レギュラーツアー通算18勝。“中年の星”と言われた職人プロ、藤田寛之が念願だった海外シニアメジャー出場を果たした。8年ぶりの海外メジャーとなった3試合について聞いてみた。
画像: 1969年生まれ、54歳の藤田寛之。「ウェールズ(全英シニア)のリンクスは風との戦い。アゲンストは本当に飛ばなかった」という

1969年生まれ、54歳の藤田寛之。「ウェールズ(全英シニア)のリンクスは風との戦い。アゲンストは本当に飛ばなかった」という

ベルンハルト・ランガーと全米プロシニアの決勝ラウンドで同組になった

GD 初戦は「全米プロシニア」でしたが、久しぶりの海外メジャーはどうでしたか?

藤田 会場となったPGAフリスコは、全米プロゴルフ協会(PGA・オブ・アメリカ)の新たな本拠地に作られたコースでした。草原の中にフェアウェイやバンカー、グリーンを配置した、今までにないデザインがとても新鮮でした。台状のティーイングエリアがないんですよ。セカンド地点からドライバーを打つような感じで、普通に傾斜があるので最初は戸惑いましたね。各ホールでハザードがしっかり効いていて、どういうショットが求められているかが明確です。ボク自身、ショットが不安定だったのでパーを拾う我慢のゴルフでしたが、なんとか予選を突破できました。

GD 決勝ラウンドでは憧れのB・ランガーと同組でしたね。

藤田 3日目はランガーとKJさん(チェ・キョンジュ)と回りました。2人ともショットの正確性が高いのはもちろんですが、びっくりしたのは、自分も同じような球を打っているのにグリーンに行くとボールが2個(ランガーとKJさん)しかないんです。ボクのボールだけ奥へこぼれているんです。着弾地点は同じなのにボクのだけ止まらない。なんだ? ってなりましたね。KJさんは「ビッケ(※藤田のこと)の打ち方では止まらないよ」と言うんです。ボールをしっかりとらえられていないからだ、と教えてくれました。

ラウンド後、他の選手たちの練習を見て気づきました。ボクはハンドファーストに構え、ダウンブローに打ちますが、ランガーもKJさんも地面と直角にインパクトしているんです。

だからターフも取りません。ボールだけをクリーンに拾うようなイメージです。アドレスもややハンドレイト気味ですし、これは衝撃的でした。ここに技術の差があったんです。こんな打ち方があるのか、とレベルの違いを感じました。

画像: B・ランガー(写真真ん中)、チェ・キョンジュ(右)と同組になった藤田寛之。「ランガーと回れたことは貴重な体験になった」(藤田)

B・ランガー(写真真ん中)、チェ・キョンジュ(右)と同組になった藤田寛之。「ランガーと回れたことは貴重な体験になった」(藤田)

GD 2試合目は「全米シニアOP」でしたが、かなり難しいコースですよね。

藤田 全米プロシニアが正統派なメジャーだとすれば、全米シニアOPはスーパーハードセッティングです。両サイドのラフに入れたら1ペナは確実。しかもそのラフは20センチくらいあって、デッキブラシのように硬いんです。横に出すだけで精一杯ですよ。何回か無理して打ちましたけど、いいことはなかったですね。

65歳で優勝したランガーの最終日のFWキープ率は86%でした。まったく曲がらない正確無比のショットです。ボクは57%ですから、そもそもの技術力・対応力が違いました。

全米シニアOPは楽しさと苦しさが入り乱れる試合でした。でも世界一の舞台でプレーができたことは大きな収穫です。日本の打ち方では海外メジャーは通用しない。これが世界のスタンダードだと実感しました。

国内シニアで賞金ランク2位以内に入って、来年も海外シニアメジャーに出たい

GD 3試合目は7月末に開催された「全英シニアOP」。ウェールズのリンクスが舞台でした。

藤田 海沿いのクラシカルなリンクスコースです。海浜公園のような感じで、海岸沿いを散歩している人がたくさんいました。フェアウェイは起伏があり、硬いです。表面にカビのように芝が生えているイメージで、ほぼベアグラウンドです。日本のフェアウェイはコーライですからボールが浮いた状態で打つので、こういった硬いライは日本人には難しいはずです。リンクス特有のポットバンカーも低い位置に作られているので、ボールが吸い込まれるように落ちていきます。さらにフェアウェイの外はトゲトゲのブッシュですから、なかなか厳しいコースでしたね。

