「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はアイアンやウェッジの素材について教えてもらった。
画像: 日本のゴルファーが大好きな軟鉄鍛造アイアン。では素材の軟鉄について、どれくらい知っている?(写真はイメージ)

日本のゴルファーが大好きな軟鉄鍛造アイアン。では素材の軟鉄について、どれくらい知っている?(写真はイメージ)

ひとくちに「軟鉄鍛造」といっても微妙な違いがある

みんゴル取材班(以下、み):日本人ゴルファーの大好物といえば軟鉄鍛造アイアンですが、ちょっと調べたら軟鉄といってもよく知られているS20CやS25CのほかにSS400や8620カーボンスチールがあります。打感は同等と考えていいですか。

宮城:ちょっとマニアックな話になりますが、知識として覚えておいてください。まず鉄鋼業界の中で「軟鉄」という定義はありません。国産アイアンによく使われるS20CやS25CはJIS規格ではS-C材ともいわれますが機械構造用炭素鋼に属し、その中で低炭素鋼に分類されます。

み:低炭素鋼、つまり炭素の含有量が少ないほうがやわらかいということですね。

宮城:S35CやS45Cは確かに打感が硬くなりますが、S25CとS20Cは微妙です。曲げ剛性を機械的に測るとS20Cのほうがやわらかいけれど、両方の素材で同じウェッジを試作してプロに打ってもらったときには8割くらいのプロがS25Cのほうがやわらかいといいました。

み:意外ですね。なぜでしょう。

宮城:はっきりした理由はわかりませんが、締まった感じがやわらかいという表現になるのかもしれません。ちなみにJIS規格ではS20Cの炭素含有量は0.18〜0.23%、S25Cは0.22〜0.28%と決められています。数値がかぶっているのでS20CとS25Cの違いはあまり気にしなくてもいいと思います。ただ、S15C以下だと逆にやわらかすぎます。昔、某大手メーカーがS10Cを使って純鉄モデルとして売り出しましたが、打っているとネックが曲がってしまうほどでした。

み:S20CやS25Cが実用的ということですね。地クラブ系でよく使われているSS400や海外ブランドで見かける8620はどんな素材でしょう。

宮城:SS400は一般構造用圧延鋼材という分類でSS材ともいわれています。ビルや橋桁など建設用資材として使われる素材で価格が安いのがメリットです。JIS規格で引張強度の下限は決められていますが、炭素含有量の規定はないので硬さが保証されていません。8620はニッケルクロムモリブデン鋼といって工具などにも使われる合金なので硬さが出ます。

み:ひとくちに軟鉄鍛造といっても微妙な違いがあるわけですね。

宮城:打感に一番影響するのは打点部分の厚さですが、素材の硬さも無視できません。自分がアイアンやウェッジを設計するときには素材の弾性の指標となる「ヤング率」をよく調べます。

み:次回は軟鉄以外の素材についても教えてください。

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