今や女子プロの飛距離は250Y時代に突入。ところが体力も筋力もあるアマチュアの飛距離はまったく伸びていない。この差はどこにあるのか。女子プロのコーチでスウィングに詳しい横田英治プロいわく、アマチュアと女子プロの差は、飛ばしの3条件にあるという。
画像: 今季3勝を挙げ、飛ばし屋で有名な櫻井心那のインパクト。インパクトにおける右ひじは? 頭の位置は? 背骨の傾きは? そういう視点で観察すると飛ばしの条件が見えてくると横田プロ

今季3勝を挙げ、飛ばし屋で有名な櫻井心那のインパクト。インパクトにおける右ひじは? 頭の位置は? 背骨の傾きは? そういう視点で観察すると飛ばしの条件が見えてくると横田プロ

自分の体重やパワーをボールに伝える、飛ばしの3条件

体格も筋力も勝る男性アマチュアが女子プロより飛ばない。この矛盾はどうして起きるのだろう。

「それは矛盾ではなく、"パワーポイント"を知らないだけなんです。パワーポイントとは私が作った造語ですが、20年以上前から提言している概念です。このパワーポイントには3つの要素があり、これさえクリアできれば、誰でも簡単に飛ばせるようになります」 

そう語るのは岸部桃子プロのコーチであり、スウィング理論に詳しい横田英治プロだ。

3つの要素は後述するとして、このパワーポイントについて横田プロは、

「野球やテニス、卓球など、自分に向かってくるボールにはエネルギーがあり、それを跳ね返すこと(反発力)でパフォーマンスが上げられます。ですが、ゴルフは静止したボールを打つので、ボールにエネルギーがありません。となると自分の体重やパワーをいかにボールに伝えるかが、飛ばすための条件になります。それが私が定義するパワーポイントです」 

画像: 右からドライビングディスタンス3位(257.26Y)の櫻井心那、同8位の岩井千怜(253.86Y)、同7位の岩井明愛(255.04Y)※データは9月17日現在

右からドライビングディスタンス3位(257.26Y)の櫻井心那、同8位の岩井千怜(253.86Y)、同7位の岩井明愛(255.04Y)※データは9月17日現在

このパワーポイントのヒントが女子プロのインパクトに隠されているという。

19歳で今季3勝を挙げた櫻井心那や女子ツアーを牽引する岩井姉妹のスウィングを見ると

「3人のスウィングで注目してほしいのは右ひじ、頭の位置、背骨の傾きです。3人のインパクトは完璧にパワーポイントが整っています。これが飛ぶインパクトです。ここに飛ばしの3条件が隠されています。逆に言えばアマチュアが飛ばない、すべての理由でもあるのです」 

大切なのはインパクトに向かって左足に体重が移動すること

自分のパワーをボールに伝えるにはコツがある。その3条件を次頁で詳しく教えてもらおう。 

横田プロが語るパワーポイント=飛ばしの3条件とは、どういうものなのか? 

横田プロが指摘するひとつ目が「左体重」だ。

画像: インパクトで体重は左足に移動する。この左体重ができるから自分の体重やパワーがボールに伝えられるのだ。シャフトをしならせるように自分の重さを加えてみよう。シャフトは左に傾き、自然なハンドファーストになる

インパクトで体重は左足に移動する。この左体重ができるから自分の体重やパワーがボールに伝えられるのだ。シャフトをしならせるように自分の重さを加えてみよう。シャフトは左に傾き、自然なハンドファーストになる

「まずはボールに対して自分の体重を乗せます。シャフトを通してヘッドを地面にめり込ませるくらい、押し込んでみてください(折れないよう注意)。そうすると左足体重になり、シャフトが左に傾いたハンドファーストの形になるはずです」 

右体重ではシャフトは傾かず、ヘッドは前にスッポ抜けるだけだ。逆に左足に乗り過ぎる、体が突っ込んだ状態だとヘッドは地面に刺さって抜けなくなる。

「大切なのはインパクトに向かって左足に体重が移動することです。重心はほぼセンターで、わずかに左に動くようなイメージです。決して右には動きません」 

ひじが体に近いと腕力と脚力、両方使える

画像: 右ひじが近いと柱を強く押せる(両わきが締まる)。ひじが体に近ければ、腕力だけでなく、脚力も含め、体全体で押せるのだ。ゴルフの場合、右ひじが体の近くにある。これが飛ばしの絶対条件となる

右ひじが近いと柱を強く押せる(両わきが締まる)。ひじが体に近ければ、腕力だけでなく、脚力も含め、体全体で押せるのだ。ゴルフの場合、右ひじが体の近くにある。これが飛ばしの絶対条件となる

次の要素が右ひじだ。ひじはパワーを出すうえで重要な部位。

「床にある重いモノを持ち上げるときを考えてください。ひじが体から遠いと腕力しか使えませんが、体に近いと腕力と脚力、両方が使えます。つまり全身の重さやパワーが使えるということです」 

プロの右ひじは例外なく、体の近くにある。

だから飛ぶのだ。 

頭が右に残る、いわゆるビハインド・ザ・ボール

画像: 頭が右に残ることで背骨が右に傾くことが重要。こうすることでクラブがインサイドに下りる。逆に背骨が左に傾くと胸は開く。クラブはアウトサイドから下りやすくなり、カット軌道になる。つまりボールがつかまらず、強く押せないのだ

