
「グリーンの読みが素晴らしいマークルと、パットの際テーラーの目のラインがわずかにずれていることを修正したラフルースキーによってショートパットが著しくよくなったそうです」by佐藤(Photo/Blue Sky Photos)
カナディアンオープンの優勝シーンは今シーズンで1番!
現段階で今シーズン一の優勝シーンといわれれば、迷うことなく6月のカナディアンオープン、ニック・テーラーの優勝を挙げます。優勝のハイライトを見ていると、ファンの熱狂がすごく、普段静かなテーラーの興奮ぶりなどもあってグッときますね。
1904年に始まったカナディアンオープンは、全英、全米、南アオープンに次ぐ古い大会です。ところがカナダ人の優勝は、さかのぼること69年前、1954年のパット・フレッチャー以来ありませんでした。それから50年後の04 年には優勝争いをリードしたマイク・ウィアーがビジェイ・シンにプレーオフで敗れています。
今回、テーラーも悲願のPGAツアー初優勝を狙う、トミー・フリートウッドとのプレーオフ。その4ホール目に72フィート(約22m)のイーグルパットを決めての優勝でした。グリーンサイドには同じカナダのコーリー・コナーズとアダム・ハドウィン、そしてマスターズチャンピオンでカナダのゴルフ界をリードしてきたウィアー。ウィアーは2年ぶりに予選通過し、19年前、あと一歩で実現できなかった悲願を後輩が成し遂げる姿を現場で見届けました。
ワシントン大時代は世界アマチュアランク1位に輝き、全米オープンローアマ、マコーマックメダルなど、名だたるタイトルを獲得。今季の躍進の要因は世界アマでコンビを組んだ、プロゴルファーのデーブ・マークルをキャディに、ショートゲームコーチに畑岡奈紗も指導するガレス・ラフルースキーを採用したことだそう。
国を挙げての熱狂ぶりだった
地味で真面目な印象の選手が多いカナダ人選手。テーラーも例外ではありませんが、17番、18番あたりからは普段はしないガッツポーズが出て、優勝を決めた瞬間はパターを放り投げて雄たけびを上げキャディと抱き合った姿も感動的でした。アメリカで戦う外国人としては1、2位を争う人気選手のフリートウッドですが、この試合では完全アウェイ状態。MLBのトロント・ブルージェイズの公式アカウントがテーラーの優勝を称え、アイスホッケーのスーパースター、グレツキーからも祝福が届いたそうですから、国を挙げてのその熱狂ぶりが理解できます。
祝福といえば、シャンパンを持ってテーラーの元に駆け寄ろうとしたハドウィンが警備員にタックルされたシーンも、「PGA人生で一番長いパット」というテーラーのウィニングパットとともに、カナダのゴルフ界に伝説として語り継がれるはず。ちなみに2人は同じ歳で、同じコースで育ちチューリッヒではダブルスを組み、W杯も一緒に戦う親友です。
実は今シーズンのカナダ勢は好調でM・ヒューズ、A・スベンソン、コナーズに続く4人目の優勝で、これは史上初めてのこと。昨年のプレジデンツカップで世界選抜は惨敗しますが、コナーズ、テーラー、ペンドリスのカナダ勢は1ポイントも取れず。その屈辱を超えての4勝。来年のプレジデンツカップはカナダ開催、キャプテンはウィアーで好調のカナダ人選手も何人か選ばれるはず。
カナダ旋風が吹き荒れる予兆を感じる、テーラーの優勝でした。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月8日号「うの目 たかの目 さとうの目」より