原則通りにプレー出来ないとき、どう処置をすればいいか? がルールの主要部分
先日、日本の女子ツアーの大会で、動かせない障害物からの救済に関する処置を間違えた選手が、合計4罰打を受けるという事例があり、ネットニュースで大きく取り上げられました。
そうした記事の内容や、記事に対するコメントを拝見していて、ゴルフ規則にまつわる様々な想いが、浮かびました。
私は、規則書を読むたびに、ゴルフゲームの精神というものを改めて考えさせられます。どうしてこのような規則があるのか? なぜ、この行為に罰打がつくのか?
以前受講した、R&Aレベル1ルールセミナーでも、まずゴルフ規則の精神といったところを教えられ、規則の持つ意味や、罰のつく理由など、多くのことを考えるきっかけになりました。
今回はゴルフ規則に根ざしている原則と、それに基づくゴルフ規則との向き合い方、ということについて考えていきたいと思います。
ゴルフは他のスポーツと比べて、フィールドがとてつもなく広く、その地形や気象条件も多種多様な上、プレー形式も様々です。規則書1.1 ゴルフゲームはまずこうした記述で始まります。
ゴルフは1つの球を1つのクラブで打つことによってコース上の18ホール(また はそれ以下)の1ラウンドをプレーする。 各ホールはティーイングエリアからストロークをして始まり、球がパッティン ググリーンのホールに入ったとき(または規則が別途、そのホールの終了を規定 しているとき)に終わる。 各ストロークについて、プレーヤーは: • コースはあるがままにプレーする。 • 球はあるがままにプレーする。
そう、「ボールもコースもあるがまま」「一度ティーから打たれたボールは、カップインするまで、触れることが出来ず、クラブで打つという方法以外でボールを前進させることは出来ない」。
これが大原則なのです。この原則通りにプレー出来ないときに、どういう処置をしたらよいのか。
というのが、ルールの主要部分でもあります。
たとえば、ボールがコース外に飛び出てしまって、そのボールでプレーを続けることが出来なくなったときに、どうしたらゲームに復帰出来るのか、どうしたら他のプレーヤーと公平に出来るのか?
こうした考えから生まれたのが、OBの処置(1罰打と、同じ箇所からの打ち直し)=「ストロークと距離の罰」ということになります。
もしOBの規則がなく、どんなところからでもプレーを続行しなければならないとしたら? 紛失球になった時点でゲームが終了してしまうとしたら?
そう考えればOBなどの規則は、罰ではなく、「救済」なのだと理解出来るでしょう。こうして、ゴルフ規則を学ぶことで、ゴルフゲームの精神を学ぶことが出来るのです。
ゴルフ規則は元々たった13箇条の素朴なものから始まりましたが、プレー人口の増加やフィールドが多様化したことから、現在のゴルフ規則は、プレーに関する主だった項目だけでも20もあります。
さらにそのルールを正しく運用するための、「オフィシャルガイド」なるものまであり、ルールのプロであるルールオフィシャルやレフェリーといったひとたちは、そのすべてについて正しく理解していることが求められます。また、ゴルフ規則は4年に一度、大きな改訂があるうえ、四半期に一度のペースで細かなルール運用に関する「詳説」が発表され、常に知識をアップデートしていく必要があるのです。
そう、ゴルフのルールを完璧に把握する、というのはとても大変な労力を必要とするのです。もちろん、一般的なプレーでは極々基本的なルールを知っていれば問題ありませんし、カジュアルなラウンドではもっと緩いルールでプレーを楽しむことも良いと思います。
ただ、誤った知識や、すでに改訂されている古いルールを知らずに適用していたり、他のプレーヤーに押し付けようとするのは問題ですし、ゴルフに真剣に取り組んでいるなら、技術の習得だけでなく、正しいゴルフ規則を学ぶ。ということにも時間を割いてほしいと思うのです。
現在、規則書はJGAのホームページでも閲覧出来ますし、R&Aゴルフ規則公式アプリというのも整備されています。
このアプリではルールの記事やニュースも確認出来る他、規則を説明する為の動画も多く用意されていて、規則書の条文を読むより、はるかに分かりやすくルールを学べるようになっています。
また、「ゴルフルール早わかり集」といった、ルールに関してわかりやすく解説している本などもあります。少しでも多くのゴルファーにゴルフルールへの興味を持ってもらえたらと思います。