頭が右に残ることで背骨が右に傾くことが重要。こうすることでクラブがインサイドに下りる。逆に背骨が左に傾くと胸は開く。クラブはアウトサイドから下りやすくなり、カット軌道になる。つまりボールがつかまらず、強く押せないのだ

3つ目の要素が頭の位置だ。頭が右に残る、いわゆるビハインド・ザ・ボールが理想となる。

「注意してほしいのが、ただ頭を右に傾ければいい、というわけではありません。注目すべきは頭からつながった背骨の傾きなんです。背骨が右に傾くとボールに対して胸が閉じた状態になります。この胸の向きが重要です。胸が閉じていれば、クラブはインサイドから下ろせます。ボールがつかまり、強く押せるのです。腰の開き具合に対して胸が閉じている、このインパクトの形が力の伝わるパワーポイントになります。 

パワーポイントはこの3つしかありませんが、ひとつできると不思議とほかの2つもできることがあります。この3つは連動しているのです。自分がつかみやすいものから始めるといいでしょう」 

セットアップで3つの条件を整える

横田プロは飛ばすための3つの条件が整えば、飛距離は間違いなく伸びると言う。では、どうすれば、3つの要素は身につくのか?

「アドレスをひと工夫するだけでそのきっかけがつかめます。つまりセットアップで3つの条件を整えることが可能なんです」 

スウィングは一度始動してしまえば、一瞬の動きだ。

右ひじ、左体重、頭右といった3つのパワーポイントを意識するのは、なかなか難しいだろう。それなら打つ前の構え方で3つの要素へと導けるようにすればいい、という。

「3つのパワーポイントは"右"が強調されがちですが、実は右でコントロールするわけではないのです。大切なのは"左"なんです。左手であり、左腕(左ひじ、左わき)であり、左足にあります。その発想が持てるかどうかが、飛ばしの3条件につながる近道になります」 

セットアップはすべて"左"で行う

画像: 左手でクラブを握るとハンドファーストになり、右手の力みも抑えられる。また、左腕を左胸の上に乗せると左ひじが体に近づき、わきが締まる。左手で握る意識が加わることで左腕リードのスウィングになるのだ

左手でクラブを握るとハンドファーストになり、右手の力みも抑えられる。また、左腕を左胸の上に乗せると左ひじが体に近づき、わきが締まる。左手で握る意識が加わることで左腕リードのスウィングになるのだ

横田プロが教えてくれたセットアップはすべて"左"で行う。まずは左手でクラブを握るのだ。

「アマチュアの多くは右手でクラブを握っています。もちろんクラブは両手で持っていますから、厳密には“右手が強い”になります。それとは反対にプロは左手でクラブを握っています。左手がメインで握っているということです。実際に左手1本、右手1本でドライバーを持てばわかりますが、左手に持つとハンドファーストになりますが、右手で持つとハンドレイトになります。この時点で自分のパワーをボールに伝えられるかどうかがわかるはずです。 

そこから左腕を左胸の上に乗せます。こうすると右ひじと同様、左ひじが体に近づきます。そして右手を右ひじが体につくように握ります。これで両わきの締まった飛ばせるグリップが完成です」 

このグリップが飛ばしの3条件へと導くステップとなる。

画像: ややクローズスタンスで構えると左へ体重移動しやすくなる。クローズスタンスは体も回しやすく、手打ち解消にもなる。「始動でエネルギーを使ってスッと上げると切り返しで脱力できるのでおすすめ」(横田プロ)

ややクローズスタンスで構えると左へ体重移動しやすくなる。クローズスタンスは体も回しやすく、手打ち解消にもなる。「始動でエネルギーを使ってスッと上げると切り返しで脱力できるのでおすすめ」(横田プロ)

アドレスを確認しよう。

「ターゲットに対し、ややクローズスタンスで構えます。そうすると左足に体重移動しやすくなります。これは体の構造上の特性でもありますが、人間は前に出した足に体重移動するものなのです。ですからクローズに構えると左足が少し前に出た状態が作れます。それを利用することで左体重になりやすくするわけです」 

左手リードでハンドファーストになり、右手が力まないから右ひじも離れない。

クローズに構えれば左足に乗れるのだ。

最後に、インパクトが強くなる簡単ドリルを。

画像: インパクトバッグを叩いてみよう。「パワーが出せる体使いが自然に身につきます」(横田プロ)※インパクトバッグ「奇跡のインパクト(5203円)」小社「ゴルフポケット」で購入できます!

インパクトバッグを叩いてみよう。「パワーが出せる体使いが自然に身につきます」(横田プロ)※インパクトバッグ「奇跡のインパクト(5203円)」小社「ゴルフポケット」で購入できます!

飛ばしの練習はインパクトバッグが最適と横田プロ。

「テークバックはひざの高さでいいです。当てる動作をゆっくり2回行い、最後にスピードを出して叩きます。これを繰り返せば、飛ばすコツがつかめますよ」

飛ばしの3条件を意識して、女子プロのようにもっと飛ばそう!

TEXT/Kenji Oba

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa

THANKS/クラブハウス

※週刊ゴルフダイジェスト9月26日号「飛ばしの条件は『左体重』『右ひじ近く』『頭右』」より

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