青木功が最終18番でまさかの池ポチャ! 初制覇を逃した1973年の第38回大会
距離の長いコースに多くの選手が苦しむなか、初日首位に立ったのは、台湾の何明忠とフィリピンのベン・アルダの外国勢。2日目には青木功が通算6アンダーで首位に立ち、尾崎将司も3位につける。だが3日目に青木のパターのヘッドとシャフトの接続部分にひび割れができ、タッチが合わなくなるアクシデント。それでも青木はスコアを3つ伸ばして首位を守り、日本オープン初制覇に王手をかける。
迎えた最終日、青木は6番でバンカーに入れてボギーとすると、3打差でスタートしたアルダが、2番、4番、6番でバーディを奪い青木を逆転し、首位に立つ。青木も14番で7メートルを入れてアルダに追い付き、2人が首位に並んで最終18番パー5を迎えた。
青木のティーショットは右のラフ。前方には樹木があり、青木は木の左を通してフェアウェイ左サイドに出し、3打目勝負と考えていた。だが、6番アイアンで打った2打目は、少しダフってしまい、フックがかかり、フェアウェイの傾斜に当たり、そのまま池に入りOB。そこから何とかボギーで上がるが、結局、OB分の2打差で、1970年大会に続き2位。
青木はこの日の18番の結果などを受け、持ち球をドローボールからフェードボールに変えることを決意。このオフに2カ月くらい猛特訓し、その後の躍進につながったと言われている。
ジャンボ100勝フィーバーのなか、優勝したのは無名のテラバイネンだった1996年の第61回大会
前週のジーン・サラゼン ジュンクラシックでプロ通算99勝目を挙げ、今大会には100勝がかかっていた尾崎将司。茨木CCにはその瞬間をとらえようと、多くのメディアが駆け付け、開幕前から大フィーバー。コースは日本オープンらしく、ティーショットの落下地点のフェアウェイ幅は約18ヤードと狭く絞られ、ラフは深く伸ばされた厳しいセッティング。
そんななか尾崎は初日1アンダー、2日目1オーバーのイーブンパー、首位に4打差の4位で予選を通過。だが連戦の疲れが出たのか3日目に崩れ、トップと9打差に広がり100勝はお預けに。
最終日は外国勢の優勝争い。首位は23年前、同じコースで行われた日本オープンを制したベン・アルダと母国を同じくするフィリピンのフランキー・ミノザ。だがスコアを崩し、皮肉にも23年前に敗れた青木功が入れたのと同じ18番の池に入れてしまい万事休す。
代わりにスコアを3つ伸ばしてジリジリと順位を上げた、まったく無名の40歳の外国人、ピーター・テラバイネンが、ただひとり4日間でアンダーパーをマークして優勝した。このテラバイネン、前年のチェコオープン優勝くらいしか実績がなく、欧州ツアーの賞金ランク26位の資格で日本ゴルフ協会の推薦で出場していた。
だが、実は知る人ぞ知る存在で「リンクスランドへ ゴルフの魂を探して」(マイクル・バンバーガー著、朝日出版社刊)という本のなかに準主人公的な役割で登場しており、「用具の使用契約もなく、専属のプロ・キャディもいなくて、身につけるウェアさえ決まっていなかった」と書かれている"渡り鳥"。この優勝で10 年間の日本ツアーのシードを手に入れた。
今年、茨木CC西コースを制するのは誰だ?
昨シーズン、国内男子ツアーで初めてシード権を獲得したのは12人で、そのうちの最年長は田村光正の31歳、続く小西貴紀が30歳。ほかは20代で、長野泰雅に至っては19歳の若さ。そして桂川有人、河本力、大西魁斗の3人は昨シーズンすでに勝利を挙げていた。
今季2戦目の関西オープンでは、昨年の日本オープンを制した蟬川泰果がプロ転向後初勝利を挙げた。6戦目のミズノオープンでは昨年、プロ転向した22歳の平田憲聖がツアー初優勝。平田は7月の日本プロゴルフ選手権も史上最年少で制している。日本ゴルフツアー選手権では金谷拓実が中島啓太を振り切り優勝。そして翌週のASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメントでは今度は中島が金谷をプレーオフで破りプロ初優勝を飾っている。
だがベテランも負けていない。4月の中日クラウンズでは42歳の岩田寛が逆転優勝。5月のJ APAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品では、44歳の選手会長、谷原秀人がプレーオフで22歳の長野泰雅を破りツアー18勝目。9月のANAオープンでは19勝目を挙げている。
このベテランVS若手の争いに、開幕戦を制した31歳の今平周吾、パナソニックオープンで3勝目を挙げた33歳の大槻智春ら中堅も負けじと加わり、週替わりでヒーローが誕生している。
若手が躍動するのか、それともベテランが意地を見せるのか。今年の日本オープンを制すのは果たして誰か!?
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月24日号「もっと深く、もっと楽しく! 日本オープン」より