「APEX」シリーズのアイアンの中では、21年9月に日本に上陸した「APEX TCB」アイアンというPGAツアーでジョン・ラームやザンダー・シャウフェレの快進撃を支えたモデルがありましたが、今作とバックフェースのウェートを搭載したデザインが似ているので思い浮かぶ人もいるのではないでしょうか。
約3年間のテストを経て登場したという新作は「最も優れたツアーアイアンの開発」をコンセプトに挙げただこともあり、「APEX TCB」の軟鉄ボディにステンレスフェースから「CB」と「MB」ではいわゆる”一枚もの”と呼ばれる軟鉄鍛造モデルへと刷新されています。
そのことによって飛距離性能やコントロール性、形状といったスペックだけでなくフィーリングや音といったツアープレーヤーの感性を引き出すモデルへと進化しているように感じました。
シリーズに共通するのは番手別に重心位置を設定してあること。ロングアイアンは低めにして球を上げやすく、ショートアイアンは高めに設定することでコントロール性を重視しています。では「APEX PROアイアン」から見てみましょう。
7番のロフト33度のコンポジット構造「APEX PRO」
7番のロフト33度とアスリートモデルの中でど真ん中のロフト設定。ヘッドサイズをコンパクトにしながら中空構造で4番、5番には弾きの良いフェース素材を、6番以下では軟鉄を採用しています。内部には衝撃吸収に優れたウレタンを充填することで、中空構造らしからぬマイルドな打感や打音を感じさせてくれます。
ヘッドサイズはある程度コンパクトでありますが、全体的に丸みを帯びたフォルムはシャープさよりもやさしさを感じる形状です。人工マットからですが、実際にコースボール(キャロウェイクロムソフトX)で試打をすると、弾き過ぎない打感なのに飛距離や球の高さはしっかりと出ていることに驚きます。
個人的にはかねてから「中空構造の飛距離を持たせながら、ミスヒットに強い構造を持つロフトが立っていないモデルがあればいいのに」と思っていましたが、ここにありました! やさしさを求めながらもアスリートモデルを使うプレーヤーにばっちりハマるモデルという印象でした。
”一枚もの”の打感「APEX CB」
ツアーでのテストを重ねた1ピース構造の軟鉄鍛造モデルで、トウ側の内部とバックフェースにタングステンのウェートを搭載し、重心位置をトウ・ヒールのセンターに配置しています。搭載位置や重量なども番手別に設計されているので、番手が変わっても弾道の高さを揃えながら頂点を先へと移動させる理想的な距離の階段が作れそうです。
ロフト角34度の7番アイアンを実際に打ってみると、まずは”一枚ものの”の打感の良さを感じます。球の上がりやすさはイメージ通りですが、インパクト直後に当たってくれるソール形状に合わせて、大きすぎない慣性モーメントもフェースの開閉やコントロールを邪魔しない印象。
恐らくPGAツアーでは続々と実戦投入してくるモデルになると思いますが、ツアーで求められる弾道を操る技術や距離の打ち分けに最も適したモデルの一つといっていいでしょう。ある程度のヘッドスピードは必要だとは思いますが、こういうアイアンを使いこなそうとすることで技術が向上することは間違いないです。
やさしさを感じられるマッスルバック「APEX MB」
3モデルの中では最もコンパクトなサイズで鋭いナイフのような切れ味をイメージさせます。バックフェースにはタングステンのウェートを搭載し、分厚い打感と球の上がりやすさ、ソール形状からは、どんな芝からでも抜けの良さを感じられることでしょう。
構えてみるとブレードの高さが低く、マッスルバックには珍しくシャローなフォルム。コンパクトでありますが球が上がりそうな印象を持ちます。丸みを持たせたリーディングエッジの効果もあり引っかかることなく抜けてくれいます。「APEX CB」と比べてもあえてヒール側のソールを残してあるのでダウンブローで打った際の地面への潜り込みを防いでくれそうです。
7番アイアンのロフト角34度のマッスルバックモデルではありますが、難しいという印象はありません。現在のスピン量が減ったボールとの相性も考えた重心位置の設計のおかげか「高い弾道で狙ったエリアに上から落とす」ことができるアイアンです。ヘッドスピードのあるプレーヤーには、一枚ものの打感を味わいながらピンを攻める武器になるモデルになるでしょう。
「ダイナミックゴールドMID 115」は打ち出し角を上げてスピン量も確保
「APEX MB」と「APEX CB」には標準で「APEX PRO」ではモーダス105とどちらかを選択することになりますが、シャフトは「ダイナミックゴールドシャフトMID 115」が採用されています。重量を変えずに打ち出し角とスピン量を増やしたいというツアーからの要望で作られたシャフトだといいます。
DGのフィーリングを維持しつつ中間部を硬く先端を軟らか目に設計したモデルとのことでしたが、思いのほか振りやすいシャフトでした。