日本と大きく違うのは風です。ボクは重さで風を表現するのですが、ウェールズの風は重いです。ボールが軽くなってしまうので風に持っていかれます。風の影響が大きいのでアゲンストだと本当に飛ばなくなりますし、フォローだと逆に球が上がらなくなります。

小沼キャディと「日本ならそよ風だな」って話していてもアゲンストなら10Yプラスしないと届きません。この風は弾道の曲がりだけでなく、落ちてからの転がりにも大きく影響します。地形の読み、風の読みなど、頭をフル回転させないとスコアになりません。だから、とにかく疲れます。

画像: 全英シニアのポットバンカーは名手・藤田にとっても、やはり厄介(写真上)。最終日は大荒れで台風並みの暴風雨。「これぞ本場って感じ」と藤田(写真下)

全英シニアのポットバンカーは名手・藤田にとっても、やはり厄介(写真上)。最終日は大荒れで台風並みの暴風雨。「これぞ本場って感じ」と藤田(写真下)

GD 全米シニアOPはハードなセッティングと言っていましたが、全英シニアOPも難しいということですか?

藤田 リンクスは理不尽極まりないんですよ。ちゃんと打てたとしても着弾の角度や風の影響でバンカーに入ることがあるし、ミスしても転がり次第でいい位置につくこともあります。リンクスは自然との戦いでもありますから、思うようにはいかない。理不尽さをまざまざと感じる試合でした。

GD そんな理不尽なコースで見事、通算5オーバーの59位タイで予選を突破しました。

藤田 初日(4オーバー)の雰囲気から6オーバーなら大丈夫だろうと考えました。2日目は少し風が弱まったんです。スコアが伸びるかもと思いましたが、6オーバー狙いでいきました。我慢のゴルフを続け、最後の18番(パー5)でセカンドがグリーンエッジまで行ってくれて、パターで寄せてバーディ。これで1個余裕(通算5オーバー)ができたと思ったら結局、予選通過ギリギリでした。

GD 全英シニアOPは優勝が5オーバーという厳しさでしたが、決勝ラウンドはどうでしたか?

藤田 最終日は台風でした。ボールは風で動くし、アドレスしても体が動くし、傘がさせない暴風雨ですから、ずぶ濡れ状態です。こんな大荒れでプレーするのは無理でしょって正直思いましたね。

テークバックするたびにヘッドが風で持っていかれるし、ダウンスウィングでもヘッドが風で動きます。絶対にチョロするって思いましたが、不思議とボールに当たっていました。最終日は全英用に持って行った4番アイアンを入れました。ボールを上げたくなかったからです。ウェッジも硬いライに合わせ、ローバウンスを用意。112Yを7番アイアンで打つくらいの猛烈な風でしたが、なんとか回り切れました。

GD 念願だった海外シニアメジャー3試合ですべて予選を突破。また来年も出場したいですか?

藤田 また絶対に行きたいです。メジャーという舞台は、とてつもない魅力があります。コースコンディション、練習環境、大会運営、集まる選手たち、ボランティアやギャラリーまで、すべてが最高です。そんな場所でプレーできるのは、たまらなく幸せです。

GD これから国内シニアツアーの試合が増えていきます。どんな目標を掲げていますか?

藤田 全米プロシニアと全米シニアOPは賞金ランク4位まで出場できます。第一目標は賞金ランク4位以内。全英シニアOPにも出たいですから最終目標は賞金ランク2位以内です。そのためには1勝は必要になります。優勝に限りなく近いところでプレーできるように頑張ります!

PHOTO/BKコーポレーション

※週刊ゴルフダイジェスト2023年9月5日号「藤田寛之 海外シニアメジャー3戦挑戦記」より

This article is a sponsored article by
''.