一番多いのは、上体に力感が出てしまうパターン
O編 そういえば、少し前に、渡邉彩香プロとミニ合宿をやったって言ってたよね。
坂詰 はい。オープンウィーク(試合のない週)があったので、そこを利用しました。
O編 シーズン中の合宿っていうのは、どんなテーマでやるの?
坂詰 今回は、練習でできていることがコースのなかでできているかをチェックしようと思いまして。練習場ではできているんだけど、コースになると上手くいかないってこと、誰にでもあるでしょ?
O編 あるある。そういうときって、練習場ではいい感じなのに、スコアにならなかったりするよね。
坂詰 それです。渡邉さんも、やりたい動きができてきたのにスコアにつながっていなかったので、そのあたりをチェックしてきたんです。詳しくは話せませんが……。
O編 詳しく聞きたいところだけど、選手の個人情報だもんね。じゃあさ、一般論として、練習場でできていることがコースに出るとできないとか、練習場では調子がいいのにスコアにならないときって、どんな原因が考えられるの?
坂詰 一番多いのは、上体に力感が出ちゃうパターンですよね。コースに出ると、自分でも気づかないうちに飛ばそう、寄せようとして、力んでしまう。だから、練習と同じような結果が出ないという。
O編 あぁ、それわかるなぁ。別に飛ばそうとしているつもりも、強く打とうという意識もないのに、いつの間にか力んでたりするんだよね。
坂詰 それに気づいて修正できればいいんですけど、調子がいいと思ってると、力んでいること自体に気付かなかったりするんですよね。
O編 力みグセのある人なんかは、まずそこを疑ってもいいかもね。
坂詰 ただ、手打ちの人の場合、腕の力を抜こうとすると、ゆるんで大きなミスになりやすいから、単純に力を抜いても上手くいかないことも多いんですよ。
O編 そういう人には、どういうアドバイスをするの?
下半身に力を入れることで、上半身の力みが取れやすくなる
坂詰 これは普段の練習のテーマになるんですが、意識を下半身に持っていくなんていいですよね。脚に力を入れて打とうとか、腰をしっかり回してダウンスウィングしようって意識して球を打つんです。
O編 なるほど。下半身に力を入れることで、結果的に上半身の力みが取れやすくなるってことか。
坂詰 ええ。力を抜くのは難しいけど、入れるのは比較的やさしいでしょ。そういう練習を普段からやっておけば、「力んでるな」と感じたときに役に立つんじゃないでしょうか。
Ō編 練習場はいいのに本番がよくない、その他の原因は?
坂詰 保険をかけすぎるなんていうのもよくないですね。プロの場合でいえば、フェアウェイからウェッジやショートアイアンを持っているのに、グリーンのセンターに打ってしまうとか。
O編 調子がいいのにスコアを伸ばせなくなっちゃうんだね。
坂詰 アマチュアの場合でいえば、グリーン左の罠を怖がりすぎて、右に大きく外してしまうとか。手前のバンカーを避けるために、大きな番手を持ちすぎてグリーン奥に外してしまうとか。
O編 調子がいいんだから、そこまで保険をかけなくてもいいのにね。
坂詰 悪いときのイメージが浮かんで、自分を信じ切れないんでしょう。
あとは、練習でやっていないことをやってしまうのもよくないですね。普段、スライスしか打っていないのに真っすぐの球を打とうとしたり、球を曲げる練習なんてしていないのに球を曲げて攻めようとしたりする人、たくさんいるでしょ?
O編 あぁ、たくさんいるねぇ。
坂詰 それがよくないんですよねぇ。どんなに調子がよくても、練習場でできないこと、やっていないことを本番でやろうとしても上手くいくはずがないんです。正直、強いプロって、試合になったら、普段からやっていて、絶対に自信のあることしかやらないんですよ。
O編 そう考えると、一般のゴルファーは、練習でやっていないことを、本番で普通にやろうとしているかもしれないね。
坂詰 でしょ。基本、練習場でできることは本番でもできると思うんですよ。でも、それって、一度や二度できたくらいじゃダメなんです。いつも練習していて、練習場ならいつでもできるという自信ができて初めて本番で使えるんです。そうやって、常に本番を意識して、本番で使うための技術を練習することが、本当の意味でいい練習と言えるんじゃないでしょうか。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月22・29日号「ひょっり わきゅう。第29回」より