コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる。今回はDPワールドツアー「カズーオープンdeフランス」で優勝し、日本オープンに出場する久常涼を「スポーツボックスAI」の3Dデータをもとに解説、真似るべき動きが身につくドリルをゴルフコーチ・北野達郎に教えてもらった。

みなさんこんにちは。SPORTSBOX AI・3Dスタッフコーチの北野 達郎です。今回は、欧州・DPワールドツアー(以下、欧州ツアー)のカズー・オープン・デ・フランスで、最終日66をマークして見事な逆転優勝を成し遂げた久常 涼選手をスポーツボックスAIで分析してみましょう。

久常涼の特徴は3つ (1)ビハインド・ザ・ボールのアドレス

久常選手の特徴は大きく3つあります。
(1)ビハインド・ザ・ボールのアドレスとインパクト
(2)テークバックで体の回転と右への移動が多い 
(3)左ひざが左右に動く
それでは早速見てみましょう。

まずアドレスですが、グリップはスクエアグリップで、スタンス幅は肩幅より広めです。スポーツボックスの3Dアバターで久常選手の頭・胸・骨盤の中心点を見てみると、いずれもスタンスの中心より右にあるビハインド・ザ・ボールの構えです。

画像: 頭・胸・骨盤の中心が右足側に寄っている。ビハインド・ザ・ボールの構え

頭・胸・骨盤の中心が右足側に寄っている。ビハインド・ザ・ボールの構え

これはドライバーショットでのオーソドックスな構え方で、インパクトでのヘッドの入射角をレベルからアッパーブローにする効果があります。

(2)テークバックで体の回転と右への移動が多い

次にテークバック(以下P2)を見てみましょう。クラブが地面と平行のポジション(P2)での最初の特徴は、「胸と骨盤の回転が早めに入る」点です。胸の回転量を表す「CHEST TURN(‐は右、+は左)」は、‐57.3°、骨盤の回転量を表す「PELVIS TURN」は‐33.1°それぞれ回っています。

SPORTSBOX AI社が独自に調査した「PGAツアープロのレンジ(範囲)」は、胸の回転が‐30.5°~‐46.5°、骨盤の回転が‐15.6°~‐29.2°ですので、久常選手は胸・骨盤いずれも早い段階で回転が多く入るタイプといえます。

画像: テークバック 早めに胸と骨盤が回転して、体が右足寄りに移動しているのが見て取れる

テークバック 早めに胸と骨盤が回転して、体が右足寄りに移動しているのが見て取れる

続いてP2での2つ目の特徴は、「右足寄りに体が移動していく」点です。胸の左右移動量を表す「CHEST SWAY(‐は右、+は左)」は‐6.8㎝右、骨盤の左右移動量を表す「PELVIS SWAY」は‐3.9㎝右と、それぞれ右足側に寄っていることがわかります。

「P2での胸と骨盤の左右移動量」のPGAツアーのレンジ(範囲)は、胸が‐3.8㎝右〜0.8㎝左、骨盤が‐3.3㎝右~-0.8cm右ですので、PGAツアーレンジと比べると右足側への移動が大きめのタイプであるこがわかります。この右足に体重を乗せながら体も早めに回転してテークバックしていくのが久常選手の特徴です。

続いてトップ(以下P4)を見てみましょう。ここで注目したいのは、テークバックで右に移動した体はトップでは左に戻り始めている点です。それぞれのデータをP2と比較してみると、胸P2‐6.8㎝右→P4-5.4㎝右、骨盤P2‐3.9㎝右→P4-2.1㎝右と、胸・骨盤・それぞれのデータでマイナス(右方向)への移動量が減り始めています。

画像: トップ 左ひざは右に動いているが、胸と骨盤は左に戻り始めている

トップ 左ひざは右に動いているが、胸と骨盤は左に戻り始めている

これはSPORTSBOX AI社で統計を取ったすべての PGAツアープロに共通する特徴で、久常選手のように右足への移動が多いタイプの選手でも、移動量はテークバックの途中で最大値になり、トップにかけて徐々に左に戻り始めます。このタイミングをつかむ為の練習法には、その場で足踏みしながら振るドリルなどがあります。最初はタイミングが難しいですが、徐々に足の使い方がつかめるようになるのでお勧めです。

(3)左ひざが左右に動く

そして切り返しを見てみましょう。腕が地面と平行のポジション(P5)では、左ひざの左右移動量を表す「LEAD KNEE SWAY」のデータをトップと比べてみましょう。トップでは‐11.5㎝右に動いた左ひざは、P5では4.7㎝左とトップの位置に比べると、約16.2㎝左に動いています。この左ひざの左右の動きが大きいのも久常選手の特徴で、トップから切り返しにかけて左足を目標方向に強く踏み込んでいる事が分かります。

画像: 切り返し 切り返しでは左ひざが左に踏み込まれている

切り返し 切り返しでは左ひざが左に踏み込まれている

左ひざの左右のスウェイは、一般ゴルファー向けのレッスンでは「スウィングの安定性を損なう」として嫌われやすい傾向がありますが、久常選手のように体の左右移動のタイミングも含めてひざをうまく使えれば、足の力を使って振る感覚を養う事ができます。特にテークバックで右に体重が乗れずに目標方向に背中が反ってしまうリバースピポットの傾向がある人などには良い参考になるでしょう。

最後にインパクト直後のP7.5 (クラブが地面と平行のポジション。以下P7.5)を見てみましょう。切り返しで左に4.7㎝移動した左膝は、P7.5では9.9㎝左で、その差は5.2㎝です。トップから切り返しにかけての約16.2㎝の移動量と比べると、左ひざの移動は少なくなり、その代わり回転と伸展が入る事で、左ひざが伸ばされています。

画像: インパクト直後 左ひざが伸び、頭と胸は右に残っている。体が右に傾く事でアッパーブローのインパクトを作っている

インパクト直後 左ひざが伸び、頭と胸は右に残っている。体が右に傾く事でアッパーブローのインパクトを作っている

この左ひざが伸ばされる動きと共に久常選手の特徴となっているのが頭と胸と骨盤の位置関係です。頭は‐8.3㎝右、胸は‐5.1㎝右と、いずれもアドレス時点のポジションより右に残っています。

一方で骨盤だけはアドレスに比べて11.1㎝左に位置しています。この下半身が左、上半身が右にあることで、体の軸は右に傾きます。この軸が右に傾き、アドレスからのビハインド・ザ・ボールの状態を保ったままインパクトするので、ボールをレベルからアッパーブローで捉えられますので、飛距離を稼ぐ事が出来るのです。

今回は、久常 涼選手のドライバースウィングを分析させて頂きました。身長175㎝の体をフルに使った力強いスウィングで、日本人3人目の欧州ツアー優勝の快挙を成し遂げた久常選手。勝利後のインタビューも英語で堂々と受け答えする姿も見ていてとても感動しました。逞しい久常選手の今後の世界での活躍に期待します。

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