規則書の「規則番号」で説明できますか?
今回も、またルールのお話です。ちょっと小難しい話になりますが、今回は「揉め事」についてです。コンペや、仲間内のラウンドでも、「こういうとき、どうするんだっけ?」「今の処置、おかしくない?」などと、ルールで揉めること、結構あるのではないかと思います。
また、トーナメントのテレビ中継でも、「今、選手のボールが動いたのでは?」「あの処置は間違っているのでは?」などと疑問を持ち、テレビ局に電話をかけたりする方もいるようです。
こうしたとき、まず考えていただきたいのは、ご自分が、完全に正しい知識を持っているか? ということです。「これはこうだ」と主張するなら、しっかりその場でその根拠を示さなければなりません。具体的には、その件について規則書の規則番号と項目を明示出来なければ、その主張は根拠のない、あやふやなものとなります。
規則書も持たず、読んだこともないのに、「誰々からこう教わった」「雑誌にこう書いてあった」というような、「また聞き」の知識を鵜呑みにして、誤った知識を振りかざすことはあまりにも危険です。ルールをしっかり学んだ人なら、状況を確認し、「それは、規則10.1cですね」などと、即座に規則番号が出てきます。
ゴルフルールは4年毎に大きな改訂がありますし、細かな修正も四半期毎に発表されますので、厳密にルールを運用するのはとても難しいことなのです。また、プレー中にルールについての疑義が生じた時、正確に対応するためには、下記のような状況把握が必要になります。
• プレー形式(マッチプレーなのかストロークプレーなのか、個人戦、フォアサム、あるいはフォアボールなのか、など)。
• 誰が関与しているのか(その問題はプレーヤー本人、そのパートナーやキャディ、相手やそのキャディ、あるいは外的影響に関わるのか)。
• その出来事が起きたのはコースのどの部分なのか(バンカー内なのか、ペナルティー エリア内なのか、パッティンググリーン上なのか、など)。
• 実際に何が起きたのか。
• プレーヤーの意図は何か(プレーヤーは何をしていたのか、何をしたかったのか)。
• その問題のタイミング(プレーヤーはまだコース上にいるのか、スコアカードを提出 したのか、競技は終了したのか、など)。
こうした事実が確認出来なければ、正しい裁定を下すことは出来ません。まるで、交通事故や事件の調書を作成するようないかめしさですが、そうしたことがすべて特定出来て初めて、裁定することが出来るのです。
いかがですか? こう考えると、生半可な知識で、他人のプレーやルールの運用に軽々しく口を出すのは"慎むべき"ではないでしょうか?
肉眼で確認できないことは証拠にならない
また、トーナメント中継を観ている方のクレームも、同じような考え方から、軽はずみに電話をかけたりするのは考え物です。特に知っておいて頂きたいのは、
・肉眼で確認できない情報は証拠として採用しない。
ということです。
他のプロスポーツでは、「ビデオアシスタントレフェリー」など、高精度のカメラで、ボールの落下地点などを確認し、その情報を基にゲームの裁定をすることが一般的になってきているかと思いますが、ゴルフはまったく逆です。
たとえば、深いラフの中でわずかにボールが動いたことが、高解像度のテレビカメラが、とらえていたとしても、肉眼で確認出来ないほどわずかな動きなら、それは「動いた」とは見做されないのです。
そう、とてつもなく広いフィールドで100人を超えるプレーヤーが同時にプレーを進めていくゴルフのトーナメントでは、プレーヤーのすべてのプレーを監視することは現実的ではありませんし、元々ゴルフは「審判のいないスポーツ」と言われ、全てプレーヤー自身の判断で、プレーを進めていくのが前提になっている、というのもその理由です。
ルールに疑問を持った時は、まず規則書で確認する。わからないことがあったら信頼できる人に聞いてみる。どうしてもわからない場合は、JGAに問い合わせる。
ルールに関する「揉め事」は、こうしてスッキリさせていただけたらと思います。