多くのアマチュアやプロを見てきた横田英治プロいわく「スライスの根本的な原因は、体の右サイドにスペースを作れないことです」。それって、どういうこと!? さっそく詳しく話を聞いてみた!

右サイドにスペースを作ることができればスライスは直る

画像: "手上げ・手打ち"だとクラブが「アウトサイドの領域」に下りてしまい、スライスも引っかけも両方出る。大切なのは「インサイドの領域」にクラブが下りること。そのカギが「右サイドのスペース」作りにある

"手上げ・手打ち"だとクラブが「アウトサイドの領域」に下りてしまい、スライスも引っかけも両方出る。大切なのは「インサイドの領域」にクラブが下りること。そのカギが「右サイドのスペース」作りにある

アマチュアの多くはスライサーだが、そのミスはスライスだけではない。引っかけも出るし、シャンクも出る。ボールは上がらないから飛ばないし、何よりボールがどこに飛ぶかもわからない……。その原因はどこにあるのか?

「アマチュアの9割はアウトサイドイン軌道、いわゆるカット軌道です。ですからボールは基本的にスライスしやすくなります。多くのミスはこのスウィング軌道(クラブの通り道)が問題なのです」

そう語るのは、アマチュアの指導に定評がある横田英治プロ。

「スウィング軌道に注目すると、その現象は切り返しからダウンスウィングのことを指します。わかりやすく言えば、アウトサイド(の領域)に下りるのがアマチュアであり、インサイド(の領域)に下りるのがプロです。そして重要なのは、この軌道は切り返しで起きるものではないのです。クラブの始動の段階で決まってしまうのです。では、アウトサイドイン軌道の要因は何か? それが手打ちです。手でクラブを上げるから手で下ろさなくてはならず、その結果アウトサイドにしか下ろせないのです。スウィングの基本はイントゥイン軌道ですから、インサイドに下ろしたいわけです。そのカギが右サイドのスペース作りにあるんです」

横田プロが語る“スペース”とは、クラブが下ろせる空間を示している。“ふところ”というプロもいるが、右サイドにスペースを作ることでクラブがインサイドに下ろしやすくなるのだ。アウトサイドイン軌道をイントゥイン軌道に変える。これがあらゆるミスの根本治療につながるというのだ。そのノウハウを詳しく教えてもらおう。

手を使わずに、目標に背中が向くくらい体を右に回すことが大切 

画像: ターゲットに背中が向くくらい体を回すことが肝心。手は常に体の正面にあることが大事なので、ダウンスウィングでは右ひじは体の近くを通すイメージ。こうすることで右スペース=インサイドにクラブを下ろせる

ターゲットに背中が向くくらい体を回すことが肝心。手は常に体の正面にあることが大事なので、ダウンスウィングでは右ひじは体の近くを通すイメージ。こうすることで右スペース=インサイドにクラブを下ろせる

理想のイントゥイン軌道を目指すには、右サイドのスペース作りがカギ。横田プロは、そのポイントを4つ教えてくれた。ひとつ目は、“手を使わない”ことだ。手打ちがアウトサイドイン軌道の主な要因だからだ。

「スウィングの理想は手50%、体50%です。ですから手は絶対に使わない、というわけではありません。ただ多くのアマチュアは、手の割合が80%以上といえます。手の割合が多いほど、アウトサイドイン軌道は強くなりますから、まずは手の運動量をできるだけ減らし、体の運動量を増やすことから始めるべきでしょう」

体が使えるようになるとすぐに結果がわかると横田プロ。なぜかというと、いつものボール位置では当たらなくなるからだ。実はアウトサイドイン軌道が強い人ほど、ボールはどんどん左寄りになっていくという。理想のイントゥイン軌道になれば、ボール位置も適正に変わっていくのだ。

次のポイントがクラブの始動、テークバックだ。ここはスッと素早く上げるのがいいと横田プロ。
「テークバックでは、エネルギーを使って体を回します。ここで力を入れると切り返しで脱力できます。トップから切り返しで力みがなければ、右のスペースに自然にクラブは下りていきます。このとき右ひじを意識してください。右ひじが締まっていれば(体の近くにある)、よりインサイドにクラブが下ろせるはずです」

横田プロによれば、手が常に体の正面にあれば、手を使っていることにはならないという。そのポイントが右ひじにあるのだ。

そして最後のポイントが、体を回すことだ。この回転度合いで右サイドのスペースが決まる。より深いスペースを作るには、体をしっかり右に回すことが重要だ。

「ターゲットに背中を向けるくらい、体を右に回しましょう」

「体を右に回す」が最優先事項。スタンス幅や向きを工夫してみよう!

画像: スタンス幅を狭くしてみたり、クローズスタンスを試してみたりして、自分なりの「より体を回しやすくする」方法を見つけてみよう

スタンス幅を狭くしてみたり、クローズスタンスを試してみたりして、自分なりの「より体を回しやすくする」方法を見つけてみよう

右サイドにスペースを作ることでクラブはインサイドに下ろしやすくなる。その結果、アウトサイドイン軌道が改善される。スウィング軌道が変われば、スライスや引っかけなど、あらゆるミスを根本から解決していける。そのために必要なのが、右サイドのスペース作り。横田プロは4つのポイントを教えてくれたが、最優先事項は、体を右に回すことだと力説する。だが、アマチュアは体が回らないから、手上げや手打ちになってしまうのではないか?

「4つのポイントでも解説しましたが、実はターゲットに対して背中を向ける、この動作がアマチュアには難しいのです。ターゲットにボールを打つのに、その方向に背中を向けるのは、恐怖心が伴うからです。プロや上級者は慣れていますが、アマチュアは慣れていない人がほとんどでしょう。ターゲットに向かって後ろを向くようなものですからね」

言われてみれば、少し違和感はあるかもしれない。だが、それだけが理由で、手打ちになるわけではないだろう。

「確かに体が回らないから、手を使ってしまうというアマチュアは多いです。体が硬くて回せない、どう回せばいいのかわからない、など意見もいろいろあるでしょう。でも、右にスペースを作るためには、体を回すことが絶対条件です。ですから、その手段はどんな方法でもかまいません。

たとえば、右ひざをピンッと伸ばしながらテークバックしてみてください。体は勝手に右に向くはずです。同様に左足に全体重を乗せてみてもいいです。これでも体は簡単に右へ回るはずです。あまり見慣れないテークバックの形かもしれませんが、体を回すことが最大の目的ですから、形にこだわる必要はありません。

これでも回らない、というのであれば、スタンス幅を狭くしてみてください。スタンスが狭くなれば、体はより回りやすくなります。それでもダメというなら、最初から体を回しておきましょう。右足を後方へ引いたクローズスタンスにしてみてください。これなら体がガチガチに硬い、という人でも体を回せるはずです」

体を回すためなら手段は選ばない。その覚悟が重要なのだ。右サイドのスペースが作れれば、クラブはインサイドに下ろせる。緩やかな入射角は、エネルギー効率アップ、ミート率の向上、スピン量の安定など、さまざまなメリットをもたらしてくれる。ボールがつかまり、飛距離は間違いなく伸びるだろう。

TEXT/Kenji Oba  PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/クラブハウス

※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月1日号「右サイドにスペースを作ればスライスは直る」より抜粋

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