体と腕を同調させるようにして、調子が上向きになった
O編 教え子の宮田成華プロ、調子いいねぇ。資生堂レディスでは、最終日最終組で回って自己ベストの4位、次週のミネベアミツミレディスでは9位タイ、その次の週に行われたステップ・アップ・ツアーのあおもりレディスオープンでは、首位に1打差の2位だもんね。
坂詰 正直、去年がよくなかったので、今シーズンはあまり期待してなかったんです。でも、本人の頑張りもあって、いい流れになってますね。
欲を言えば、ステップ・アップ・ツアーで優勝すると、QTの1stステージが免除されるので、あおもりレディスは勝ってもらいたかったんですけど……。
O編 う~ん。惜しかったよねぇ。ところで、わきゅうは、彼女をいつから教えてたんだっけ?
坂詰 ナル(宮田プロ)が中学1年生から6年くらいです。彼女がプロになっていったん離れてたんですが、今年6年ぶりに見ることになったんですよ。
O編 そういえば、6~7年前に紹介してくれたよね? 期待の新人だって言ってた。
坂詰 あの頃、彼女絶好調でしたからね。そのままトップまで駆け上がるかと思ってたんですが、1回目のプロテストに落ちちゃって……
O編 一発勝負のプロテストは怖いよね。で、今年は何か変えたの?
坂詰 シーズン中に何かを変えるのは怖いので、大きなチェンジはしてないです。
O編 あぁ、そうか。彼女を見始めたのは、シーズンが始まってからだもんね。じゃあ、調子が上向いたきっかけみたいなものはあるの?
坂詰 最初に見たとき、手や腕の運動量が多くて、ショットがバラバラだったんです。だから、体と腕を同調させるようにしたんですよ。
あと、バックスウィングとかトップの形ばかり気にしていたので、もっとシンプルに、気持ちよく振りなさいって。
試合に出られないから基本を身につけられた
O編 具体的には、どんな練習をしたの?
坂詰 素振りです。手先を一切使わず、体と腕を一体にして、ゆっくりとインパクトゾーンをなぞるんです。暇があったらその素振りをして、球を打つ前には必ずその素振りをしてから打つんですよ。
O編 試合会場でも、彼女、その練習ばっかりしてるみたいだね。
坂詰 その素振りはジュニアの頃からずっとやらせてたんです。でも、6年間離れてるうちにそれを忘れちゃってたみたいで。
O編 ……ってことは、何かを変えたとか、新しいことをやったとかじゃなくて、基本に戻ったみたいな感じなのかな?
坂詰 そういう感じですね。とにかく、ジュニア時代は、徹底的に素振りをさせたんです。ナルの場合、中学、高校と、それほど上手くなかったし、実績がなかったから、出られる試合も少なかったんですよ。だから、基本だけはしっかり身につけようって。本人も「あぁ、昔、この素振りばっかりやってましたよね」なんて言ってます。
O編 へぇ。今の女子ツアーに出ている選手は、子供の頃からゴルフ漬けで、たくさんラウンドして、がんがん試合に出て、そのままプロになる子が多いのに、珍しいね。
坂詰 でしょ。レアケースかもしれませんが、そういう子もいるんですよ。でも、だからこそ基本をしっかり身につけられたというか、悪いところもしっかり直せたんだと思います。ずっと試合に出ていると、成績(スコア)を重視してしまうので、プレーヤーも、その親も、変化を嫌がりますからね。
O編 宮田プロの場合、そういう障害がなかったわけだね。
坂詰 ええ。逆に、試合経験、ラウンド経験が少なかったので、ショートゲームを磨くには、少し時間がかかりましたけど。
O編 ラウンドも少なかったの?
坂詰 まぁ、月イチよりは多かったと思いますが、それでも他の子と比べたら、本当に少なかったですね。だから、ナルは素振りでプロになったと言っても言い過ぎじゃないんですよ。
O編 このまま稼いでくれるといいね。
坂詰 そうですね。シード獲ってくれたら最高ですけど、QTの1stステージが免除されるメルセデスランキング70位までに入れるようにサポートしていこうと思ってます。
PHOTO/Hiroaki Arihara Shinji Osawa
※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月15日号「ひょっこり わきゅう。第28話」より