「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」で、ツアーの第一線から引退したイ・ボミ。日本ですごした12年間、私たちに感動をくれ続けたイ・ボミにじっくり話を聞いた。
画像: 1988年韓国水原市出身。12歳でゴルフを始め07年プロ転向。11年から日本ツアーに参戦、12年の初優勝後、勝利を重ね日本ツアー21勝(メジャー2勝)。15、16年の賞金女王。19年オフに韓国の俳優イ・ワンさんと結婚

1988年韓国水原市出身。12歳でゴルフを始め07年プロ転向。11年から日本ツアーに参戦、12年の初優勝後、勝利を重ね日本ツアー21勝(メジャー2勝)。15、16年の賞金女王。19年オフに韓国の俳優イ・ワンさんと結婚

日本で一番嬉しかったことは、"エースキャディ"との出会い

――2011年から日本ツアーで戦ってきましたが、今はどのような思いでしょうか?

ボミ 日本に来てから今年で13年目なのですが、ゴルフをもっと好きにさせてくれましたし、本当にいい環境でツアーを戦えたと思います。個人的にも満足のいく成績を残せましたし、本当に多くのファンに支えられたという思いも強くて、みなさんには本当に感謝しています。

――2年連続賞金女王や年間獲得賞金が男女ツアー合わせて初めて2億円を突破するなど、数々の思い出や記録がありますが、一番印象に残っている試合はどれでしょうか?

ボミ 「一番嬉しい」のは2015年の「アース・モンダミンカップ」です。この時は李知姫(イ・チヒ)選手とのプレーオフだったのですが、たくさん練習したウェッジショットが結果となって表れた試合でした。このコースはウェッジの精度をどれだけ上げるかが勝利のカギとなるので、緊張感のあるなかで必死に練習した成果が出た試合は記憶に残るものですね。

――ちなみに「一番好きなコース」はどこでしょうか?

ボミ 比較的、グリーンが速いコースが好きですね。いくつかありますが、「アース・モンダミンカップ」のカメリアヒルズカントリークラブ、「CATレディス」の大箱根カントリークラブ、「伊藤園レディス」のグレートアイランド倶楽部です。勝ったことがある試合のコースはやっぱりいいイメージが残っているので、得意なコースですし、好きなコースにもなります。

――日本に来て一番嬉しかったことは?

ボミ ゴルファーなのでもちろん勝った試合の喜びは大きいのですが、長らくタッグを組んだキャディのノリ(清水重憲)さんに出会えたのはすごく大きな出来事でした。日本のコースを熟知しなければ勝てないと思っていたとき、私からノリさんに声をかけたんです。

――どんな印象をお持ちでしたか?

ボミ 当時は上田桃子選手のキャディをしていた時で、ほかのキャディさんと比べて見ていると、この人とならいい成績を残せるんじゃないかと思ったんです。優勝するために毎日、努力していましたが、特に日本のゴルフ場でのコースマネジメントや戦い方についてたくさん学びました。賞金女王のタイトル獲得のために共にがんばっていたので、本当にいい時間を過ごしたなと思います。

――日本に来て一番辛かったことは?

ボミ 「辛い」というなら今になりますね。勝てなくなってから、その状態から抜け出すためにたくさん悩みましたから。今季限りで引退すると開幕戦で発表しましたが、本音では去年、静かに引退したい気持ちでした。でも一つでも多くの試合に出て、最後は応援してくれたファンの方たちの顔を見て、プレーで感謝の気持ちを伝えるべきだと心に決めて、今年1年を過ごしてきました。

成績が出ないから辞める決意をした

――調子も成績も良かったら引退は考えていなかった?

ボミ でももう日本ツアーは引退すると発表しましたからね(笑)。成績が出ないから辞める決意をしたわけで、もしよければ辞めていなかったかもしれません。プロゴルファーなので、ゴルフがうまくいかないのは辛いことです。

――それでも今も試合に出れば、多くのギャラリーとファンがついて回ります。

ボミ 大勢のファンに囲まれて過ごすことができたのは、とても大切な時間でした。韓国や日本のファンクラブが毎週、駆けつけてくれたこともそうですが、私を一目見ようと遠方からゴルフ場に足を運んでくれたギャラリーもたくさんいたのを知っています。遅くまでずっと並んで待っている人たちのことを考えるとすぐに帰る気持ちにはならなかったです。ファンサービスも一生懸命にやろうと頑張っていました。

本当にこれが最後の“サヨナラ”になります

――ほかに忘れられない出来事はありますか?

ボミ 私の名前を広めるきっかけを作ってくれた日本のメディアの方たちの顔も浮かびます。いい話をたくさん書いてくれていましたし、試合後の囲み取材でも単なる受け答えではなくて、すごく楽しく会話を進めてくれていたのを思い出します。

――一生懸命に日本語で話す受け答えも好感度が高かったと思います。

ボミ 難しい日本語は通訳さんを通していましたが、なるべく日本語で伝えようとがんばりました(笑)。でも本来なら日本の新聞やネットは日本の選手のことを応援して書くものだと思うのですが、韓国人選手の私に対してもすごく親しく接してくれて、一喜一憂してくれるのを肌で感じていました。今も顔を見たら声をかけてくれて、あいさつしてくれる。これは私が日本で感謝しなければならないことだと思っています。

――全盛期は強さと愛嬌で当時の女子ツアー人気を牽引しましたが、ジュニアにも憧れの選手で「イ・ボミ」と言う選手が多かったです。

ボミ それは本当にうれしいです! 私が常に笑顔でプレーする選手としてのイメージが強かったと思うので、ジュニアの選手が見たときに緊張をする姿を見せることなく、楽しくゴルフをしているように見えていたと思います。それを見て私のようになりたいと思ってくれていたならとてもありがたいことですよね。

――なぜそんなにかわいいんですか?(笑)

ボミ それは難しい質問ですね(笑)。ただ、韓国語に「観相(=人相)は科学だ」という言葉があるのですが、簡単に言うと心が綺麗であればそれが顔に出るという意味。美容のケアも大切ですが、常に悪いことを考えず、心を綺麗にすることが大事かなと思います。これは個人的な考えです(笑)。

――今もツアーで戦う同世代の選手たちに何か伝えたいことはありますか?

ボミ 本当にうらやましいです(笑)。上田桃子さん、菊地絵理香さんなどすごく頑張っている選手が多いですが、コンディション管理をしながら、ここまで成績を残してゴルフを続けていることは本当にすごいこと。ツアープロはスケジュール的にとてもしんどい部分もあるのですが、一方で“最高の職業”とも思うので、これからも活躍を期待しています。

――支えてくれたたくさんのファンへ何かメッセージはありますか?

ボミ 本当にこれが最後の“サヨナラ”になりますね。これまで私が外国人選手にもかかわらず、応援して支えてくれたことには本当に感謝しています。私の20代、一番輝かしい青春時代を共に過ごしてくれたことで、一生の思い出としてこれからも生きていけます。これからもどこにいても、私はいい影響を与えられる選手でいたいと思うので、これからの様々な分野での活動を応援してほしいです。

――最後にこれからの目標について教えてください。

ボミ 日本ツアー引退後は1年くらい何も考えないで、自分がやりたいように生きようと思っています(笑)。私は元々、思いつきで行動するようなタイプなのに、これまではずっと計画的なツアー生活を送ってきました。だから少しの期間、そういう縛りのない世界で生きてみることが当面の目標。今までやったことのないことにもいろいろと挑戦してみたいです。

INTERVIEW/Kim Myung Wook

PHOTO/Hiroyuki Tanaka

※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月31日号「イ・ボミ」より

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