練習場での打ち放題といえば、時間内にすべてを出し切るがごとく、ひたすら球打ち? 「いえいえ、むやみに打ちまくることはむしろスウィングを壊す可能性大です」とは多くのアマチュアを指導する小暮博則プロ。さらに、「打ち放題だからこそ“打たない”時間を上手く取り入れるべきです」と続ける。では一体、90分をどう使えば良いのか.、小暮プロが考えたメニューは?
画像: 「打ち放題90分」最初の15分は"打たない"時間

「打ち放題90分」最初の15分は"打たない"時間

スタートから15分:柔軟性と姿勢を良くし「動ける体」を作る 

練習場に着いて、軽いウォーミングアップからドライバーのマン振り。

いまだそんなゴルファーを多く見かけるが、「もちろん絶対にダメです」と小暮。

ーー普段から球を打っているプロならともかく、数日ぶりに体を動かすようなアマチュアは、絶対にご法度ということですか。

「というよりアスリートであるプロゴルファーだって当たり前のようにウォーミングアップに時間をかけています。すぐに打ちたい気持ちはわかりますが、練習場に到着した直後は、体はガチガチなうえ、姿勢も良くありません。これを改善しないまま振り始めるということは、体に悪いのはもちろん、スウィングを壊す危険性もあります。打ち放題といえども、まずは15分ほどかけてじっくりと動ける体を作り、これができたら、スローで小さな振りから徐々に加速させていく。これが全体の流れを良くします」 

たとえば左右の肩甲骨が離れて上がり、あごを出すように頚椎が真っすぐ伸びる、いわゆる“スマホ首”などは多くの人が悩まされる現代病。

お腹が出て腰椎が反る、骨盤が後傾して腰が丸まるといったケースも多いというが、これらは回転運動を阻害する要素になるうえ、回転に必要な肩甲骨や股関節、胸郭周りの柔軟性を低下させる。

これらが固まったままクラブを振れば、軌道だっておかしくなってしまうということだ。

「練習前の準備運動が練習の成果を左右するので、ここでしっかり体を作ってください」

スタートから15分、体をほぐす5つのステップ

画像: ステップ①しゃがんで片足伸ばし

ステップ①しゃがんで片足伸ばし

◆ステップ①しゃがんで片足伸ばし

片足を伸ばし、腰をゆっくり落としていく。

これだけで、もも裏がほぐせるが、ここからさらに伸ばしたほうの足を回転することで、股関節周りもほぐれる。

左右5回ずつ2セット。

画像: ステップ②片ひざ立ちで足を持つ

ステップ②片ひざ立ちで足を持つ

◆ステップ②片ひざ立ちで足を持つ

片ひざ立ちで逆側の足を持ち、骨盤を前方下方向へ押し込む(きつければ逆の足は持たなくて良い)。

もも周りやお尻などの筋肉がほぐれる。

左右5秒ずつ2セット。

画像: ステップ③両手を伸ばして胸を上下

ステップ③両手を伸ばして胸を上下

◆ステップ③両手を伸ばして胸を上下

壁などでもできるが、椅子の背もたれに手をつき、正面を向いたまま腰を後ろへ下げ、胸を張る→腰を背もたれ方面に近づけて反る動きをゆっくり。

息を吸って吐きながら5往復2セット。

画像: ステップ④両腕を上げ後ろに倒す

ステップ④両腕を上げ後ろに倒す

◆ステップ④両腕を上げ後ろに倒す

肩幅よりやや広い幅でクラブを持ち、上に上げた状態から、息を吐きながらゆっくりと腕を後方へ倒していく。

無理に倒そうとするとケガのもとになるので、無理のない範囲で5回2セット。

画像: ステップ⑤クラブを2本持って水平素振り

ステップ⑤クラブを2本持って水平素振り

◆ステップ⑤クラブを2本持って水平素振り

クラブを2本持ち、直立した状態でゆっくり連続素振り。

スリークオーターの振り幅で足から動くことを意識しよう。

「手首のリリースを早めに行うことでリストコックを解き、速度が上がります」(小暮)

15分~45分:小さな振り幅でフルショットの"準備"をする

ーー体がほぐれたら次は?

