スピン量が少なすぎると危険なボールが出やすい
みんゴル取材班(以下、み):かつてテーラーメイドが「打ち出し角17度、スピン1700回転が一番飛ぶ」と言い始め、ゴルフ雑誌もやたらと「飛ぶのは低スピン・高弾道」みたいな特集を組んで、「スピン多いイコール飛ばない」という思想がゴルファーにも浸透しました。ところが実際には「スピン不足で飛ばない」アマチュアが多い。
宮城:アマチュアがそう思い込んでしまうのは仕方がないですね。クラブメーカー自体がスピンを悪者にしてきたので。しかし、スピン量は単純に少ないか多いかではなく、少ないとどうなるか、多いとどうなるのかで考えなくてはいけません。その人にとっての最適スピンが必ずありますから。
み:自分の最適なスピン量ってどうやって見極めたらいいのでしょう。
宮城:計測機で飛距離ばかり見るのは問題ありです。たとえばトータルで250ヤード飛んでもキャリーが220ヤードしか出ていない場合。本人はそのクラブで毎回250ヤード飛ばせると思い込んでいても、フェアウェイの状況によってはそんなに転がりません。したがってキャリーを一番伸ばせるスピン量が最適と考えるべきです。
み:数字としてはどれくらいのスピン量が最適ですか。
宮城:まずは打ち出し角を把握することが必要です。ドライバーのロフト角プラス5度が打ち出し角の目安になります。ロフト角10度のドライバーなら打ち出し角は15、16度くらいが適正で、それ以下なら多めのスピンが必要になります。逆に打ち出し角が17度もあればスピン量2000回転以下でも失速しません。さらにボール初速が速ければ、もうちょっとスピン量が少なくても飛ぶでしょう。
み:テーラーメイドの理論と一致しますね。
宮城:ただし、いまだに2000回転以下を目指しているのは日本人くらいでしょう。米国の大学生ゴルファーなんかは2500回転を目指しています。
み:なぜそんなに差があるのですか。
み:日本人はここ一発の飛びを狙う人が多いのに対し、米国のプレーヤーは平均飛距離を重視するからです。スピン量が少ないと危険球が出やすく、試合ではその1ストロークで負けてしまうこともあります。
み:なぜスピン量が少ないと危険球になるのですか。
宮城:スピン量が少ないほど回転軸の傾きの影響を受けやすいからです。言い方を変えるとサイドスピンが多くなるのでとんでもなく球が曲がります。曲げたくなければあまりロースピンのヘッドは選ばないほうがいいでしょう。米国の大学生ゴルフでピンのドライバーの使用比率が高いのはそのためです。
み:スピン量は多いほど球が曲がりやすいイメージを持っていましたが実際には逆なんですね。
宮城:スピン量が多くて高い弾道は軸の傾きが小さくなるので思った以上に曲がりません。昔、スライサーでも誰でも飛ぶといって馬鹿売れした初代の「グレートビッグバーサ」なんかは表示が10度でもリアルロフトが13度くらいあって、しかも高重心だったのでものすごくスピンがかかりました。打ち出し高くて、浮力があるからカット打ちでも曲がらなかったのです。
み:テンプラに曲がりなしみたいな?
宮城:理屈は同じです。昔は2500から2800回転が適正スピン量で3000回転を超えると飛ばないと言われていました。いまはボールが低スピンになったので2500回転前後を目安にしてください。