ゴルフの上達を目指すゴルファーにとって役立つ情報を発信する「みんゴル・ゴルファー応援隊」。その隊長に就任したシングルプレーヤー・マツケンが上達のヒントになることを紹介。今回は「ドロップについて考える」がテーマです。
画像: 2019年のルール改訂で「膝の高さから」に変わったドロップだが…(写真はイメージ)

2019年のルール改訂で「膝の高さから」に変わったドロップだが…(写真はイメージ)

根幹には「あるがまま」にこだわる考え方

皆さん、ボールが池に入ったり、カート道など、「動かせない障害物」の上にボールが止まったりして救済を受けるとき、ボールはコース上にドロップするというルールをご存じですよね?

2019年の改訂で、ボールを落とす高さが、肩の高さだったものが膝の高さに変更されました。それ以前にもドロップの方法は何度か変更されています。

どうしてドロップの方法が変更されてきたのか? どうしてボールを置く「プレース」ではいけないのか?

今回はそんなことを考えていきたいと思います。

記録に残っているだけでも600年近い歴史があるゴルフという競技。史上、初めてルールが定められたのは、1744年。それからもう300年近く経っていますが、その当時から「ドロップ」という方法は用いられていたようです。

初期のルールは、「6ヤード以上後方に投げる」というもので、これでは「ドロップ」というより「スロー」ですね・・

その他にも「キャディが投げる」もしくは「対戦相手が投げる」などというルールを定めたクラブもあったようです。

(これは騎士道精神の名残とも言える、「己の有利に振舞わない」という精神に則ったものかと想像できます。)

1890年代にはイギリスのR&AとアメリカのUSGAの間でルールが統一され、1900年代からは、ホールに正対して立ち、背中側にボールを落とすという、「肩越しドロップ」の時代が1984年まで続きました。

私もジュニア時代には肩越しドロップでプレーしていたのを覚えています。

その後、「ホールに正対して、肩の高さからドロップ」、「身体の向きは関係なく、肩の高さからドロップ」と変わり、2019年からは「膝の高さからドロップ」というルールになりました。

いずれにせよ。ゴルフという競技でルールが定められてから、ずっとドロップという方法が採用され続けてきたのです。

ではどうして、「ドロップ」なのでしょうか?

やはりこれはゴルフゲームの根幹である「あるがままにプレーする」という考え方に根差しているように思えます。

一度ティーオフしたボールは、カップインするまで、触れることは出来ず、ボールの止まったライを変えることは出来ないという原則。OBや池、障害物など、そのままではゲームが続けられない事態に対処するときだけ救済措置があり、ボールをフィールドに戻すためには、「ドロップ」という方法が用いられる。

つまり、ドロップとは、「あるがまま」にプレーしているときと出来るだけ変わらないように、ボールを投げたり、落としたりして、プレーヤーに良いライを選ぶことをさせずに、「偶然」に止まった場所からプレーしてもらう、ということか目的なのです。

肩越しドロップのときは、ボールがどんなライに止まるかは、まさにそのときの運次第。ドロップしたボールがディボットや深いラフに埋もれてしまうといった悲劇も多々起こりました。

肩の高さから落とすドロップになって、ある程度、「狙い」を付けられるようにはなりましたが、それでも「あるがまま」の要素は十分担保されていました。ちょっとしたはずみで、ディボット後に転がりこんでしまうこともありましたし、バンカー内でのドロップでは、かなりの確率でボールが砂に沈み込むことが多かったと思います。

2019年に「膝の高さから」に変わって、そうした悲劇はだいぶ起こりにくくなりました。膝の高さに変更した意図は、救済エリアの外に転がり出てしまう機会を減らして、プレー時間を短縮することだったようですが、ゴルフコースの変化ということも大きかったようです。

現代のゴルフコース、特にトーナメントが行われるようなコースでは、池がグリーンのすぐ近くまで迫っていたり、芝が短く刈り込まれていて、昔のような「肩越しドロップ」ではとても救済エリアにボールを止めることは不可能ですよね。

実際、膝からのドロップでも対応が難しい場面もあり、現場のルールオフィシャルの間では、「もうプレースに変更してほしい」という声も挙がっているようです。

こうして時代の流れとともに変わってきた「ドロップ」ですが、そもそもの目的は、「あるがまま」を出来るだけ維持すること。昔と比べると様々な事情でカンタンになってきたドロップ。この流れだとなくなってしまうかも知れませんが、その根幹にある「あるがま」にこだわる考え方は忘れないでいてほしいものですね。

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