「ここから30分くらいかけてフルショットの“準備”をしていきます。まずは30パーセントくらいの振り幅で、ウェッジのアプローチから始めてください」 

画像: アプローチ練習。「左足に体重を乗せた状態で、球だけを拾う意識で振ります。5分やったら次の5分は両足体重で40パーセント、次の5分は50パーセントの振り幅で、打ちましょう」(小暮)

アプローチ練習。「左足に体重を乗せた状態で、球だけを拾う意識で振ります。5分やったら次の5分は両足体重で40パーセント、次の5分は50パーセントの振り幅で、打ちましょう」(小暮)

ーーアプローチ好きな人が、無心になって時間が過ぎることもあるが。

「それはダメ(笑)。寄せることに意識が向くと、構えが小さく、姿勢も悪くなりがちです。正しい姿勢でアドレスを作り、そのまま振ることを心がけてください。この練習は最下点を揃えることが目的なので、左足に体重を乗せた状態で、球だけを拾う意識で振ります。5分やったら次の5分は両足体重で40パーセント、次の5分は50パーセントの振り幅で、これもまた最下点を意識してください」 

画像: 姿勢をチェックしながら、ウェッジやアイアンを打とう。背骨の軸は(正面から見て)地面と垂直がベスト。「シャフトを水平に持った状態で前傾し、ひざを曲げた後に右手を下から握ると、姿勢が変わりにくくなります」(小暮)

姿勢をチェックしながら、ウェッジやアイアンを打とう。背骨の軸は(正面から見て)地面と垂直がベスト。「シャフトを水平に持った状態で前傾し、ひざを曲げた後に右手を下から握ると、姿勢が変わりにくくなります」(小暮)

――軸を動かすことなく速度を上げていくわけですか。次は?

「次の15分は振り幅を広げ、スリークオーターでミドルアイアンを使います。比較的フルショットの練習に近いですが、こちらも球筋より体の動きの確認という意味合いが強いですね。良い球を打つことよりも、姿勢良く、インパクト時の手の高さがアドレス時より高くならないよう注意してください」 

前準備で練習時間の半分。ここまできて、ようやく振る準備が整ったというわけだ。

45分~75分:ドライバーの右手1本素振りと"スナップ打ち"

画像: ドライバーの右手1本素振り。切り返し直後(左)、右前腕が外旋し、シャフトが後ろに倒れる。以降、体の回転とともにフェースが閉じるように振ると、つかまる動きを確認できる

ドライバーの右手1本素振り。切り返し直後(左)、右前腕が外旋し、シャフトが後ろに倒れる。以降、体の回転とともにフェースが閉じるように振ると、つかまる動きを確認できる

ウォーミングアップが済んだら、ようやくドライバーで100パーセントのショット練習。

「その前に少し挟んでほしいのが、ドライバーの右手一本素振りです。つかまりの良いモデルが増えたとはいえ、ロフトが立ったドライバーは構造的に球がつかまりにくい。そのためウォーミングアップ後、そのままドライバーを振ろうとすると無理につかまえにいく動きが出やすく、その前に“つかまる動き”をおさらいしたいのです」 

つかまる動きとは、トップから切り返しにかけて右前腕が外旋し、シャフトが後ろに倒れる動き。

いわゆる“シャローイング”動作は右腕一本でやると体感しやすい。

切り返しで左へ踏み込むとともに骨盤が回転し、それに引っ張られるよう胸が回転、最後に腕が引っ張られることでこの動きが最大化される。

画像: 60分が過ぎてから15分間、手首のスナップだけで打ってスピードアップを上げる練習がおすすめ

60分が過ぎてから15分間、手首のスナップだけで打ってスピードアップを上げる練習がおすすめ

「まだ時間に余裕はあるので、さらにスピードを上げるドリルもやります。精度ばかりに目が行くと、どうしても手首の動作が小さくなりがちです。あまり体を動かさず、手首のスナップでシャフトをしならせるイメージで振ってみてください」 

ポイントは、ダウンスウィングで手が右足の前に来たあたりでリストコックをほどくイメージ。

少し早いように感じるかもしれないが、普段リストを使えていない人には、これくらいがちょうど良いということだ。

75分~90分:15ヤードの"アプローチ"とコントロールショット

画像: 最後の15分は、15ヤードのアプローチの打ち分けやアイアンのコントロールショットを練習。いろんな球の"引き出し"を増やす時間に使うのがいいと小暮

最後の15分は、15ヤードのアプローチの打ち分けやアイアンのコントロールショットを練習。いろんな球の"引き出し"を増やす時間に使うのがいいと小暮

速度アップまでで75分。残り15分は、小暮からの提案だ。

「たとえば15ヤードの距離だとコース上ではピッチ&ランで攻めることが多いと思いますが、思い切りフェースを開いてみたり、次は閉じたりと、いろんな球を打ってみてください。アイアンでドローやフェードを打ち分けてみるのも良いです。『そんなの技術的にできないよ』という方がいるかもしれませんが、さまざまな球に挑戦することで引き出しが増えるだけでなく、自分のスウィングの特徴が見えてきたり、改善点が浮き彫りになることだってありますよ」 

いわば最後の15分は将来に向けた“伸びしろ”だ。

90分メニュー、ぜひ試してみてください。

PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/クリスタルゴルフガーデン東松山

※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月24日号「どう使う? 打ち放題90分」より

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