんだりの雨が加わります。でも、フェアウェイやグリーンに水が浮く気配がなかったのは、さすがリンクスコースです。
また、悪天候でもギャラリーの数と熱狂ぶりが衰えることはなく、「みんなゴルフが大好きなんだなあ」と感心すらしたものです。ホールを横切って渡るときに延々と待たされたり、地面がドロドロで歩きにくいところが多かったり、傘を差している人が多くすれ違いにくかったりと障害が多かった。
それでもひいきの選手を追いかけ、大声で名前を呼んで声援する姿に、ライブスポーツの楽しみ方を知り尽くしているように感じました。おそらく日本であれば同じ条件ならギャラリーの数は急激に減るでしょうし、しかしむしろ悪天候を吹き飛ばすかのような熱狂は、スポーツ文化の奥深さを感じました。
日本人選手の厳しい結果を過度にネガティブにとらえてはいけない
さて、日本人選手は9人が出場しましたが、7人が予選落ちという、結果だけを見ると厳しいものになりました。ただ、その結果について、選手はもとよりメディアもファンも、過度にネガティブにとらえるのは危険です。実際、金谷拓実、中島啓太、蟬川泰果……決して、その技術が世界に通用しないレベルでないことは、練習ラウンドに続き予選ラウンドを見たうえで感じました。
では、何が足りないかといえば、経験でしょう。ボクの全英初出場は97年のロイヤルトゥルーンでしたが、ここで一緒に回ったポール・マギンリー(後のライダーカップキャプテン)からアドバイスされたのが「1週間か2週間前に現地入りして、どこのコースでもいいからリンクスを回って慣れろ」ということ。リンクスコースは特殊なコースだけに、技術やスウィングで悩む前に、そうした準備の重要性を訴えたいと思います。
そうした観点からいえば、初めて松山(英樹)くんの練習ラウンドをしっかり見て、そのすごさも感じました。いろんなことを試して、ある意味積極的に失敗をしながら自分のスウィングやコースを探っていく。積極的に厳しいシチュエーションを選んだり、スウィングイメージを思い切って変えたりしていろいろ試していたようです。
バンカーのアゴに当たって出ない場面、深いラフからうまくボールが出ない場面、グリーン周りの厳しい場所から乗らない、寄らないといった場面がたくさんあり、ショットもいろいろ試しながら、本番で使えるものとそうでないものを探っている感じに見えました。
スタッフに尋ねると「いつもこんな調子です」。実際、試合では練習ラウンドを踏まえ、自分のできることに徹し、13 位に。あらためて松山くんのすごみを感じた全英オープンでした。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月15日号「うの目 たかの目 さとうの目」より