異常な熱帯夜が続く今夏では、グリーンキーパーも手の施しようがない
先日の日本女子プロゴルフ選手権初日。
その前週に行われたゴルフ5レディスで優勝した櫻井心那は長崎市出身で、幼少期から(長崎日大高校時代は合宿などで)何度もパサージュ琴海アイランドGCを回ってきている。その櫻井が「違うコースみたい」と驚いたのが、グリーンのあまりの変わりようである。
芝が枯れた部分がむき出しとなり、地面が見える場所も少なくない。
櫻井のキャディは同じ高校ゴルフ部の先輩で、2人して「イメージが全然湧かない。ラインは真っすぐなはずなのに、急に右に曲がったり」と途方に暮れたという。
午前中と午後で急変するグリーンの速さの違いにも翻弄された。
初日、午前スタート組はアンダーパーが24人もいたのに、午後組はたったの5人。
「練習日はたっぷり水やりをしたのか、ウェットでグリーンも遅かった。それがプロアマあたりで転圧ローラーをかけたのか、急に速くなった。それに午後と午前で速さが違ったのは、海風が吹くか吹かないかで乾き方が違うため。つまり風で乾いたら芝のないところは、それこそ"つるつる"で、どんなにソフトに打っても外へ出る羽目になってしまう。初日は午後に風速が7メートルと強く吹いたから」(現地取材の小誌記者)
3日目を終えた小祝さくらは、
「何をどうやってもどうにもならない。もう笑えてきちゃって」
と、さじを投げたほど。最終日もスティンプメーターで10.67フィート、コンパクション21キロと、数字上はあまり速くなかったものの、芝のない下りのラインでは異常に転がるという事態だった。
ドライバーでフェアウェイに置くことができれば、飛距離の出る選手はスピンのかかる短い番手でグリーンをとらえることができる。飛ばし屋の神谷そらが勝利したのもうなずける話だ。
元々寒冷地で育ったベント芝、夏のこの時期は水をたっぷりやらなければならない。そうなるとグリーンは軟らかくなるため遅くなる。しかし大会となれば速くしなければならないという、いわば二律背反の命題を背負うことになる。
また芝の品種改良が進み、夏でも夜間の気温が下がれば成長するのだが、この異常な熱帯夜が続く今夏では、グリーンキーパーも手の施しようがないといえよう。
実はその前週のゴルフ5レディスでもフェアウェイが枯れて、「プリファードライ」を適用するほど。比較的涼しい北海道でこうなのだから、九州ではなおさらだ。
一番の元凶は、異常なほどの酷暑なのである。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月3日号「バック9」より