ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は来季のPGAツアー昇格が決まった、日本ツアー20-21年シーズンの賞金王、チャン・キムについて解説してくれた。
画像: 「日本ツアーでは”飛ばし屋"。しかし昨年は、平均パット数1位とショートゲームにも磨きがかかっていま す。会った人は誰もが好きになるような、義理堅い人格者でもあります」by佐藤信人(Photo/Hiroyuki Okazawa)

「日本ツアーでは”飛ばし屋"。しかし昨年は、平均パット数1位とショートゲームにも磨きがかかっていま
す。会った人は誰もが好きになるような、義理堅い人格者でもあります」by佐藤信人(Photo/Hiroyuki Okazawa)

14年かけて世界を飛び回ってきた33歳のチャン・キム

8月のマグニット選手権で、チャン・キムがPGA下部のコーンフェリーツアー初優勝を飾りました。そして続く翌週のアルバートソンズ・ボイシオープンでも優勝し2連勝。これで来季のPGAツアー昇格が決まりました。ボクも含めた日本ツアーの関係者も心から喜んでいます。

この連載で彼を扱ったのは、昨年暮れのこと。一昨年、日本ツアーの賞金王として米ツアーに挑戦するも、入れ替え戦で失敗。昨年は失意から気持ちを切り替え、次なるチャンスをうかがって日本ツアーを戦っていました。そして最終QTを2位で通過し、今年は満を持してアメリカへと旅立ったのです。あのときは喜びに少しの寂しさが交じり、「日本ツアーで彼のゴルフをもう見ることができないかも」と。彼の実力からすれば、簡単にPGAに昇格するだろうと思ったからです。

ところがなかなか結果が出ません。しかし、終盤での2連勝。その実力をようやく発揮してくれました。優勝してシードが確実になったことについて、「やっぱりチャンはすごいですね」という声も聞きました。

アリゾナ州立大を1年で中退して10年にプロ転向。その後、当時の下部ツアーであるネーションワイドツアーを皮切りに、カナダ、アジア、欧州チャレンジツアー、そして日本ツアーと、14年かけて世界を飛び回り、念願のPGAの舞台に立つのです。アメリカのメディアの紹介に「日本ツアー出身」と書かれていることが多く、ボクだけではなく自分のことのように喜んでいる関係者はすごく多いと思います。

コーンフェリーツアー終盤で2勝を挙げ、PGAに昇格

実は4月のISPSで来日した際、少しコースで立ち話をしました。その時点ではランク30位。開幕戦から2試合連続で予選落ちしましたが、その後の4試合連続トップ25フィニッシュで、ようやくエンジンがかかり始めた、という印象でした。

コーンフェリーツアーの特徴について聞くと、「とにかく飛ばしてナンボ」との答え。「だったらいいね」と返すと、「いやいや僕はロングヒッターじゃない。平均より少し飛ぶ程度」と笑うのです。調べてみると、同ツアーの平均飛距離は305ヤードで、キムのそれは307ヤードでした。

その後、7月下旬から3試合連続の予選落ち。ランクも50位台まで下がり、初優勝のインタビューでは「この時期が一番つらかった」と明かしました。それを救ってくれたのが奥さんの「あなたならできる」という励ましであり、内助の功だったそうです。

マグニット優勝後のインタビューでは「今年のコーンフェリーツアーでの当初の目標はトップ30に入ることだったが、75位までもらえるシード権を確保するというのも考えていた」ということを言っていて「それは謙遜しすぎでしょ」とツッコミたくなるような、いかにもチャン・キムらしいものでした。

PGAツアーはおそらく来年1月のソニーオープンから出場するでしょう。この秋日本にも何試合か来るかもしれないので、本当の見納めになるかもしれません。また一回り成長したチャン・キムを見るのも楽しみですし、日本選手も彼に久しぶりに会うのが楽しみなのではないでしょうか。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月10日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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