コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3 D解析技術でデータ化することができる。今回はLIVゴルフ第10戦・グリーンブライアーを制したブライソン・デシャンボーのドライバースウィングをゴルフコーチ・北野達郎がAIを使って分析した!

ハンドアップかつ、少しハンドファーストに構える

みなさんこんにちは。SPORTSBOX 3D GOLFスタッフコーチの北野達郎です。今回はLIVゴルフ第10戦で、最終日58をマークして逆転優勝しましたブライソン・デシャンボーをスポーツボックスAIで分析してみましょう。

画像: 最終日に58のスコアで回り、LIVゴルフ移籍後初優勝を挙げたブライソン・デシャンボー(撮影/Blue Sky Photos)

最終日に58のスコアで回り、LIVゴルフ移籍後初優勝を挙げたブライソン・デシャンボー(撮影/Blue Sky Photos)

デシャンボーと言えば、コロナ禍で大幅な増量と筋力アップをした後に全米オープンに優勝して、近年はドラコンの試合にも出場するなど、圧倒的な飛距離が特徴ですが、その飛距離の秘訣から主に①大きく長いテークバック、②胸と骨盤の並外れた捻転差、③強烈なタメの3点に絞って見てみましょう。

まずアドレスですが、デシャンボーは手首とクラブにあまり角度をつけないハンドアップの構えが特徴です。このハンドアップの構えに関してはインパクトのポジションで後述します。

画像: 左腕とクラブを一直線に近い形で構える。ドライバーでも少しハンドファーストの構えになる

左腕とクラブを一直線に近い形で構える。ドライバーでも少しハンドファーストの構えになる

グリップは左右共にややウィークグリップで、ザ・ゴルフィングマシーンの体現者のデシャンボーは、左腕とクラブを一直線に近い形で構えます。スポーツボックスAIの項目「SHAFTANGLE FACE ON」は正面から見たシャフトの左右の傾きの角度ですが、−6.5度右に傾いた、ややハンドファーストの構えです。ドライバーでも少しハンドファーストの構えを取ることで、フェースが閉じにくくなるので、ウィークグリップとの相乗効果で左のミスを減らす効果があります。

大きく長いテークバック

次にテークバックを見てみましょう。クラブが地面と平行のポジション(P2)での特徴は、「大きく長いテークバック」です。「MID-HANDS SWAY」は、両手がアドレスから左右にどれだけ移動したかを表す項目ですが、−83.4センチ右に移動しています。SPORTSBOXAI社が独自に調査したPGAツアープロのレンジ(範囲)が−63.2センチ〜−48センチですので、ツアーレンジよりかなり遠くへ両手を移動させていることが分かります。

画像: かなり両手を遠くに移動させ、レートコックなテークバック。ヘッドが長く大きなアークを描く

かなり両手を遠くに移動させ、レートコックなテークバック。ヘッドが長く大きなアークを描く

また、「LEAD WRIST ANGLE」は左手首の縦コック(棟屈と尺屈)の量を表す項目ですが、153.4度でアドレスからの角度がP2まであまり変わりません。これは「レートコック」と言って、トップ寸前まで手首を立てずにクラブを遠くに上げる遅めのコッキングタイプであることを表しています。この両手の長い移動量とレートコックと相まって、デシャンボーのテークバックはクラブヘッドが非常に長く大きなアークを描きます。この長く大きなテークバックは飛距離を上げるのに有効ですので、この記事をご覧頂いているゴルファーの皆さんも参考にしてもらいたいポイントです。

胸と骨盤の捻転差が非常に大きく、トップも高い

続いてトップを見てみましょう。ここでもデシャンボーの規格外のデータが随所にあります。胸の回転量を表す「CHEST TURN」は−113.4度、骨盤の回転量を表す「PELVIS TURN」は−55.2度、胸と骨盤の捻転差を表す「X-FACTOR」は−61.4度と、いずれもツアーレンジを大きく上回る量を誇ります。そして「MID-HANDS LIFT」はアドレスからの両手の上下の移動量を表しますが、この項目も118.6センチで、ツアーレンジの90.2センチ〜104.9センチよりもはるかに高いトップです。

画像: データ的に胸と骨盤の捻転差が、"規格外”に大きい。デシャンボーならではの身体の回転量と高いトップ

データ的に胸と骨盤の捻転差が、"規格外”に大きい。デシャンボーならではの身体の回転量と高いトップ

この身体の回転量とトップの高さは、トレーニングと増量で肉体改造を行ったデシャンボーならではのデータで、アマチュアの方が真似するには難しいですが、世界のトッププロも飛距離を上げてセカンドショットのアドバンテージを取る為なら、規格外のスウィング改造にも取り組むという1つの例として見て欲しいです。

切り返しで大きなタメが作られる

そして切り返しを見てみましょう。腕が地面と平行のポジション(P5)では、「大きなタメ」が発生していますが、それが分かるのが両手の左右の移動量と左手首の角度です。P5での両手は−60センチ右のポジションで、アバターのハンドパス(黄色とオレンジのライン)にご注目頂きたいのですが、大きく長いアークを描いたテークバックの黄色のラインに対して、ダウンスウィングのオレンジのラインは小さく短くなっていることが分かります。

画像: 長く大きなテークバックから、短く小さなアークの切り返し。飛距離につながり大きなタメができる

長く大きなテークバックから、短く小さなアークの切り返し。飛距離につながり大きなタメができる

この両手の描くハンドパスの移動距離の差が左手首の角度とも関連しており、P5での左手首の角度は75.5度で、90度よりもはるかに大きな角度を保っています。両手のハンドパスは大きく長いテークバックから小さく短いアークの切り返し、左手首の角度はレートコックで鈍角な角度のテークバックから大きなタメによる鋭角な角度の切り返しと、両手の移動距離と左手首の角度、それぞれの差が非常に大きいのもデシャンボーの飛距離の秘訣と言えます。

アドレス時との手元の高さのブレ幅が少ないインパクト

最後にインパクトを見てみましょう。ここでは、デシャンボーのハンドアップなアドレスならではの特徴があります。両手の上下の移動量のデータを見ると、アドレスに比べてインパクトで3.4センチ手元が上がっています。この3.4センチという数字は、PGAツアーレンジの5.1センチ〜11.2センチと比べると誤差が少なく、アドレスとインパクトで手元の高さのブレ幅が少ないと言えます。

画像: アドレスとの手元の高さのブレ幅が少ないインパクト。フェースの芯で捉えやすく、飛距離と方向性の両立ができる

アドレスとの手元の高さのブレ幅が少ないインパクト。フェースの芯で捉えやすく、飛距離と方向性の両立ができる

この誤差は少ない程ヘッドのトウダウンも少なくなりますので、インパクトライが安定するぶんだけフェースの芯で捉えやすくなり、飛距離と方向性が両立出来るのが特徴です。

アドレスでは、あえてハンドアップとハンドファーストの構えで、再現性を高めるポジションをあらかじめ確保して、あとは規格外のスケールの大きいスウィングで最大飛距離を生み出すデシャンボーのスウィングは、「ゴルフの科学者」のニックネーム通り、常識にとらわれずに効率と再現性を考え尽くして作り上げたスウィングと言えます。

今回は、ブライソン・デシャンボーのスウィングを分析させて頂きました。一時は体調不良から低迷していた時期もありましたが、減量してもパワフルなスウィングは健在で、LIVゴルフ移籍後初優勝を飾ったデシャンボー。次はどんな話題を振り撒いてくれるのか? 復活したデシャンボーに注目です!

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