「最後はバーディを絶対に取ってやろう」(櫻井)
19歳にして勝負師の雰囲気を身にまとっていた。
通算9アンダーで小祝、山下と首位に並んで迎えた最終18番。櫻井は2メートルのバーディパットを強めに打ち切った。カップインを見届けると、右手の拳に力を込めてガッツポーズ。
北海道の澄み切った青空にさわやかな笑顔が映えた。
「プレーオフはしたくなかったので、最後はバーディを絶対に取ってやろうという気持ちでやりました。最後まで落ち着いてできたので、そこはよかったと思います」
逆転劇の原動力は飛び抜けた飛距離と精度の高いアイアンショット、抜群のタッチを誇るパッティングだった。
516ヤードの2番パー5はピン横2.5メートルに2オン。惜しくもイーグルパットは外したが、楽々とバーディを奪った。
424ヤードの12番パー4はティーショットを290ヤード飛ばし、第2打をピン80センチにつけて、この時点で1度単独首位に立った。
そして勝負を決めた18番はティーショットで260ヤード先のフェアウェイを捕らえ、残り124ヤードの第2打をピン手前にピタリとつけた。
櫻井の武器は大会ナンバーワンの飛距離
強心臓ぶりも光った。
この日のライバルは2勝目を挙げた楽天スーパーレディースで激戦の末に下した鈴木愛、昨年の年間女王・山下、さらに地元の大声援を味方につける小祝だったが、ひるむどころか堂々とマイペースを貫いた。
「今日は最初から1打差で始まって最後の最後まで1打を争うデッドヒートだったので、ワクワクしながらやっていました。最後までバーディを取っていかないといけない状況だったので、いい緊張感でした」
最大の武器となっている飛距離は数字が証明している。
ゴルフ5レディスのドライビングディスタンスは259.00ヤードで1位、今季全体でも256.80ヤードで4位につけているが、その飛距離はユニークな練習法で養ってきた。
それは昨年まで積極的に取り組んできたショットを打つ前のルーティン。
左足1本に体重を乗せたフォローの位置からスタートして、一気に全体重を右足に乗せてフィニッシュまで振り抜くというもので、ヘッドに遠心力が働き、小手先でヘッドを操作しないので、飛距離はもちろん、方向性もよくなるという。
同世代のメジャーチャンピオン・川﨑春花も櫻井の”マン振り素振り”の信奉者のひとりだ。
また、ドライバーを打つ時、ヘッドをボールから離して構えるようにしているそうで、これはインパクトで上体の突っ込みを防ぐ効果があり、ヘッドを加速させやすくなる。
今週地元・長崎開催の日本女子プロ選手権で”2週連続優勝”を狙う
昨年は下部のステップアップツアーで新記録の5勝を挙げ、今季はレギュラーツアーで早くも3勝。
しかも10代での3勝到達は”レジェンド”宮里藍や米ツアーで活躍している畑岡奈紗に続く快挙となった。
「記録のことは自分の中では考えていなくて、結果的に達成できてよかった。尊敬している方々の後についていけるように頑張りたいです」
今回の優勝で、年間女王争い(メルセデスランキング)で5位、年間獲得賞金額で6位に浮上し、次なる目標も見えてきた。
長崎市出身で次戦は地元で開催される日本女子プロ選手権(パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ)。
初のメジャー大会制覇と10代4勝目だ。
「来週(今週の7日)からメジャーシーズンが始まるので、しっかり力を出せるように頑張ります。選手権は去年から目標にしていました。前の週に優勝できて、いい状態で入れると思います」
計り知れない潜在力を持つ大器が、女子プロ下剋上の主役に躍り出た。